新宿高野の経営陣を訪ねた県内のベリーツ生産者ら=1月、東京都
【東京支社】老舗果物店「新宿高野」(東京都)が、県オリジナルイチゴ「ベリーツ」に熱い視線を送っている。風味や鮮やかな色づきを評価しており、定期的にパフェやケーキに使ったスイーツのフェアを本店で展開している。担当者は「カットフルーツも含めた加工品に、もっと使いたい」と話す。県は2017年の商標登録以降、高品質を武器に出荷先を絞ってブランド化を目指してきた。有力品種のひしめく首都圏の市場で知名度アップにつながるか、注目される。
新宿高野本店はベリーツの青果を販売するほか、20年から期間限定でスイーツも提供している。今年は1月24~31日の間、パフェ(税込み2640円)やケーキ(同1404円)を取り扱い好評だったという。
ベリーツの県外最大の出荷先は京都市中央卸売市場だが、県や農業団体などが東京にも販促活動を重ねたことがきっかけ。同社も品質を認め、取引を続けている。
秋山智則ブランド推進担当部長(51)は「ベリーツは香りが強く、酸味と甘みのバランスがいい。色が鮮やかで、カットしても、ピューレ状にしても映える」と話す。加工用の出荷増を求めており、「付加価値を高められれば生産者にも利益を還元できるのでは」。
しかし、県内の農家は青果向けの生産が中心になる。一般的に単価が安くなる加工用の出荷は少なく、遠方への高額な輸送費もネックになっている。産地や流通の関係者らが巨大市場でのブランド構築に向け、出荷量や価格帯、規格などをすり合わせられるかが課題になりそうだ。
1月末に新宿高野を訪れ、経営陣と面談した渕野勇県農林水産部長は「首都圏での評価は生産者にとって励みになる。ニーズに応えていければ」、生産者代表の江藤英敏県いちご販売強化対策協議会副会長(74)=由布市庄内町=は「期待に応えられるよう、今後も味の良いものを提供していきたい」と語った。