20代~50代までのハイトーン髪の社員で結成された『Blondy Me』開発チーム
現在の日本では「若々しく見せたい」「おしゃれに見せたい」という思いから、多くの人が“ヘアカラー”を選択している。15~19歳では、ハイトーンにしている割合が約50%にも及ぶなど、明るい髪色は珍しくない。90年代には、特定層向けだったハイトーンも、K-POPやSNSの影響から身近な選択肢となっている。しかし、切れ毛やパサつきといった悩みは変わらず、なかでも、傷んでいる髪を扱うときの精神的なダメージは、静かにハイトーンを苦しめてきた。ヘアケアの時間といかに向き合うべきなのか? ハイトーン専用の泡カラーシャンプー『Blondy Me』を開発したスタイリングライフ・ホールディングスBCLカンパニーの西村さんに話を聞いた。
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■”若者の特権”ではなくなった「ハイトーン」という選択肢
かつては「若者が個性を主張する手段」だったハイトーンのヘアスタイル。その立ち位置は少しずつ変化し、社会に受け入れられている。特にコロナ禍以降、対面接客での細かい身だしなみルールは相対的に弱まり、自分の好きな髪色で働く価値観が強まった。2021年にはスターバックスが髪色や服装のルールを大幅に緩和し、2024年にはマクドナルドがクルーの髪色を完全に自由化。社会で働いていても、“自由な髪色”で生活していける土壌は着実に広がっている。
ヘアカラーやトリートメントの技術も進化している。安室奈美恵や浜崎あゆみが一世風靡した90年代は、金髪はダメージを覚悟のうえで楽しむヘアカラーで、“若者の特権”というイメージが強かった。しかし現在は、実に多様な染め方のアプローチがある。
美容全体に求められている“透明感”がヘアカラーでもトレンドとなり、髪の赤みや黄ばみを除去するブリーチによって繊細なカラーを表現する人も。白髪ぼかしやハイライトなど、大人世代ならではのカジュアルな楽しみ方も浸透している。
「弊社代表も50代で、金髪なんです。私も40代ですが、ブリーチを複数回やっています。弊社には年代役職問わず、ブリーチをしている社員が、多数います。街中を歩いていても、以前よりハイトーンを見かける頻度が増えたようにも感じます。
以前は世間体の面でも、ダメージの面でも覚悟を持って行う髪色というイメージでしたが、社会が変わりヘアケアの技術が進化して幅広い世代がチャレンジできる髪色になりつつあると感じています」(スタイリングライフ・ホールディングスBCLカンパニー 西村さん、以下同)
■シャンプーが全然泡立たない… 入浴時に痛感させられる”ダメージ”
技術の進歩もあり、デメリットが少なくなりつつあるハイトーン。髪色が明るいだけで垢抜けて見えたり、いろいろなカラーに挑戦しやすくなったりといったメリットもある一方で、そのヘアスタイルを維持し続けるには、まだまだ覚悟が必要だ。
社内のハイトーンヘア同士で会話を重ねてくと、あまり表向きでは語られない細やかな苦痛が浮かび上がってきた。それは、入浴時のヘアケアにおけるストレスだ。
「ハイダメージのブリーチ毛は水を吸ってしまう性質があるので、シャンプーをするときに髪同士が貼りついて、指が通らないんです。無理やりに通そうとすると、髪が切れそうになってしまう。せっかくこだわった髪をケアする時間が、改めてダメージを痛感する瞬間になってしまっているんです。結果的に、髪を洗うのが億劫になったり、怖くなってしまったりといったことに繋がってしまっています」
実際問題、ハイトーンにとって定期的なメンテナンスは必要不可欠だ。綺麗な状態を保つためには、お金も時間もかけなければならない。適切なケアができていないと、髪を洗う時間がダメージを実感する時間になってしまう。そんな日々が積み重なっていった先で「ケアが面倒だし、ハイトーンやめようかな」となってしまうのは、想像に難くないだろう。
「好きな髪色でいるのに、髪を洗うたびにダメージを実感して落ち込むなんて、すごく悲しいじゃないですか。美容は機能や成分で語られがちですが、ポジティブな気持ちで髪色を楽しんでいる方々のスタイルや気持ちに寄り添えるものを作りたいと考えました。
新たに立ち上げたブランド『Blondy Me』では、泡状のシャンプーを開発しました。ハイトーン社員で結成されたチームでの企画会議で、シャンプーの泡立ちについての悩みが共有されたことがきっかけとなっています」
実情を調査してみたところ、「ハイダメージだと、物理的に泡立ちにくい」という事実が発覚。次いで行った簡易的なネットアンケートでも、カラーだけしている人とブリーチをしている人で、泡立ちに関する悩みに明確な差が表れた。
ブリーチをしている人は、シャンプーが泡立たなくて困っているかもしれない。その気づきから、リキッドタイプではなく「最初から理想の泡で出てくるシャンプーを作る」という発想に至った。結果的に、泡の形状であることが、洗髪時の摩擦の軽減にも役立つことがわかったという。
「当社からカラーシャンプーを発売することも初めてだったので、手探りでハイトーンならではの悩みを解決していきました。何より優先したのは“使い心地の良さ”です。チームメンバー全員がハイトーンだからこそ、髪のダメージ=心のダメージと身に染みて感じていました。
髪を洗うたびにネイルや手、お風呂が染まる心配をしなければならない“紫シャンプーあるある”の悩みも解消できるように、マイルドな染毛効果を発揮する“シアーパープル”に色味を設定しています。もしかすると紫シャンプーを使うことで、色が入りすぎてしまう人もいるのではと仮説を立て、“お気に入りの髪色をキープできる”ちょうどいい塩梅を模索していきました」
商品開発で苦労した点について尋ねると、西村さんは「一番大変だったのは、いろんな髪質の人に満足してもらうこと」だという。
「最初のうちは、太い髪、細い髪どちらの髪質にも合うものを作るのに苦戦して、開発メンバー全員が満足する1本なんて無いのではないかと思ったこともありました。正直なところ、成分にこだわりながらもお手頃な価格を実現するためにコストを抑えるのにも苦労しましたね。でも、最終的にはちょうどいいバランスで成り立って、“ハイトーンだったら、どんな髪質のかたも満足できる1本”に着地したのではないかと思っております」
■タイパに風呂キャン…”時間”との付き合い方が意識される今、必要なのは「ケアしている実感」
“タイムパフォーマンス”や“時短”という言葉が日常的に使われるようになって久しいが、西村さんは「なんでもかんでも時短することを良しとする時代ではない」と語る。
「特にハイトーンの人は、カラーシャンプーをしてから時間を置いたり、丁寧にトリートメントしたり、ヘアケアに時間がかかります。でも時間をかけただけの対価あれば、タイムパフォーマンスとしては、納得してもらえると思うんです。お風呂でヘアケアする時間が、面倒なメンテナンスや義務ではなく、お気に入りの髪を労わる愛おしい体験になれば、有意義な時間の使い方に変わっていくのではないかと。
多くの人にとってお風呂の時間は、自分と向き合う時間でもあると思いますが、特にハイトーンの人は、心地よくお手入れができないと、お風呂の時間をネガティブに感じてしまうかもしれません。“風呂キャン”といった言葉が一般化した時代のなかで、いかに入浴で自分をケアしている実感を持てるかは、今後より一層大事になってくると思います」
ハイダメージのヘアケア商品は“サロン品質”や“プロの”と謳うものも多いが、『Blondy Me』はハイトーン髪のBestie(友達)を目指していくという。自分たちが実際にハイトーンカラーになってみて感じたことを、お客さん目線で反映している商品だからこそ、等身大で寄り添っていく方針だ。
最後に「おしゃれを楽しむ人々にとって『Blondy Me』が、どのような存在でありたいか」と尋ねると、西村さんは次のように答えた。
「私自身、久しぶりにブリーチをして、髪が明るくなるだけでこんなに気持ちが前向きになるんだと実感しました。だからこそ、ダメージやケアのストレスでその楽しさを邪魔されたくない。
『Blondy Me』は、いわばハイトーンを楽しむ仲間が作ったブランドです。 誰もがハイトーンにすべきとは思いませんが、この色を選んだ人にとっては、自分を好きでいるための大切な相棒でありたい。髪色から始まるポジティブな連鎖を、全力でサポートしていきたいです」
(取材・文/坂井彩花)