2025101日()

地域リポート

「地域に必要なのは〝在りたい姿〟」佐藤 陽平

ひとねるアカデミー代表理事 佐藤 陽平さん
 企業に勤めた後、自然体験をする長野県のNPOに参画しました。子ども向けのキャンプをする中、大人も体験不足で子どもに教えることのできない世の中になっていると感じる出来事もありました。今は臼杵市に戻り、家庭での体験教育を伝えています。家をセルフリフォームして、まき割りをしないと風呂がたけないなど、不便で面倒なことができるように変えました。やっていなければ体験の大事さは人に伝えられませんから。地域づくりの依頼を受けてデザインをすることもあり、大事にしているコンセプトは「我が故郷の誇り」「地尊心」。悲観的な大人ではなく、地域の希望を語る大人をつくっていくべきだと思います。企業のコンサルティングもしていて、最新の脳科学と体験学習法で人材育成をしています。私たちは何かに貢献すると幸福感を感じます。社会、地域の問題を丁寧にみて、自分たちに何ができるか問うていくことが、次の世代の養成になると思い活動しています。

「子どもに知的な刺激〝想像する力〟を与えた方がいい」金 成妍

久留島武彦記念館館長 金 成妍さん
 久留島武彦記念館は玖珠町に昨年4月、オープンしました。町が掲げる「童話の里」の真ん中には、久留島武彦という基軸がなければいけません。その考えに町も共感し、共につくり上げています。久留島は子どもを対象に童話を語り聞かせる口演童話会を、日本で初めて開いた人。生涯で約140の童話も書き残しています。いったい何を伝えたかったのか。童話の内容を分析すると「信じ合うこと」「助け合うこと」「違いを認め合うこと」という三つのテーマがあることが分かります。彼が掲げた児童教育観「桃太郎主義」は、桃太郎がイヌ、サル、キジと仲良く困難を乗り越えたように、違うもの同士が頼り合い、助け合い、共に生きていこうというものです。「継続は力なり」という言葉の生みの親でもあります。亡くなる1カ月前まで杖を支えに童話を語り聞かせ、生涯をもってこの言葉を実践しました。記念館では10種類の部屋で、久留島ワールドを体験しながら学べるよう工夫しています。

「子どもの教育は、 体力づくりと心づくりの両面で」中村 大悟

耶馬渓アクアパーク インストラクター 中村 大悟さん
 耶馬渓アクアパークは水上スキーやウエークボード、バナナボート、湖面遊覧などができる施設です。私は福岡大学で水上スキーと出合い、練習でアクアパークに来て以来19年、耶馬渓と関わっています。地域の人たちの温かさや優しさに触れ、水上スキーの魅力に引かれ、どっぷりこの世界にはまりました。水上スキーの普及と発展に寄与したい、たくさんの人に楽しんでもらいたいという思いを忘れずにお客さんと接しています。利用者は、下は2歳、上は70代。毎年10月の全日本学生水上スキー新人大会の際は、選手300人に保護者、OBなどを合わせて約700人が耶馬渓に集結します。ダムを利用したウオーキング大会、子ども会の水上スポーツ大会や体験会の他、大学生が練習後に温泉に行くなど、地域との交流も生まれ、振興につながっています。耶馬渓町内の小学校は毎年水上スキーの授業をしていて、ライフジャケットの重要性など命の大切さを教えることを重視しています。

「異なる他者とどう生きていくか。違いを認め合うことが大切」高見 大介

日本文理大学人間力育成センター長 高見 大介さん
 日本文理大学人間力育成センター長を去年から務めています。センターは立ち上げのコンセプトとして、今の若者に足りていないのは時間、空間、仲間の三つの間であるということを掲げました。まずは自由に話ができるスペースをつくりました。地域に飛び出し、五感を使っていろんなことを感じてもらうため、1、2年生は木曜日の4、5限目を空けています。約20のプログラムは、地域活動、教育支援、環境保護、国際交流、災害復旧など多岐にわたります。単位も時給も発生しませんが、労働を知識・経験と交換します。必ず教職員がつくのも特色です。昨年だけで延べ約2200人が地域で学び、うち約380人が災害復旧のボランティアにも出掛けました。地域の方々には、学生と仲間になってもらえませんか、課題や問題があったら、同じ仲間として扱い、必要としてやってもらえませんか―とお願いしています。面白いじゃないかと言ってくれる方々と一緒に、学びを深めています。

 

「部の活動だけでなく、他の団体との連携を大切にしたい」成重 さりな

大分県立中津東高校マーケティング部部長 成重 さりなさん
 マーケティング部は2014年に活動を開始しました。地域貢献と中津の活性化を目指し、部員17人で頑張っています。接客技術の向上を目的に、市内の商店街のイベントに出店。市内三光の高齢者と野菜の生産、収穫、産直販売、商品化まで一貫した取り組みもしています。「ぎょろっけバーガー」などの商品開発や、南部まちなみ交流館の利用促進を目的にランチを提供する「ハピスマ食堂」といった活動もあります。学校の中ではできない、幅広い世代の人とコミュニケーションを取る楽しさを学びました。地域との関わり方やビジネスマナーも身をもって学んでいます。中津祇園のように幅広い世代の人が集まり世代間交流が生まれるイベントが少ないのが課題です。さまざまな活動で中津の皆さんの交流は少しずつ増えていると感じますが、今はいろんな団体が独自のイベントを開催しています。各団体が集まって力を合わせ、大きなイベントをつくっていくことが大切だと思います。