収穫したコメの品質を検査するＪＡべっぷ日出の職員＝日出町大神
【日出・別府】ＪＡべっぷ日出（佐藤隆博組合長）は、今年の一般主食用米の買い取り価格を大幅に引き上げた。過去最高値の２万円（１等玄米、６０キロ）で、厳しい生産環境に置かれているコメ農家の状況を考慮した。同ＪＡは「資材や肥料が高騰する中で、生産者の収益確保につながれば」と話している。
同ＪＡによると、昨年の買い取り価格は１等玄米で１万４千円だった。２等玄米と３等玄米の価格も改め、それぞれ１万９２００円、１万８２００円（いずれも６０キロ）とした。どの等級も昨年より約４０％、引き上げた。方式が異なるため単純比較はできないが、同ＪＡは「県内でも特に高い水準ではないか」と話す。
別府市ではヒトメボレ、日出町ではヒノヒカリとナツホノカが主に生産されており、今年は２等米の割合が高いという。品種による価格差はない。
今年は８月下旬に台風１０号が直撃した他、猛暑のため高温障害が多発し、品質に影響が及んだ。地域によってはイノシシの被害が相次ぎ、収穫量の減少を招いた。農機具や肥料、エネルギー価格の高騰も重なり、同ＪＡには生産者から価格引き上げを要望する声が多く寄せられていたという。
同町大神の軒の井生産組合の大川一彦組合長（６９）は「多くのコメ農家で赤字が常態化している。後継ぎが見つからず、廃業する生産者も多い」と厳しい状況を明かす。価格引き上げについては「ありがたい」と歓迎する一方、販売価格の上昇につながることが見込まれることを踏まえ「消費者には申し訳ない。理解をお願いしたい」と話した。
同ＪＡも「消費者にとっては安い方がいいと思うが、生産者の苦境も考慮しなくてはいけない。可能な限り低い価格で販売できるようにしたい」と説明。管内で生産されたコメは主に学校給食用として販売する。同ＪＡの農産物直売所でも売るという。
同ＪＡは「将来にわたって作り続けられるのか不安に思っている農家は多い。状況が好転するきっかけになれば」と力を込めた。
＜メモ＞
ＪＡべっぷ日出は、生産者の出荷時に代金を一括で支払う「買い取り制度」を導入している。県内ではコメの集荷時に仮渡し金（概算金）を支払い、年度末をめどに最終的な精算をするＪＡもある。ＪＡ全農おおいたは９月、概算金の目安をヒノヒカリで１万７０４０円（６０キロ）と決めた。
