地域を支え、人々に支えられてきた老舗を訪ね、人と風土、地域を伝えた夕刊企画。
※大分合同新聞 夕刊1面 2005(平成17)年4月6日~2007(平成19)年3月28日掲載
創業から約150年。正確な年は分からないが、現在の店主・姫野綾子さん(89)の祖母セイさんが乾物屋を開いた。母芳江さん、綾子さん、娘康子さんと女4代が中心となって切り盛り。食料品店として、地区の「隆盛」と「衰退」をじかに見てきた。 「...
県道沿いに並ぶ商店街の片隅。3階建てビルの1階に構える店舗は、小さな和洋菓子店といった印象。外観から歴史を想像するのは難しいが、創業は大正8(1919)年にさかのぼる。 開業のエピソードはちょっと変わっている。初代の故仲町豊さんはもと...
1872年、「万力屋」として創業。屋号に宿る「皆さまの力を借りて良い酒を造る」との精神は、「藤居酒造」と名前を変えた今も引き継がれている。会社の玄関に掲げられているのは「和醸良酒」の合言葉。「和を持って良い酒を造る」という意味だ。 米...
世界で唯一、畳文化を持つ日本。「畳への愛着は日本人のDNAに刻み込まれているのでは。畳を敷きたいという年配者が最近、増えている」。工場(同市馬場尾)に積み上げられた畳を前に、3代目の元島謙一郎さん(49)が語った。 店の前身は江戸期の...
市役所に程近い、桂川のほとりに創業当時の面影を今に残す。市内の旅館の中でも最も歴史が古く、創業は1914(大正3)年にさかのぼる。 玄関をくぐると、宿泊客や宴会客の夕食準備に追われ、慌ただしく動く従業員の姿が飛び込んできた。...
大分市中心部で最も古いガレリア竹町に店を構える。「信用第一」。カウンターの背後を見上げると、4文字の書が目に飛び込んでくる。代々受け継いできた信条という。 今も昔も布団の形は変わらないが、綿の種類は豊富になった。...
「お団子1個ください」。夕方、元気な声が店先に響く。店前の松原公園で遊んだ子どもたちだ。「今の子が和菓子をおいしそうに食べてくれると、うれしくて」と、ついおまけしてしまう3代目の荒巻義雄さん(64)。 程よい甘さが人気の秘密。定番は、...
その名の通り、潮(海水)をくんで沸かした湯が”看板”。神経痛やリウマチ、あせもなどに効能があり、風邪もひきにくいという。「大げさに言えば地域の健康を支えてるのかもねえ」。番台に座る加来三津栄さん(63)と二女理恵さん(35)がふふっと笑み...
岩波家は元回船問屋だった。1896(明治29)年、初代の新吾さんが近郊の竹を切り出し、大阪の市場に海路で運んだ。真竹の生産量が日本一の大分県は、当時から品質の良さには定評があった。...
「同じ事業がいつまでも続くことは絶対にないし、古いところほど新しいものを取り入れて生き続けている。それが老舗というものじゃないですか」 百年以上続く海産物卸問屋は、今まさに新たに動き出している。昨年10月、佐伯港に臨む直売所「さいき海...
社長の古後俊彦さん(83)の祖父六郎さんが、1893(明治26)年、大分市竹町に本屋「忠文堂」を開いた。六郎さんの早世後、妻のユミさんが営んでいた仕立屋だけが残った。 人々の服装が和装から洋装に切り替わった時代。...
古い商家が並ぶ市内中心部の中でも、ひときわ長い歴史を持つ。店主は内藤昭治さん(71)。祖父の五郎さんが陶器店を開業したのは1906年だが、先祖をさかのぼれば約300年、城下町とともに歩む商家としての営みが続いている。 銀行員だった父仙...
古い石畳に沿って旅館や商店が軒を連ね、浴衣姿の観光客が浴場に向かう。湯平温泉には、古き良き湯治場の風情が今も残っている。 歴史ある温泉街の中でも指折りの老舗。創業年は不明だが、1886(明治19)年発行の旅館業許可証を示す木札が現存し...
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