競技者として水上スキー全日本選手権上位常連の中村大悟さん。中津市職員として地域振興も担っている
中津市中心部から南西に車で30分ほど。緑あふれる山々に囲まれた耶馬渓ダム(同市耶馬渓町)がある。広大なダム湖面を利用した市営施設「耶馬渓アクアパーク」は、国内有数の水上スポーツの“ゲレンデ”として知られる。
インストラクターとして12年。豊富な経験に基づく的確な指導を提供する。ほかにも競技の普及、大会運営など同パークの管理・運営を取り仕切っている。
ジュニアや若手の育成に力を入れてきた。5年前にジュニア選手の養成を目的に設立した市マリンスポーツクラブでは、国際大会に出場する選手を輩出している。「特別な指導や教育はしていないが…」とはにかむ。「あいさつと感謝の気持ち。それだけはしっかり伝えている。水上スポーツを通じて人間力、社会性を身に付けてくれたら」
小学生の体験学習は年々増えている。町内では授業として取り組み、町外にも広がってきた。希望者を対象にした体験教室は恒例。団体などの依頼も多い。
1994年のオープン当初は、水上スポーツの認知度は低く、パークも地味な存在だった。今では年間利用者約7千人と順調。「水上スポーツが健全育成につながる―との意識が浸透しつつある。競技人口の広がりにもつながっている」と手応えがある。
大学生の合宿も定着し、十数年前からの誘致が実を結んだ。ホームゲレンデとする福岡大学のほか、学習院、慶応など、国内で水上スキー部を持つ大学全10校が合宿するまでになった。現在では、地域住民や子どもたちと大学生の相互交流が盛んになり、地域の活力にもなっている。
パークを故郷のように愛して移住してきた先駆者だ。「子どもがパークへ“帰郷”してくれ、次の世代へ継いでいく―それが楽しみです」