記者会見で上告を求める思いを語る遺族の長文恵さん(左から3人目)=29日、福岡県弁護士会館
大分市の時速194キロ死亡事故で、被告の男(24)に危険運転致死罪を認めなかった福岡高裁の控訴審判決を不服として、被害者遺族と代理人弁護士は29日、福岡高検の幹部と面談し、最高裁に上告するように要望した。「国民の常識と懸け離れた判決。確定させないでほしい」と求めた。高検の刑事部長は「重く受け止める」と応じたという。高検は上告期限の2月5日までに遺族に方針を伝える。
この日は、事故で亡くなった小柳憲さん=当時(50)=の姉、長(おさ)文恵さん(60)のほか、代理人弁護士3人が高検を訪問。今月23~28日に集めた、上告に賛同する7万254人分のオンライン署名を紙に印刷し、提出した。
26日に検察側に出した要望書では、時速194キロで走行すれば「ハンドル操作のミスが起こって瞬時に車線を逸脱し、蛇行するなどの事態を容易に想定できる」と指摘。危険運転罪の要件である「進行を制御することが困難な高速度」に当たると記した。
「相手に事故回避の運転をさせることになる」と被告が認識できていたとも言及し、裁判例に基づけば、危険運転罪で処罰可能な「妨害目的」も満たすと主張した。
その上で、制御困難と妨害目的をいずれも否定した控訴審判決を「著しく正義に反する」「判例に相反している」と批判。最高裁に判断を仰ぐべきだと訴えた。
22日の控訴審は、一審大分地裁の裁判員裁判判決を破棄した。危険運転致死罪を認めず、罪名を過失運転致死罪に変更し、量刑は懲役8年から4年6月に減刑した。一審は制御困難だけを認定していた。
福岡県弁護士会館で記者会見をした遺族側代理人の高橋正人弁護士(69)=第二東京弁護士会=は「裁判所によって判断が割れている。最高裁で法解釈の統一を図るべきだ」と強調した。
長さんは「遺族感情だけで上告してほしいと言っているのではない。こうした判決でいいのか、この裁判は今後の高速度事故の扱われ方を左右すると思う」と語った。
<メモ>
事故は2021年2月9日午後11時ごろ、大分市大在の一般道(法定速度60キロ)で発生した。当時19歳だった被告の男は、乗用車を時速194・1キロで走らせ、交差点を右折してきた乗用車に激突。運転していた小柳憲さんを出血性ショックで死亡させた。