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河瀬直美監督(※瀬=旧字体)の最新作『たしかにあった幻』が、「第78ロカルノ国際映画祭」(8月6日~16日)のインターナショナル・コンペティション部門にクロージング作品として正式招待されることが決定。現地時間15日にワールドプレミアが行われる。あわせて、2026年2月に全国公開されることが発表された(配給:ハピネットファントム・スタジオ)。
【画像】『たしかにあった幻』場面写真
長編第二作『火垂』(2000年)で第53回ロカルノ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞して以来、翌年、第54回(01年)には『きゃからばあ』がコンペティション部門招待。第65回(12年)では河瀬監督のパーソナル・ドキュメンタリー5作品(『塵』『垂乳女』『きゃからばあ』『かたつもり』『につつまれて』)をオマージュ上映、河瀬監督がプロデュースしたドキュメンタリー映画『祈-Inori-』が新鋭監督部門グランプリを受賞するなど、スイス・ロカルノは河瀬監督の国際的評価の礎のひとつとなってきた。
今回の新作は、小児臓器移植実施施設を舞台に、命のともしびを照らす「愛」の物語。フランスからやってきたレシピエント移植コーディネーター・コリーが、脳死ドナーの家族や臓器提供を待つ少年少女とその家族と関わりながら、命の尊さと向き合う。同時に、突然失踪した恋人の行方を追うコリーの姿を通じて、愛と喪失、希望を描く。
これまで『あん』(15年)ではハンセン病を抱える女性、『光』(17年)では視力を失っていく男性、『朝が来る』(20年)では特別養子縁組の夫婦を取り上げ、社会的偏見や喪失の中で、他者との関係性を通して救われる「愛のかたち」を描いてきた河瀬監督。本作でも、深い人間ドラマを通じて命と愛の意味を問いかける。
撮影期間は24年6月から11月。兵庫、大阪、奈良、岐阜、屋久島、パリとロケーションを転々としながら実施された。小児臓器移植に携わる実際の医療関係者たちが、現在の日本が抱える臓器移植の問題点をディスカッションするシーンや、移植手術シーンなどはドキュメントとして撮影され、それをドラマの中に巧みに取り込むことによって物語にリアリティと臨場感を持たせている。
主人公・コリーを演じるのは、ポール・トーマス・アンダーソン監督『ファントム・スレッド』(17年)への出演をきっかけに国際的な名声を獲得したヴィッキー・クリープス。臓器移植の現場で命と向き合いながら、失踪した恋●の●跡を辿る姿は忘れることのできない印象を残す。コリーの恋人であり、突然失踪する迅を寛一郎が演じる。
■ストーリー
国際人材交流事業の一環で日本へやってきたフランス人女性コリー(ヴィッキー・クリープス)は、臓器の移植を必要とする人と関わるレシピエント移植コーディネーターとして、日本で数少ない小児心臓移植実施施設の病院でサポートスタッフとして働き始める。
移植を待つ重症の小児を多く受け持つその病院では、限られた人員で必死に日々の業務をこなし、切実な状況にある患者やその家族と向き合っていた。コリーはそうした厳しい環境の中でも、患者家族をはじめ、従事する医師や看護師、コーディネーター、保育士や院内学級の先生らと触れ合ううちに、移植医療をめぐる人々の輪のあたたかさを再認識していく。
しかし、そんな彼女の心を支えてくれていた屋久島で出逢った恋人・迅(寛一郎)が、ある日なんの前触れもなく同居していた家から消えてしまう…。
■監督・脚本:河瀬直美コメント
この度、映画を本当に愛してやまないロカルノ国際映画祭の選考委員の皆様に本年度のコンペ部門のクロージングフィルムに選んでいただきましたことを大変光栄に思います。思い返せば、2000年公開の『火垂』がロカルノで受賞したことは私にとってとても美しい忘れられない想い出です。25年の月日を経て、またロカルノに戻って来れたことに感謝しています。
■新作に寄せたロカルノ映画祭のアーティスティックディレクターのGiona A.Nazzaro氏からのメッセージ
「水のように、音を立てずに深く掘り下げ沈黙を恐れず、耳を傾ける映画を作ってくれてありがとう」
■コリー役:ヴィッキー・クリープスのコメント
When I make a movie, I follow an invisible thread - one woven into the larger tapestry of dreams. This particular thread led me deep into the ancient forests of Yakushima and back into the gentle heart of childhood. I walked the delicate line between ghosts and reality, drawn by the mystery of love.
映画を作るとき、私は目に見えない一本の糸をたどります――夢という大きな織物に織り込まれていく糸です。今回、糸は、私を屋久島の太古の森の奥深くへと導き、そして幼い頃のやさしい心へと連れ戻してくれました。幽霊と現実のあいだの繊細な境界線を歩きながら、私は愛という謎に引き寄せられていきました。
■迅役:寛一郎のコメント
諸行無常。
何かこの作品に込められたテーマのような気がしています。
この作品は自分にとって挑戦でした。
言語、さまざまな自然での撮影、新たな人との出会いで、たくさんの学びと、この現場でしか体験できない経験をさせてもらいました。
そんな作品がこうしてロカルノ国際映画祭に招待していただいた事を光栄に思います。
関わったたくさんの人たちの努力が報われる気がします。
そしてこの作品が世界の人に見ていただけることに喜びを感じています。