202567日()

後輩に広い視野と知識、経験を

  • 後輩に広い視野と知識、経験を
  • 村井さんが営む博多区千代のビール醸造所兼飲食店「あすなろブルワリー」
  • 博多区で「あすなろブルワリー」を営む村井真吾さん。「地元中津でもビールを造ってみたい」と考えている

 中津北高(中津市)には、卒業生の村井真吾さん(38)=福岡市在住=が創設した「あすなろブルワリー奨学金」があり、在校生の留学や英検受験を後押ししている。村井さんは、高校時代にドイツ留学を経験し、海外の航空会社で働き、ビール醸造所を経営するようになった自身の経験を踏まえ、「海外に向けて一歩踏み出してほしい」と後輩を応援している。

■高校在学時、ドイツに1年間の留学

 村井さんは中学生の時、オーストラリアに1カ月間滞在した。高校生になると英語圏以外のヨーロッパの国で同年代の高校生がどんな勉強をしているか興味が湧き、留学を思い立った。世界でドイツ語を話す人の多さに引かれ、留学先をドイツに決め、高校2年の1月から1年間、ドイツに渡った。
 語学習得目的の留学が多い中、村井さんは自身が育った環境とは異なる環境で生活して視野を広げることを目的とした。ドイツ語を学ぶ前に留学し、ホームステイをしながら学校に通った。3カ月ほどたつと、ドイツ語で授業を受けられるほど上達したという。
 高校3年の1月末に帰国。ドイツの大学進学も考えたが、日本には帰国生徒枠で出願できる大学があることを知り、独協大外国語学部ドイツ語学科(埼玉県)を受験した。試験や面接はすべてドイツ語。帰国して1週間後の試験日程だったため十分な対策はできなかったものの、留学で身に付けたドイツ語のスキルを発揮し、合格をつかんだ。
 大学の講義の多くはドイツ語か英語が使われた。大学生の時は英語よりもドイツ語の方が得意。「大学生活はずっとドイツ語漬けの生活だった」と振り返る。常にドイツと関わっていたいと、大学生の間にドイツのハイデルベルク大学にも留学した。

■海外生活が自分のアドバンテージに

 2007年に卒業した後は海外に多くの支店がある一般企業に就職。ただ、期待した海外勤務のチャンスは新入社員には回ってこなかった。日本的な社風にもなじめずにいた中、空港で見たパイロットや客室乗務員の一団に引かれた。見たことのないような制服を着ており、調べてみると、中東・ドバイの航空会社「エミレーツ航空」の社員だと分かった。
 「エキゾチックな感じの国。なんだか楽しそう」。タイミングよくエミレーツ航空が日本で就職面接をする情報を得て、客室乗務員に応募した。試験は千人以上が受験する難関。ドイツ語のスキルをアピールし、7次面接まであった選考を突破。23歳の時に中途入社した。「英語だけでなく、日本語、ドイツ語の三つの言語を話せることはプラスになると聞いていた。ドイツで暮らしたことは自分のアドバンテージになっていた」。
 エミレーツ航空は、120カ国以上に就航路線があり、約130カ国から集まったスタッフが働いていた。社内の雰囲気はとても国際的で、使う言語は英語。村井さん自身もドバイを拠点に100カ国以上を客室乗務員として飛び回った。
 30歳を迎えたころから「これまでの貴重な経験を基にもっと成長したい」と考えるようになり、2016年にエミレーツ航空を退社した。日本に帰り起業も考えていた時、書店でクラフトビールの本を見つけた。読んでみると面白く、客室乗務員時代に訪れた国々で同僚とよくパブに行っていたことを思い出した。
 「ビール醸造を学びたい」と思い立った村井さん。ドイツ留学時代のホスト家族に協力してもらい、再びドイツへ渡った。バイエルン州の醸造所で半年間にわたって働きながらビール造りを学んだ。帰国後の2019年1月に醸造免許を取得、ビール醸造所兼飲食店「あすなろブルワリー」(福岡市博多区)を開いた。

■環境の異なる人との触れあいは財産

 店は順調にスタートしたことから、2019年に村井さんは母校の中津北高に申し出て「あすなろブルワリー奨学金」を創設した。留学や英検受験の費用を支援する目的で、留学した人(14日以上)に原則5万円、英検合格者に受検料の半額を給付している。これまでに留学には2人、英検には116人が対象となった。
 奨学金創設の背景には、村井さんが両親に「もうけだけでなく、地域に貢献しなさい」と教えられて育ったことがある。エミレーツ航空で働いていた時から「地元のために何かしたい。後輩の支援をしたい」と抱いていた。今では、中津北高の同窓生から奨学金に出資し協力したいとの声も出ており、支援対象を拡大する構想もある。
 支援を受けている中津北高の村上美紀教頭は「経済的支援があることで生徒に留学や受験を勧めやすくなった。村井さんの姿を通して生徒が『自分にもできることがある』と思ってくれるとうれしい」と感謝する。
 村井さんは「海外で学び働くことで、育った環境や受けた教育がまったく異なるさまざまな背景を持つ人と知り合えたことは人生の財産」と振り返る。後輩には「大分で暮らすだけでは経験できないこともある。海外に出て、いろんなものや人に触れ、知識や経験を増やしてほしい」とアドバイスしている。

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