「18歳選挙権」の導入が決まった。人生初の1票を手にした学生たちは、どのような思いで権利を行使するのか。体験型の主権者教育を目的とした大分大学での連携授業を通し、市民意識を育みながらさまざまな社会問題に向き合い、解決策を探った。大分合同新聞創刊135周年記念の年間企画。
※大分合同新聞 朝刊社会面 2016(平成28)年5月9日~2017(平成29)年3月27日掲載
人間は十人十色だ。 考え、好み、性格はそれぞれ異なる。世の中はそんな一人一人の集合体。みんな「違う」からこそ面白い。 多様な社会をどう生きるか。どうすれば自分の人生は良くなるか。その解は「きっと社会との関わりの中でしか出てこない」...
大分大学経済学部と大分合同新聞社の連携授業「地域社会の課題解決型ワークショップ」は、8月上旬に前期日程を終えた。教員陣を束ね、1年生32人に体験型の主権者教育を実践した市原宏一教授(56)に聞いた。 ――前期を振り返って。 「...
大分の大学生、国会へ――。大分合同新聞社と大分大学の連携授業「地域社会の課題解決型ワークショップ」を前期に受講した経済学部1年生5人が12日、東京で国会議事堂などを見学した。国権の最高機関を訪れ、政治や社会への関心をさらに高めるのが狙い。...
地下1階・地上5階の首相官邸(東京・永田町)には、日本様式の中庭がある。 空に伸びる青竹は「未来への挑戦」を意味し、そこに据えられた複数の庭石は「力強さと安定」を表す。原則、一般人は立ち入ることができない。 特別許可を得て、大分大...
胸の高鳴りが止まらない。 今、私は「国政のど真ん中」にいる。国会議事堂の象徴でもある赤じゅうたんは、思っていた以上にフカフカだ。 「建物全体に西洋文化が取り入れられていて、日本にいるようで日本じゃないみたい。ここが国権の最高機関な...
国会に訪ねて行った。 首相官邸で握手をした。 中央省庁で意見を交わした。 自民党、民進党、社民党。大分大学経済学部の1年生5人は、東京の永田町や霞が関で大分県関係の衆参両院議員4人と面談、若者の思いをぶつけた。 席上、香川...
東京・霞が関の農林水産省。本館3階の副大臣室で、大分大学経済学部1年の山下大河(18)が質問の手を挙げた。 「TPP(環太平洋連携協定)に関係して、今後の日本の食料自給率をどう上げていくおつもりですか」 日本の1次産業の行方を左右...
体験型の主権者教育を実践する大分大学経済学部と大分合同新聞社の連携授業は5日、後期が始まった。大分市内の「子ども食堂」などに出向き、交流体験のフィールドワークを通して背景などを分析。家族や地域社会の在り方を若者の視点で考える。...
床面積574平方mの大法廷には、頭上の吹き抜けから柔らかい光が差し込んでいた。 大分大学経済学部1年の遠山紗矢(19)=大分市=にとって、今回の上京で最も心待ちにしていたのは最高裁判所(東京・隼(はやぶさ)町)の見学だった。 さす...
大分大学経済学部1年の男女5人は、東京でさまざまな「自覚」が芽生えた。それぞれの思いを伝える。 ◆遠山紗矢(19)=大分市 国会議員に奨学金制度を尋ねた。これまでの流れや日本の教育費の高さ、給付型奨学金を創設するための方策など...
体験型の主権者教育を実践する大分大学経済学部と大分合同新聞社の後期連携授業で、1~4年の学生30人が大分市内の「子ども食堂」でフィールドワーク(体験交流活動)に取り組んでいる。体験を通して「家族、地域、社会の在り方を考えてほしい」と同学部...
来た、と思った。大分市中心部の居酒屋でバイト中、スマホを見ると着信が入っていた。 休憩時に電話を入れると相手は言った。「おめでとうございます」。入社試験を受けた通信関連会社(福岡県久留米市)の人事担当者からだった。 大分大学経済学...
大分大学経済学部3年の高橋奨(しょう)(21)=長崎市出身=はフットワークが軽い。 今夏に立命館アジア太平洋大学(別府市)の国際ボランティア団体に1人で飛び込み、夏休みを利用してタイに渡った。「仲間と一緒に2週間、現地のムラおこしを考...
「地域活性化」。大分大学経済学部3年の平野純(21)は高校時代から、この5文字にこだわり続けている。 そもそも何を根拠に論じればいいのだろう。地場産業が潤い、地域経済が活発に回ればいいのか。それに伴い、人口が増えれば理想と言えるのか。...
「もっと強くなりたい」 母が亡くなって10年が過ぎた。 大分大学経済学部3年の後藤虎(たける)(21)=日出町藤原出身=は今でもふと、あの優しい笑顔が頭をよぎる。 乳がん。37歳だった。 自分が8くらいの頃から入退院を繰り返...
玖珠町育ちの大分大学経済学部3年、宮崎由衣(21)は放送部に入っている。 アナウンス班で司会を担当し、請われれば学内外のイベントでマイクを握る。声音は清らかで、聞き心地がいい。 中学時代、体育祭の放送係に推薦された。「担当の先生に...
冷や汗が止まらなかった。 大分大学経済学部4年の矢野新馬(しんば)(22)=北九州市出身=は今夏の前期試験の結果に焦った。学生名簿に名を連ねて5年。この春の卒業には38単位足りず、留年した。 背水の陣だった。けれど就職活動に追われ...
古民家の和室に長机が並ぶ。畳に臼杵市市浜小学校の1~6年生20人が座った。 「皆さん、手を合わせてください」。音頭を取ったのは大分大学経済学部1年、神野(じんの)和幸(19)=愛媛県今治市出身=だった。「いただきます」 午後7時す...
今、子ども食堂はブームだ。 孤食の解消や貧困家庭の支援などを目的に、県内も1年ほど前から雨後のたけのこのように各地で開設が相次ぐ。 関係者にはジレンマがある。手を差し伸べるべき子にフォローできているだろうか。「貧困」のレッテルを貼...
「ただいま」 午後6時の豊後高田市玉津プラチナ通り。その一角のコミュニティーカフェに掲げられた赤色ののれんを、さまざまな親子がくぐって来る。 子ども2人の手を引く妊婦、乳児を連れたママ、幼い娘を抱えた作業着姿の父親……。夕飯の配膳...
子どもたちが帰った。 情報交換と反省会を兼ねて、静かになった部屋に大人が集まる。現役の小学校教諭、教員OB、ソーシャルワーカー、市社協職員、有志の市民……。 児童と交流した大分大学経済学部1年の男女4人が感想を述べ合った。「おいし...
「先生、この問題教えて」 宿題のプリントと向き合っていた男子児童が顔を上げた。「うーんと、これはね」。大分大学経済学部1年の宮本健太(20)=香川県丸亀市出身=が丁寧に教えていく。 元薬局の1軒家。1階で小学生が問題を解き、2階で...
子どもにとって魅力ある居場所とは――。大分大学経済学部の学生30人が1日、全国で開設が相次ぐ「子ども食堂」での理想的な過ごし方を提案した。体験型の主権者教育を目的にした大分合同新聞社との連携授業「地域社会の課題解決型ワークショップ」の取り...
「できること、続ける」 土足で玄関を上がると、ほこりが舞った。 家族の「歴史」が部屋に山積みされている。アルバム、賞状、食器、衣類、寝具……。「大切な思い出を捨てていいんだろうか」。大分大学経済学部1年の男子学生2人は戸惑った。 ...
午後8時半。大分大学経済学部1年のバイト生4人が膝を突き合わせた。スタッフ5人も同じテーブルを囲む。 大分市敷戸西町の子ども食堂「すみれ学級」を今後どう運営していくか。話し合ったのは2月中旬の金曜日だった。 「集まる児童が増えて食...
「あっ!」。驚いた。 宮崎市育ちの2人が大分大学の旦野原キャンパスで再会したのは、経済学部に入って間もない昨春のことである。 大淀中学(同市)の同級生、金丸葵(かねまるあおい)(19)と植村リサ(19)はすぐに意気投合した。共に大...
今朝も午前8時前から約20分間、すし詰め状態の車内で荒い運転に耐えた。 運賃7千ドン(約35円)の乗り合いバスを降りる。建設が進む高層ビル、路上に放し飼いの鶏、そこでパイナップルを切り売りする女性――。 「活気」を通り抜けた開発エ...
2月下旬の昼下がり。ベトナムの首都ハノイ郊外にある福祉施設で、精神障害のある6~20歳の男女14人が田宮瑛理(19)を取り囲んだ。 < ♪ アルプス一万尺 小やりの上で アルペン踊りを さぁ 踊りましょ > 輪の中心で手遊び...
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