「高速暴走・危険運転被害者の会」が警察庁に提出した要望書
犯罪や事故に巻き込まれた被害者らを対象にした特別休暇制度を設けるべきだとして、大分市の時速194キロ交通死亡事故の遺族らでつくる「高速暴走・危険運転被害者の会」が改善を訴えている。今月、警察庁に要望書を提出。心身の被害回復や訴訟参加に特化した休暇制度がないため、「理不尽な被害に遭ったのに、有給休暇を使っている実情がある」と主張している。
会の共同代表で、大分市の事故で弟=当時(50)=を亡くした長(おさ)文恵さん(58)は、長崎県内で暮らしている。2021年2月の事故以降、片道数時間をかけて大分市に帰省し、捜査への協力や検察官との打ち合わせ、一周忌や三回忌などの法要に臨んできた。家族を亡くしたショックと仕事を休むことへの負担感から「何度も離職を考えた」という。
今年11月に大分地裁で始まる裁判員裁判は、初公判から判決まで数週間にわたる。被害者参加制度を利用して審理に出席する長さんは、少なくとも12日間、仕事を休む予定。「特別休暇制度がないため、全て有給休暇を使うしかない」と語る。
同会によると、刑事裁判は原則として現場となった都道府県で開かれる。旅行先や出張中の事件・事故だったり、遠く離れた場所に住む親族が被害者になったりした場合、「被害者側が負担する交通費や移動時間は小さくない」と指摘する。
厚生労働省は犯罪被害に対応した特別休暇を就業規則などで定めるように企業側に促しているものの、導入は全国でごく一部にとどまるという。
同会は要望書で「裁判員には特別休暇が認められている。被害者も取得できるようにするべきだ。企業や居住地域で差が出ないように、法律で制度化してほしい」と望む。
要望書は19日、第4次犯罪被害者等基本計画(26年3月まで)の見直しを進める警察庁の意見募集に応じて提出した。長さんは今月31日にオンラインで同庁のヒアリングを受ける。「同じ思いをしている被害者や遺族がいるはず。現状を知ってほしい」と話している。