2025814日()

(1)本を通じて街に活力

岩尾晋作さん 大分市 カモシカ書店店主

> 「書店から地域の課題を提起していきたい」と語る岩尾晋作さん=大分市中央町の「カモシカ書店」
 ここに来れば何かが始まる―。大分市中央町のブックカフェ「カモシカ書店」は、そんな期待感に満ちた空間だ。レトロビルの階段を上り、鉄の扉を開くと、えりすぐりの古書や新刊がずらり。オンライン全盛の今、県内外から訪れた幅広い世代が本の森を散策しながら、思いがけない出合いを楽しんでいる。

 都内のアパレルや映画会社、大手書店に勤務。30歳を機に「生まれ育った大分の街と向き合おう」と帰郷し、店を開いた。お手本にしているのは1970年代の湯布院の町づくり。「街本来の価値や魅力を取り戻し、誇りに思えるような場所をつくっていきたい」

 店内では読書会や学びのイベント、作品展などを開催。昨年からは店を飛び出して新たな挑戦も。県などと取り組む「大分で会いましょう」「旅するシューレ」など県内の魅力を再発見し、全国に紹介する事業に携わっている。

 その経験を持ち帰り、書店としての機能を拡張させたいという。「本を切り口に映画、音楽、美術、歴史など、さまざまな文化を発信できたら。大分がつまらないと思っている人にこそ足を運んでほしい」。今日も店に立ち、街の未来に思いを巡らせている。