おおいたの酒の特徴―発展と成長の歴史から―

よその地域とどう違うん? 発展と成長の歴史から

2025年12月4日
 大分の日本酒とか焼酎とかっち、なんかよその地域とは違った特徴があるん?

 ということで、お待たせしました「おおいたの酒を知る」第2弾です。

 清酒の香りや味の分析、製造方法などに詳しく、独立行政法人酒類総合研究所(広島県)の清酒専門評価者に県内第1号で認定された大分県産業科学技術センターの主幹研究員、後藤優治さん(46)に聞きました。

おおいたの日本酒の変遷 「濃醇」の伝統と吟醸酒ブーム


 記者 第1回のテーマ「おおいたの酒の歴史」では大分県内の酒造りの経緯や、日本酒と焼酎の違いを知りました。
 そこで後藤さんに教えてもらいたいことがあります。
 大分の日本酒ならではの特徴ってありますか?


 後藤主幹研究員 味で考えれば、濃く、甘さやうまみが強い伝統的な清酒が多くありますね。「濃醇のうじゅん」と言えばいいのでしょうか。
 九州のしょうゆは甘いといわれているのと似ています。


 最近は香りが高く、冷酒で飲みやすい酒が増えていますよ。 


 そして、大分の清酒が非常に元気だった時代があります。
 「第1次吟醸酒ブーム」といわれる昭和40(1965)年代後半から昭和50(1975)年代です。
 濃厚で芳醇ほうじゅんなお酒が好まれ、熱かんで飲むことが多かった時代ですね。

 香りが良くて味が濃い。そういう吟醸酒が売れ、その頃は萱島酒造(国東市)の「西の関」などが全国を代表する酒として人気がありました。


 大分県は酒蔵の数も比較的多い方ではないでしょうか。
 昔はものすごくあったようです。集落ごとに存在していたともいわれています。

 日本酒造りの最南端は元々、大分県と熊本県でした。
 暖かすぎると天然の環境では、発酵がうまく進まなかったりして、日本酒が造れなかったためです。


若い蔵元の挑戦 こだわりの酒造り


 記者 そうなんですね。最近はどうなんですか。

 後藤主幹研究員 お酒の味やニーズは時代とともに少しずつ移ってきています。
 香りのタイプもだんだんと変わってきました。
 昔はどちらかというと熱かん、少し熟成させて飲むのが好まれていたんです。
 飲み方も変わり、今は冷やして飲むのが主流ですよね。


 ニーズの変化によって、少しずつ清酒の生産量が低迷し、大分では焼酎に軸足を置く蔵もありました。

 ここ10年で蔵元の代替わりが進み、若い社長が非常に多くなってきました。
 彼らが「やはり日本酒をやりたい」という思いからか、こだわりのあるお酒を造る方向にシフトしています。

 造る量は少なくても、米やこうじ、造り方の違いなどで分けて、目的を明確にした日本酒が最近は増えています。
 量で売るのではなく、高級路線やこだわりのあるお酒を造るようになったんです。
 
 「継がない」という選択肢もあったでしょうが、先代がちゃんと造り続けていたことで、今につながっていると思いますね。
 世代交代によって技術的な質が向上し、新しいチャレンジをしているのが最近の大分の酒造りではないでしょうか。



なぜ「大分といえば麦焼酎」に? 大手メーカーとの連携で磨かれた製造技術


 記者 大分県といえば「麦焼酎」のイメージがあります。大分の焼酎はどんな特徴がありますか?


 後藤主幹研究員 第1次吟醸酒ブームが過ぎて清酒が横ばいになった頃、昭和50(1975)年前後に「本格麦焼酎」が登場しました。
 ブームが来たのは少し後、昭和50(1975)年代半ばから後半にかけてです。

 時代をさかのぼると、実は清酒を造っている蔵が焼酎も造っているケースが多くあります。酒粕さけかすが出るので、酒粕焼酎を造ることができたのです。
 先ほどもお話ししたように、清酒が下火になっていた時期、各蔵はそのような設備を持っていたので焼酎を造るようになりました。


 実は酒業界には、大手メーカーなどに別の酒蔵が造った酒を供給するようなシステムがありました。
 県内の各蔵も「いいちこ」の三和酒類(宇佐市)や、「二階堂」の二階堂酒造(日出町)に醸造した酒を原酒として納めていたのです。

 このシステムや時代があったからこそ、大分の焼酎の技術が上がっているんですよ。

 当時、三和酒類や二階堂酒造も供給元の蔵元へ技術指導をし、蔵元も求められるレベルの酒を造るために技を磨きました。
 そうして、大分県では焼酎の技術がぐっと上がりました。


 2社の規模が拡大し、自社で製造できる量が増えると、県内の酒蔵が2社のために製造する量は減っていきます。
 そこで「じゃあ自分たちの好きなように造ろう」と、各メーカーで独自の焼酎が出るようになったのです。


広がる焼酎の多様性 蒸留の工夫で違いを生み出す


 記者 確かに、いろんな蔵から焼酎も販売されていますよね。同じ麦焼酎でも特徴がさまざまあるように思います。

 後藤主幹研究員 焼酎は清酒に比べてバリエーションを増やしやすいお酒です。
 清酒は原料となる酵母や米の選択肢が昔は少なかったのですが、焼酎はこうじも麦こうじや米こうじが選べるし、次に使用する(芋や麦、ソバなどの)二次原料も選べます。
 さらに蒸留方法でどのように仕上げるかという工程の違いもあるので、各蔵でさまざまなバリエーションが造れるのです。

 記者 蒸留の方法はどんなものがあるのですか?

 後藤主幹研究員 焼酎も代替わりしていろいろ挑戦するようになったんですけど、大分では蒸留機内の気圧を下げて低温度で蒸留する「減圧蒸留」一辺倒でした。この方法で生み出すスッキリしたタイプの「減圧麦焼酎」が主流でしたからね。

 そこへ四ツ谷酒造(宇佐市)のような蔵が蒸留機内の圧力を外気と変えずに蒸留する「常圧焼酎」を出すようになりました。
 芋焼酎は基本的に常圧で、「臭くて飲めない」という焼酎のイメージが麦焼酎の登場で変わっていたんですね。
 常圧は加熱温度が高く、原料の風味が強く出るため、油臭いと嫌われていた面もありました。
 でも、その焦げ臭さのような香ばしさを生かした麦焼酎も人気を集め、ほかのメーカーも常圧で勝負するようになりました。

 今では減圧蒸留も圧力の幅が広がって、さまざまです。

 時代とともに技術も上がり、代替わりを経て味の質や経営方針も変えてきて、今の多様性につながっています。

 大分の麦焼酎は全国でもトップレベルの製造量を誇っています。

 日本酒も量は少ないものの、コンペで賞を取るなど各蔵のポテンシャルは非常に高いと思います。


清酒専門評価者って何するの? 県内第1号の後藤さんの仕事

大分県産業科学技術センターの後藤優治主幹研究員

 記者 後藤さんは大分県産業科学技術センターで「食品産業担当」の主幹研究員ですが、普段はどのような仕事をされているのですか?

 後藤主幹研究員 食品に関することは基本的に何でもやっています。分析や加工品の開発支援、メーカーの技術指導も含めてですね。
 お酒でいうと、最近は「こういう商品を造りたいので研究してほしい」という依頼で一緒に取り組む開発案件が多いです。
 酒の蒸留方法や酵母の使い方でどんな酒ができるかとか、水や成分の分析などもあります。

 元々、お酒は税収のトップで国にとっては大事な稼ぎ頭でした。
 そのため技術的な支援は国がバックアップする体制があったんです。お酒は旧大蔵省の管轄で、酒造りの指導や技術開発をするような国の研究所が生まれ、各都道府県にもそうした指導機関が設立されました。大分県産業科学技術センターの起こりも醸造試験場です。

 記者 「清酒専門評価者」という資格を県内第1号で取得したそうですが、どんな資格ですか?

 後藤主幹研究員 具体的に何ができるか、ということは特にないんですね。
 国の酒類総合研究所が実施している酒の官能評価テストです。塩味、金属味、うまみ、甘みなど味の識別ができるか。香りの成分がどうやってできるかなども知らないといけません。
 自分の「おいしい」とは異なる評価です。「どれくらい甘いか」「どれくらい酸っぱいか」「どんな香りがするか」を客観的に見ることが求められます。もし香りが良くなければ、その成分を指摘し、何に由来するかを助言することができます。

 記者 すごい資格ですね。これからも大分の酒文化発展のために頑張ってください。また日本酒、焼酎以外の酒についても教えてください。 

 

4日付の紙面はこちら

アクセスランキング 0:41集計

秋のご愛読キャンペーン

大分県の天気

今日 12月5日(

曇り一時雪曇りのち晴れ
気温 12℃ 4℃
時間 0-6 6-12 12-18 18-24
降水 20% 20% 0% 0%
警報
発表なし
注意報
発表なし
気象状況

今日 12月5日(

曇り一時雪曇りのち晴れ
気温 12℃ 2℃
時間 0-6 6-12 12-18 18-24
降水 20% 20% 0% 0%
警報
発表なし
注意報
発表なし
気象状況

今日 12月5日(

曇り一時雪曇りのち晴れ
気温 11℃ 6℃
時間 0-6 6-12 12-18 18-24
降水 20% 20% 0% 0%
警報
発表なし
注意報
発表なし
気象状況

今日 12月5日(

曇り一時雪曇りのち晴れ
気温 11℃ 3℃
時間 0-6 6-12 12-18 18-24
降水 20% 20% 0% 0%
警報
発表なし
注意報
発表なし
気象状況
PM2.5情報
大分県の測定データ大分市の測定データ

PR