「サッカーコラム」もつれるJ1の優勝争い 猛追の横浜Mに注目

 令和初となるJ1リーグのタイトル争いは、例年と少し趣が違う展開となっている。これまでの優勝チームは、シーズン終盤に勢いを増して「ゴール」まで駆け抜けるイメージをだった。勝ち点を取りこぼすことはないので、「強い」という印象と「王者」という称号が当たり前のように結び付いてきた。一方、今季は優勝争いを演じている上位チームがあっさりとポイントを失ってしまっているのだ。

 10月18、19の両日に行われた第29節を終えた時点で首位に立っているのが鹿島。ここまで8試合負けなしの成績(5勝3分け)を残しているが、ここ3試合に限れば1勝2分けに終わっている。引き分けた相手が8位の札幌と降格圏の17位に沈む松本であったことを踏まえると、鹿島の選手たちの思いは勝ち点5を得たというよりも勝ち点4を失ったという方が強いに違いない。得失点差で2位に付けるFC東京も直近5試合で2勝1分け2敗と五分の成績。優勝を狙うチームとしては共にやや寂しい成績といえる。

 残された試合数は5。勝ち点56で首位・鹿島と2位FC東京が並ぶなか、注目なのは勝ち点差1まで追い上げてきた3位の横浜Mだ。

 第21節から第23節に掛けて3連敗を喫した結果、5位に後退するなど一時はタイトル争いから脱落した感があった。名古屋に快勝した第24節では順位を3位に上げたものの、当時首位だったFC東京との勝ち点差は7。優勝争いに絡む可能性は薄いと思われていたが、一気に調子を上げてきた。

 2シーズン目を迎えたアンジェ・ポステコグルー監督の哲学が隅々まで浸透したチームが披露する超攻撃サッカーは、見る者を飽きさせない。ポジションチェンジを激しく繰り返したかと思うと、両サイドバックが平気な顔をして敵ゴール前に進出してくる―。相手からしたら、マークの受け渡しだけでもかなりの神経を使うだろう。

 その攻撃陣の中でカミソリのような存在感を示しているのが、仲川輝人。3トップの右に位置する161センチの「小さな巨人」だ。“ハマの新幹線”という異名通りのいだてんだが、スピードの使い方が絶妙にうまい。数歩でトップスピードに乗るかど思えば、瞬時にストップできる。巧みに緩急を使い分けられるから、その速さがさらに際立つのだ。

 スピードに優れた選手には、技術的に問題のある場合が少なくない。ところが、仲川の場合は純粋に技巧派と呼ぶことができるほどの高いテクニックを備えている。しかも、右利きながら左足も遜色なく使えるのだ。第29節湘南戦の前半39分に挙げた先制ゴールはまさに、この特徴が凝縮されたものだった。

 両足を使えるということは、それだけでプレーの選択肢が広がる。中盤の中央で喜田拓也がボールを持ったときに、右サイドのペナルティーエリア内にいた仲川はバックステップをしてボールを受けるスペースを作った。喜田からパスを受けると、湘南のMF鈴木冬一がカバーしてきた。ここで縦に抜けるのか、それとも中に入るのか―。そんな予測をしていると、右サイドを松原健がオーバーラップしてきた。それと同時に、右足でボールを内側に動かした仲川が即座に左足インサイドでボールを擦り上げた。サイドは逆だが、いわゆる「デルピエロ・ゾーン」からカーブをかけたシュート。しかも、ダブルタッチのような小さく素早いモーションで放たれたものだから、GK秋元陽太は対処する術がなかった。完全にタイミングをずらされていた。

 GKのタイミングを外して、良いコースにボールを送り込む。そうすれば、強いシュートでなくてもゴールになる。仲川はこの感覚に優れているのだろう。第28節磐田戦では同じペナルティーエリア右から、右足アウトでボールを持ち出した後に右足で対角線上のゴール左隅にボールを流し込んだ。これも決して速くはなかった。この「縦に抜け出す」というイメージを鈴木は持っていたのだろう。それゆえ、カットインへの対処が難しくなってしまった。ここまで意識して、湘南戦の左足シュートを決めていたのなら、仲川という選手は相当の策士だ。

 試合終了間際に、湘南に1点を返されたものの、終わってみれば3―1の快勝。横浜Mは上位2チームを完全に視野に捉えた。同時に大きな誤算もあった。後半33分に仲川が負傷交代したのだ。ドリブルの際に自らプレーを止めた。右太もも裏を押えていたので、ハムストリングを痛めたのだろう。いわゆる肉離れだ。場合によっては復帰までに時間を要するかもしれない。

 ポステコグルー監督もこれには頭を抱えるだろう。「重要な選手の一人だし、この時期に大きなケガになってしまうと痛手になる」といっていたが、今季12点を挙げている仲川がいるといないとでは攻撃力はまったく変わる。横浜Mの勢いが止まらなければいいのだが。

 優勝争いする2チームがラグビー・ワールドカップ(W杯)の影響でホームを使えずに迎えたJ1の終盤戦。イレギュラーなことが起きている今シーズンだが、最後は強いチーム同士が競り合う姿を見たい。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続。

2019年10月24日

サッカーコラム

サッカージャーナリスト・岩崎龍一氏による詳細な分析です。

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