市報を読み上げて録音する「かたつむりの会」の新川ヤス子さん(右)ら=日田市上城内町
【日田】視覚障害者に市報などを音訳して届ける日田市のボランティア団体「かたつむりの会」が、活動を続けて30年を迎えた。メンバーは録音に加え、対象者と交流する場も設けて活動を楽しんでいる。「待っていてくれる人のためにも、必要とされる限り続けたい」と励んでいる。
現メンバーは60~90代の女性6人。月に1度、市報が発行されるタイミングに合わせて集まっている。
今月上旬、市総合保健福祉センター(上城内町)の一室で6人がテーブルを囲んだ。市報と「社協だより」を見開き1ページごとに交代しながら1人ずつ音訳を担当。残りのメンバーは読み間違いがないか確認した。「いい調子、いい調子」「うっかり間違えたわ」。笑い声も上がった。
用いるのはラジカセとカセットテープ。音訳を利用する対象者は高齢の人が多く、長年使い慣れた物にしている。
練習せずにぶっつけ本番でマイクに吹き込み、写真は情景が思い浮かぶように工夫して伝える。間違えた時の言い直しやメンバー同士の会話も録音され、それも好評だという。
新川ヤス子会長(78)=小山町=は「気張らず楽しみながら活動できている。その中で出る素人感がいいんじゃないかな」と笑顔で話す。
もともと「日田すいめいライオンズクラブ」の盲人福祉事業の一環でスタート。1995年に独立した会となった。「かたつむり」の名称は「ゆっくりのんびりと自分たちのペースで続けていこう」との意味を込めている。
テープは市内の約10人に郵送で届ける。声だけのつながりで済ませたくないと、月見や忘年会なども開いてきた。交流の場を設けている音訳ボランティア団体は県内で珍しいという。
ここ数年はコロナ禍の影響を受けたものの、「テープが聞こえにくい」との困り事や「コーヒーを飲みに来ない?」といった誘いがあると自宅を訪ねて親交を続けている。
この30年間、メンバーに多少の入れ替わりはあったものの、ほとんど顔ぶれが変わっていない。平均年齢が70代後半となり、新たな担い手も募っているが、継続して参加する人がなかなかいないのが悩みだ。
メンバーの一人は「下手でも喜んでくれる人がいるから頑張れるし、こっちもうれしくなる」と魅力を語る。新川会長は「このテープを愛してくれている人がたくさんいる。読み続けられる限り続けたい」と力を込めた。