地域の活性化に向け合同会社を立ち上げた寺山喜博さん(前列右から2人目)とメンバーの住民ら=豊後高田市田染小崎地区
【豊後高田】豊後高田市田染小崎地区の書家で台湾茶講師の寺山喜博さん(45)が、地域の活性化につなげようと「棚田の真ん中合同会社」を立ち上げた。空き家を活用した宿泊・交流施設の運営やイベント開催などの事業を展開する。寺山さんは「千年以上続く文化に溶け込む日常風景が魅力の場所。住民の思いを大切にしながら、体験型観光の在り方を模索していきたい」と意気込んでいる。
寺山さんは香川県出身。2014年から4年間、台湾に住み、薬膳食材を扱う貿易会社などを経営した。帰国後は淡路島を拠点に活動したが、22年に旅行で訪れた国東半島の文化と自然に感動。国の重要文化的景観「田染荘」がある田染小崎地区の空き家を購入し、改装後に妻と移住した。
同地区(33世帯)は高齢化で人口減少が進んでおり、移住後、草刈りや家具の移動といった住民の困り事の解決を手伝ったり、地区内の愛宕(あたご)社の石段(312段)や参道脇の環境整備に努めてきた。
合同会社は、多くの人が関わって知恵を出し合うことで活性化につなげ、継続的に活動できるようにと市内外の9人で設立した。
地区内にある市のエコハウスを活用し、1棟貸しの宿泊施設「七ツ屋」を開業。同施設で月1回程度、食などをテーマにした交流イベントも予定している。将来的には雇用創出や収益を還元できる仕組みの実現を目指すという。
設立メンバーの渡辺善伸さん(66)は「住民が減り、5年後には行事ができないのではと不安だった。一歩踏み出すことが地区を守ることにつながれば」。寺山さんは「住民への恩返しのつもりで活動している。一緒に考えながら、活気ある田染小崎にしていきたい」と話した。
七ツ屋の問い合わせは寺山さんのインスタグラムで受け付けている。