想いを受け継ぎ、かたちを変えて生き続ける。──小田急不動産の古民家移築再生『KATARITSUGI』プロジェクト

  

 日本各地で進む少子高齢化や過疎化により、日本には約900万戸もの空き家が存在するといわれています。そのなかには、地域の風土に根ざした伝統的な技術で建てられ、何世代にもわたって家族の暮らしを支えてきた「古民家(※1)」とよばれる住宅があり、その数は約102万戸(※2)におよびます。そんな歴史ある古民家であっても受け継ぐ人が見つからず、空き家となったまま、やがて朽ちていくというのが現状です。

 こうした社会課題に対して小田急不動産は、古民家に宿る想いや記憶を大切にしながら次の住まいへとつないでいく『KATARITSUGI(かたりつぎ)』プロジェクトを立ち上げました。古民家の構造材を丁寧に解体・搬出し、移築再生によって都市部の新しい住まいへと“語り継ぐ”取り組みです。

 その第1号物件として、神奈川県開成町にモデルハウスが完成しました。使われているのは、新潟県阿賀町で160年以上にわたり神田家の暮らしを支えてきた古民家の構造材。完成にあわせて、家主である神田さんにも阿賀町から現地にお越しいただき、生まれ育ったご実家を手放すというご決断に至るまでの想い、そして新たな住まいとして生まれ変わった姿をご覧になった今のお気持ちを伺いました。


≪登場人物(写真左より)≫

・小田急不動産 取締役仲介事業本部長 河村 康伸

・古民家家主  神田 秋雄さん

・小田急不動産 仲介事業本部 仲介営業部 企画推進グループリーダー 山尾 正尭

・小田急不動産 仲介事業本部 リノベーショングループ 白鳥 桂太郎


神田さんの生家と小田急不動産の『KATARITSUGI』プロジェクト

新潟県阿賀町。冬には2メートルを超える雪が積もるこの土地で、神田さんの生家は160年以上にわたってご家族の暮らしを守ってきました。

この家を支えてきた硬くて太い立派な梁。囲炉裏のまわりに家族が集まり、笑い声が絶えなかった日々。

しかし、やがて空き家となり、維持が困難になったその家は、解体を待つばかりの状態にありました。


山尾「本日は開成町までお越しいただき、ありがとうございます。ご家族との思い出がつまったご実家を手放すという決断は、本当に簡単なことではなかったと思います。あらためて、当時のお気持ちを聞かせてください。」


神田さん「もう解体して処分するしかない、そう思っていたときに、小田急さんの『KATARITSUGI』プロジェクトの話を聞いたんです。これはただの再利用じゃない、家の“意味”をちゃんと受け継いでくれる。そう感じて、お会いする前から小田急さんにお願いしようと決めていました。」


河村「神田さんと初めてお会いしたのは、雪が降り積もる12月でしたね。プロジェクトメンバーと新潟県阿賀町へ行って、神田さんに我々のプロジェクトの話をさせてもらったあの頃が懐かしいです。」


神田さん「”小田急”の名前は知っていたけど、不動産の事業をされているのは知らなかったんです。だけど、想いを受け継ぎながら、使わなくなった家を再利用してくれるという取り組みに共感したからこそ、小田急さんにお願いしたいと思えました。」


≪モデルハウスでの対談≫

≪想いを語る神田さん≫


住まいを超えた「物語のある家」

白鳥「空き家になってから解体を決めるまで、どのくらいの時間がかかったのでしょうか?」


神田さん「実は、解体すると決めるまで10年はかかりました。気持ちとしては、やっぱり残したい。でも現実は厳しい。生前、父も“壊してほしくない”と言っていましたし、私自身もなかなか決断ができませんでした。」


神田さんが生まれ育ったのは、1860年代に建てられた歴史ある一軒家。

生まれてから50歳になるまで家族とともに暮らしたその家は、囲炉裏のある広い土間、すすで黒くなった梁や柱、厳しい雪にも耐えてきた、たくさんの記憶とともにあった家でした。

ただ、時代とともに住む人がいなくなり、家は空き家に。

老朽化による不安も重なり、「いずれは壊さなければならないのか」と、葛藤の日々が続いたといいます。


神田さん「壊すしかないと思っていた家に、活かすという選択肢が出てきたことが、本当にありがたかった。しかも、この山の中から遠く離れた都会で、また誰かの暮らしを支える家として生まれ変わる。それは、父も喜んでくれていると思うんです。」


白鳥「ご家族への想いを重ねた末に、私たちのプロジェクトに託してくださったんですね。本当にありがとうございます。」


≪阿賀町でお会いしたときの神田さん≫

≪長らく空き家となっていた神田さんのご実家≫


技術が宿る古材を、未来へ

白鳥「神田さんのご実家の梁、現地で初めて拝見したとき本当に驚きました。とにかく太くて重厚感があって、手に取るように大工さんの仕事の跡が残っている。あれは、まさに技術そのものですね。」


≪160年以上にわたって神田家の暮らしを支えてきた梁≫


神田さん「ほんとにね。阿賀町は冬になると2メートル以上は雪が積もるけど、うちの家はビクともしなかった。とにかく梁が立派でね。都会じゃ三寸柱が多いけど、うちのは四寸。それも、集落でも特に太い部類のものでした。それに、昔の大工さんの技が梁に残されていて、今でも見れば分かるからおもしろいんですよ。今の大工さんがそれを見て感じ取って、また次に伝えてくれる。それって、すごいことだと思います。」


山尾「おっしゃる通りです。解体のとき、地元の職人さんが一本一本、丁寧に梁を外していく様子がとても印象的でした。手刻みの加工の跡や組み方から先人の技を読み解きながら、“これを次にどう活かすか”を考えていたんです。まさに、技術のバトンが受け渡されていく瞬間だと感じました。」


≪解体の日。職人さんが一本一本、丁寧に取り外す≫


このプロジェクトが大切にしているのは、単なる古材の再利用ではありません。

木材に刻まれた大工の知恵や手の跡、その背景にある日本の建築文化を、現代の職人たちが受け止め、未来へつないでいくこと。

それが『KATARITSUGI』プロジェクトが目指すもう一つの大きな価値です。


白鳥「梁の“表情”から、先人の想いや遊び心まで感じ取れる。そんなふうにして生まれ変わった古材が、また新しい家族の暮らしを支えていく。まさに、物語が続いていく感じがします。」


≪移築先にあわせてどのように古材を魅せていくか、職人同士の綿密な打合せ≫


再会した、あの梁と父の面影

神田家の暮らしの記憶と想いを受け継いだモデルハウスが2025年5月、神奈川県開成町に誕生しました。

完成した建物を訪れた神田さんは、その空間にかつての面影を見出しました。


≪モデルハウス:外観(正面)≫

≪モデルハウス:LDK≫

≪モデルハウス:ロフトから見下ろした梁・LDK≫


河村「実際にご覧になって、いかがですか?」


神田「びっくりしましたよ。本当にここまで立派になるとは思ってなかった。天井が高くて梁が見える造りは新しいのに、私には懐かしさがこみあげてきます。子どもの頃、天井裏の掃除を手伝わされたときに見上げた、あの太い梁が思い出されました。傷も節も、そのまま残っていて。父の気持ちを考えると悩んだこともあったけど、こうして想いが生き続けていくなら、嬉しいですね。」


≪再利用された梁を見つめる神田さん≫


伝統も、想いも、暮らしも「語り継ぐ」

『KATARITSUGI』プロジェクトでは、その家で紡がれてきた暮らしや歴史も、新しい住まいと一緒に“語り継いで”いくことを大切にしています。

住まいの一部として受け継がれた古民家について、その背景やご家族の思い出をまとめた家の記録を冊子『家史(いえし)』としてかたちにして、新たに家を建てられたご家族(施主様)にお渡しします。


山尾「古材を受け継ぐだけでなく、その家で流れていた時間や、暮らしていた人の記憶、そしてその土地の文化や営みも、ちゃんと残していきたい。この『KATARITSUGI』プロジェクトは、モノの継承であると同時に、文化や想いを受け継いでいくものだと思って、取り組んでいきます。」


白鳥「設計担当としてプロジェクトに参加して、あらためて、家ってこんなにも人の記憶を背負っているんだと実感しました。素材としての味わいだけでなく、そこに住まわれてきた方の物語がにじんでいるんですよね。未来に向けて、”想いのある家づくり”をもっと広げていきたいです。」


河村「神田さんのご実家の梁を見たとき、これは本当に良い木だと感じました。柱も梁も、とにかくしっかりしている。新潟をはじめ、雪国の丈夫な古材は再生利用に適していると、全国的にも移築再生をされる方が多いと聞いています。小田急沿線にも、こうした技術と想いを受け継いだ家を、これからもっと増やしていきたいと考えています。」


神田さん「うちの集落には、空き家となって残ってしまっている立派な古民家がまだまだあります。ぜひ、使って活かしてほしい。歴史ある家を大切にしてくれる人が増えたら嬉しいです。」


── “かたち”は変わっても、“想い”は受け継がれていく。

この家に宿る物語は、新しい場所で、新たな家族の暮らしを見守っていきます。

そして私たちの取り組みは、今日もまた、誰かの記憶を未来につなげています。



※1 1950年以前に建築された防火構造でない一戸建木造住宅が「古民家」と定義されています(出典元:古民家の調査と再築/(発行)一般社団法人住まい教育推進協会)。築年数は(一社)全国古民家再生協会の調査において、所有者からのヒアリングによる推定となります。

※2 2023年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(1950年以前に建築された一戸建木造住宅の総数)


【『KATARITSUGI』プロジェクトに関するニュースリリースはこちら】

①   古き良き暮らしを語り継ぐ「KATARITSUGI」プロジェクトを開始します(2025年4月7日)

https://www.odakyu-fudosan.co.jp/_wp/wp-content/uploads/2025/04/da9943d7614d2ef83da31ceb14dc6dee.pdf

②   5月31日「古材の日」神奈川県開成町に平屋モデルハウスをオープン(2025年5月19日)

https://www.odakyu-fudosan.co.jp/_wp/wp-content/uploads/2025/05/9076b65bb369213d62558ef43a342cc3.pdf


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