三和酒類「辛島 虚空乃蔵」=宇佐市辛島

おおいた酒蔵探訪記 みんなのGateリサーチ

2026年3月5日

「いいちこ」の原点は日本酒にあり

こうじと発酵の知見が総合酒類メーカーを支える

限定品から定番品まで、日本酒や焼酎が並ぶ店内

 宇佐インターチェンジから車を走らせること約8分。商業施設が立ち並ぶ国道10号沿いの風景の中に、落ち着いたたたずまいの和風建築と庭園が現れます。

 2022年、三和酒類が「こうじと発酵文化」を世界に発信する拠点として開いた「辛島 虚空乃蔵こくうのくら」です。
 酒蔵見学や利き酒などの体験プログラムを提供するほか、日本酒の新商品開発を担う施設でもあります。


 三和酒類といえば、焼酎ブームの火付け役となった本格麦焼酎「いいちこ」が真っ先に思い浮かびます。クセの少ないスッキリとした味わいは、どんな料理にも合わせやすく、大分が誇る不動の人気商品です。


 しかし、そんな焼酎のイメージが強い三和酒類のスタートは、実は日本酒から。1950年代にさかのぼります。
 1958年に現在の宇佐市内の3酒蔵(赤松本家酒造、熊埜御堂酒造場、和田酒造場)が合併し、日本酒の共同瓶詰会社として設立されたのが三和酒類の始まり。1959年に西酒造場が加わりました。
 当時、赤松本家酒造の銘柄「和香牡丹わかぼたん」をメインに据え、メーカーとしての大きな一歩を踏み出しました。


 今ではワインやスピリッツなども手がける総合酒類メーカーへと成長しましたが、その全てのベースは日本酒造りで培った「こうじと発酵」の知見にあります。

スペシャリストの挑戦は「酸味のタブー」を破ること

現代の食文化に生きる「和香牡丹」の新境地

日本酒チームリーダーの佐藤貴裕さん

 「辛島 虚空乃蔵」を拠点にした日本酒開発のチームを率いるのは、リーダーの佐藤貴裕さん(39)。大分県内でわずか4人しかいない「清酒専門評価者」の資格を持つ、味と香りのスペシャリストです。

 「こだわりを形にできる仕事に引かれた」と語る佐藤さんのもと、ここでは感性と科学が融合した酒造りが行われています。


 そんなチームにとって、4年前にワイン部門を担当していた先輩社員が加わったことが、大きな転機となりました。

 その先輩が新商品開発で提案したのは、日本酒に「酸味を足す」という驚きのアイデア。本来、日本酒にとって酸味は劣化や失敗を意味する「タブー」とされてきました。
 
 佐藤さんも当初は「造り手にとってダサい酒というイメージがあり、違和感があった」と当時の葛藤を振り返ります。

 開発には試行錯誤が続きました。先輩からは「もっと酸味を」とリクエストを受けます。実際、「和香牡丹 天衣てんい スパークリング」の開発には約5年かかったそうです。


 事態を好転させたのは、焼酎造りでも使われる「白こうじ」を導入したこと。
 白こうじ由来のクエン酸は雑菌を防ぐ衛生的なメリットをもたらしただけでなく、瓶内二次発酵のヒントとなり、スパークリング日本酒などの新たな可能性を切り開きました。

 また、現代の食文化に寄り添う「酸」の魅力を発見したことで、佐藤さんは「日本酒のさらなる可能性」を確信したといいます。


伝統と革新が生み出す「繊細な一滴」

醸造タンクでは新商品を開発中。佐藤さんら専門スタッフが発酵状態を確認します

 佐藤さんが日々作業する蔵には、こうじが発酵する静かな気配が満ちています。
 旧本社屋を改築した建物は、最新の設備の中に古い柱やはりが垣間見え、伝統と革新が共存する趣を感じさせます。

 蔵には容量約220リットルの小さな仕込みタンク4台が並び、それぞれで新しい日本酒が育っています。
 「製造時期(ロット)によって味わいが異なるのも、生き物を相手にしている面白さ。同じ工程をたどっても、温度や環境のわずかな変化でお酒は驚くほど表情を変えます。その繊細さを一滴に込めるのが、私たちの仕事です」と佐藤さんは語ります。


 蔵の入り口には「和香牡丹」シリーズが美しく並び、その奥では職人が真剣な面持ちでラベルを整え、出荷の準備を進めています。
 根底に流れているのは、合併当時の4酒蔵が持っていた「良いものを造りたい」という純粋な情熱、宇佐の自然と守り抜かれた発酵の技です。
 「辛島 虚空乃蔵」には、三和酒類が歩んできた歴史と、まだ見ぬ未来への挑戦が混ざり合い、熟成されていました。


和香牡丹 輪奏ff 第2楽章(左)、和香牡丹 天衣 スパークリング(中)、和香牡丹 宵花(右)

 それでは、三和酒類が挑戦を続ける自慢の日本酒3選を紹介します。
 どれも香り高く、ぜひともワイングラスを傾けながらいただきたい逸品です。



 ▼和香牡丹 天衣てんい スパークリング
 スパークリングワインと同じ「瓶内二次発酵」を採用し、通常の10倍もの時間をかけて醸されるぜいたくな一本。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2025」の最高金賞にも選ばれました。
 かつてはタブー視されていた「強い酸味」をあえて強調することで、洋食や中華とも相性が良い華やかな酒へと進化を遂げました。
 特別な日の乾杯にふさわしい、きめ細やかな泡立ちが魅力です。


 ▼和香牡丹 宵花よいばな
 「いい意味で日本酒らしくない酒を目指した」という意欲作。ワイングラスに注げば、リンゴやパイナップルを思わせるフルーティーな香りが広がります。
 日本酒特有の甘みやうまみに、現代的な酸味が絶妙に調和しています。
 夜空に上がる花火を描いたドット調のラベルが、日本酒の新しい夜明けを予感させます。



 ▼和香牡丹 輪奏りんそうff(フォルテシモ) 第2楽章
 「非常に強く」を意味する音楽記号を冠し、和香牡丹の中でも、三和酒類としての挑戦の度合いを高めたというシリーズの第2弾。「辛島 虚空乃蔵」とオンラインショップでしか手に入らない、試験的に販売される限定酒です。
 低タンパク米「春陽しゅんよう」を使用することで、白ワイン(ソーヴィニヨン・ブラン)のようなフレッシュな香りとキレのある酸味を実現しました。
 日本酒でありながらワインのような驚きを味わえる、まさに「非常に強く」印象に残る一杯です。


(三井祥聖)

【三和酒類 辛島 虚空乃蔵】

施設内にはおしゃれなバースペースも。その場でいろいろなお酒を楽しめます

 ▼所在地 宇佐市辛島4‐3(本社は宇佐市山本)
 ▼営業 午前10時~午後5時(水曜定休)
 酒蔵見学は事前予約制(1組5人まで)で平日の午前と午後の2回実施。参加無料。
 限定酒も販売している売店、クラフトビールやオリジナルカクテル、食事などを提供する飲食スペースなどを併設している。
 ▼ホームページ https://www.sanwa-shurui.co.jp/factory/karashima/
 ▼インスタグラム https://www.instagram.com/karashimakokunokura/?hl=ja
 ▼オンラインショップ https://shop.sanwa-shurui.co.jp/
 ▼問い合わせ 0978‐32‐1432

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