【2026年最新】スマートホームが「暮らしのインフラ」へ。世界標準規格「Matter」とスマートキーの新規格「Aliro」の普及が暮らしの体験を劇的に変える。|Matterメディアデーレポート(前編)


2026年3月16日(月)から19日(木)まで、パシフィコ横浜にて「Connectivity Standards Alliance(以下、アライアンス)」のグローバルメンバーミーティングが、パナソニックのスポンサードで開催されました。3月18日には、Amazon.com、NECプラットフォームズ、Nordic Semiconductor ASAのスポンサーシップにて、アライアンスとしては国内初となるMatterに関するメディアデー「Matter in Motion」が開催されました。


2002年に設立されたアライアンスは、現在54か国から約900社、1万人以上が参加しており、スマートホームの世界標準規格「Matter」をはじめとしたIoT関連の規格化を進めています。今回の横浜ミーティングには25か国、98社から316人のエンジニアが集結し、活発な勉強会や情報交換が行われました。LIVING TECH協会(LTA)も2025年よりアライアンスと共同マーケティング協定を締結しており、本イベントの様子をレポートします。

1.Connected Experienceの未来


(基調講演を行うTobin氏)


アライアンスとして国内初となるMatterに関するメディアデーの開催にあたり、プレジデント&CEOのTobin氏は、基調講演で「地球上で最も優秀なエンジニアが集まる団体」と自負を語りました。スマートホームの新規格として注目されるMatterは、約半年に一度のペースでアップデートを続けています。


特筆すべきは、Amazon、Apple、Googleという3大エコシステムが競合の枠を超え、協力領域を明確にして開発に取り組んでいる点です。数百社のエンジニアが日々検証を行い、ユーザーにとってより良い体験の構築を目指しています。


近年の成果:スマートキー規格「Aliro」とMatterの進化

(アライアンス公式サイトより)


直近の成果として、2026年2月にスマートキーの統一規格「Aliro(アリロ) 1.0」がリリースされました。また、Matterもカメラ機能やエネルギー管理を強化したバージョン1.5がリリースされ、Zigbee4.0やサブギガヘルツ標準「Suzi」のリリースなど、相互運用性の拡大が報告されました。

Matterの将来展望とAIの融合

(Tobin氏基調講演資料より)


Matterは、現在300社以上がワーキンググループに参加して規格化を推進しているオープンな標準規格です。Tobin氏は、「規格そのものの進化だけでなく、政府や他団体との連携も重要」と述べ、今後はAIの進化をロードマップに取り入れ、さらなる高度化を目指す方針を示しました。


日本市場への期待

(Tobin氏基調講演資料より)


2024年に設立された日本支部は、2年間で参画企業が約4倍に急成長し、現在約80社が参画しており、MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)、LTA(LIVING TECH協会)、JEITAなど日本の組織との連携を深め、日本特有の要件を世界標準に反映させることを目的としています。「日本はデジタル志向が強く、今後スマートホーム市場が爆発的に成長する可能性を秘めている」とTobin氏は期待を寄せました。


(Tobin氏の基調講演を聴講する参加者)


Tobin氏の基調講演の後には、Matterをリードするエコシステム3社の代表とのフォトセッションも行われました。

写真左から、Chris DeCenzo氏(Amazon シニアプリンシパル・ソフトウェア開発エンジニア)、Christopher Lee氏(Apple Connectivity Standards Alliance理事)、Tobin Richardson氏(Connectivity Standards Alliance プレジデント&CEO)、Musa Unmehopa氏(Connectivity Standards Alliance 取締役会議長)、Matt Van Der Staay氏(Google プラットフォームエンジニアリング担当シニアディレクター)


2.Matter/Aliroの概要とスマートホームのグローバルトレンド


続いて、アライアンス日本支部代表/X-HEMISTRY CEOの新貝氏が、MatterやAliroについて解説がありました。

(Matter/Aliroについて解説する新貝氏)

AI活用で劇的に進化する『スマートホーム2.0』

(新貝氏基調講演資料より)


新貝氏率いるX-HEMISTRYでは、設定の複雑さを解消し、誰もが安心して使える環境を『スマートホーム2.0』と定義し、「普及率が50%に迫るアメリカに対し、日本はまだ10%~15%程度ではあるものの、Matter対応製品の増加により、普及段階に向けた準備が整ってきた」とみています。


(新貝氏基調講演資料より)


今後は「AIの活用により、自然な会話での操作やパーソナライズ化が進み、スマートホームの劇的進化をもたらす」と予測しています。十数年にわたり、CESやIFAなどのグローバルの最先端を見続けている新貝氏は、「世界でスマートホームを牽引するSAMSUNGやLGがここ数年『AI Home』と掲げ、スマートホームの世界でもAIの浸透が当たり前になってきている」と語りました。


従来は、プログラミングを組むように、自分で設定して、連携させなければならなかったのが、「AIの搭載により、パーソナライズ化されたり、自然な会話で設定や操作ができる世界が実現される(新貝氏)」ようになり、誰もが使いやすくなっていく未来が近いと予測しています。


Matterが家とつながる目印に

これまでメーカーは、AmazonやGoogleなど各プラットフォームごと、また、様々な通信規格のうちどれに適合させるかの判断が必要で、大きな開発リソースや費用を割く必要がありましたが、Matterに対応することで、「つながる部分はMatterに任せることで省力化でき、その先のユーザー体験で勝負できるようになり、メーカーにとってもユーザーにとってもよい形になる」と新貝氏は説明します。


(新貝氏基調講演資料より)


ユーザーも対応製品の選択に苦労していましたが、Matterはこの課題を解決し、誰もが当たり前に知っているWi-FiやBluetoothのように「つながる目印」となります。


(新貝氏基調講演資料より)


Matterの特徴は4つの柱である「 シンプル」、「相互運用性」、「安定性」、「セキュリティ」です。規格として標準化されているので、メーカーも特に「相互運用性」や「セキュリティ」の開発を省力化できるようになります。


ユーザーにとっては、 QRコードでの簡単設定で「シンプル」に、マルチアドミン機能で「どのコントローラを使っていてもつながる」ようになります。家の中のローカル回線での接続のため、高速レスポンスで安定感もあります。


Matterはバージョンが上がるたびにサポート領域が拡大しています。Matter1.0では基本的なスマートホーム機器、1.2で家電サポート開始、1.3で家電サポート範囲拡大とEVチャージャー・エネルギーマネジメント対応、1.4でエネルギーマネジメント対象拡大とホームルーター標準化が開始され、最新の1.5では待望の防犯カメラやビデオドアベルとエネルギーマネジメント機能の強化がなされました。


単純にデバイスや家電などの製品だけでなく、エネルギーマネジメントなどの領域もMatterはサポートしており、「欧米の一部の地域では30分ごとに需給バランスによって電気料金が変動する仕組みが導入されており、日本でもそのような市場連動型プランが普及していく可能性がある」と新貝氏は予測しています。


日本国内でのMatter対応製品増加への期待

(新貝氏基調講演資料より)


日本支部の代表でもある新貝氏は、「約2年間で、外資系企業も含め約80社が日本支部に参画し、隔月ペースでFace to Faceで情報交換勉強会を行ったり、JEITA(電子情報技術産業協会)とも連携しCEATECでブース出展をしたり基調講演を行っている」と説明しました。


このスライドは、アライアンス加盟企業のうち、X-HEMISTRYの独自調査で日本企業だけに絞ったスライドですが、スマートホームメーカーだけでなく、大手家電メーカーや大手住宅設備メーカーなども名を連ねています。特に「Participant」というメンバーシップランクは、仕様策定に参画できる権利を持っており、日本からもこれだけ多くの企業がそこに名を連ねているため、ただ単に「海外の規格が日本に黒船として上陸してきた」という性質のものではないことが明らかで、日本企業が中心に、日本市場にフィットしたMatterの普及を目指すことができるのがわかります。


Tobin氏の講演でも、日本支部に対する期待が寄せられましたが、日本でもデバイスやガジェットの世界だけでなく、家電や住宅設備も含む、家全体がMatterでシームレスにつながる世の中になっていくのがイメージできるかと思います。


施設管理を支え、幅広い物件に適用するProHome &Building

2024年7月に取り組みが公表された「ProHome&Building」は、プロ施工を前提とした住宅向けのスマートホームの導入プロセスを標準化しており、その先は住宅に留まらずオフィスや商業施設などを視野にいれたIoT導入の標準化に取り組んでいきます。


(新貝氏基調講演資料より)


例えば、電気やインターネットが開通していない段階でのスマートデバイス施工や動作検証などを加味しており、建物の建築過程を考慮したプロセスの課題解決が期待されます。アライアンスには、不動産大手である三菱地所が参画しているため、この領域の展開も期待したいところです。


カギの常識を変える期待の新規格「Aliro(アリロ)」

(新貝氏基調講演資料より)


2月に1.0の仕様が公開されたばかりのスマートキーの標準規格「Aliro」は、「メーカー独自のアプリを介さず、スマホOS標準のウォレットでデジタルキーを管理でき、異なるOS間(iPhoneとAndroidなど)での鍵の共有も可能である」と新貝氏から説明がされました。もちろん、Matter同様、セキュリティもしっかり考えられた規格になっているとのこと。


スマートロックは従来、アプリでの解錠、NFCでのタッチ解錠、キーパッドや顔認証、またハンズフリーでの解錠方法がありましたが、これらの機能をスマートフォンのウォレット機能にデジタルキーを組み込む形で標準化されています。これは、ユーザーにとっては非常に利便性が高まることが期待されます。


(新貝氏基調講演資料より)


技術的にはNFCに加え、距離と方向をセンチ単位で測定できる「UWB(超広帯域無線)」が採用されており、これにより「家の外側からの接近時のみ解錠する機能を実現してくれる(新貝氏)」とのこと。


従来のBluetooth通信やスマートフォンの位置情報を利用した解施錠に比べ、より精度の高い接近判定が可能になり、意図しない解錠を防ぐことが可能になります。UWBはiPhoneにも搭載されておりApple AirTagや、今後車のハンズフリー解錠の仕組みしても普及していくことが予想されているので、自宅の鍵もそうなる、と考えるとイメージしやすいかと思います。


(新貝氏基調講演資料より)


さらに新貝氏は「住宅だけではなく、オフィスやホテル、学校など多くの施設で適用できるように設計されているのも特徴で、スマートフォンを持ってさえいれば、自宅でもオフィスでもそのまま使えるようになるし、時限キーも発行できるので、異なるOSのデバイスでも、オフィスに招かれたときには指定された日時のみ有効なデジタルキーで入館できるようになる」と補足しました。非常に拡張性のある規格であることがわかります。


(新貝氏基調講演資料より)


「Matterは「家にデバイスをつなぐための仕組み」、Aliroは「デジタルキーを標準化する仕組み」として、互いに補完し共存する関係です。これらが普及した先には、スマートフォンが家とつながり、メーカー問わずシームレスにストレスなく操作や管理ができる暮らしが待っています。」と新貝氏は締めくくりました。



前編では、アライアンスのプレジデント兼CEOのTobin氏の基調講演と、日本支部代表の新貝氏の基調講演の内容をお届けしました。後半は、パネルディスカッションやイベント会場で行われたMatterの体験展示などについてご紹介します。



Connectivity Standards Alliance 団体情報

1. Connectivity Standards Alliance

Connectivity Standards Allianceは、IoTの基盤と未来の構築を目指すアライアンスで、2002年に設立されました。アライアンスのメンバーはグローバル企業で構成されています。私たちの暮らし、働き方や余暇の過ごし方を大きく変革させる製品開発のため、アライアンスは普遍的でかつオープンな標準を作成し、進化させる努力を重ねています。

メンバー企業の深く多様な専門知識、強固な認証プログラム、オープンなIoTソリューションの提供により、アライアンスは、より直感的で想像力豊かかつ便利な世界の実現に向けた活動をリードしています。


アライアンスの取締役会は以下の役員で構成されています。(アルファベット順)

Allegion、Amazon、Apple、ASSA ABLOY、Comcast、Espressif、Eve by ABB、Fortune Brands、Google、Haier、Huawei、IKEA、Infineon Technologies AG、The Kroger Co.、LEEDARSON、Legrand、LG Electronics、Lutron Electronics、Midea、Nordic Semiconductor、NXP Semiconductors、OPPO、Resideo Technologies、Samsung Electronics、Schneider Electric、Siemens、Signify(Philips HueおよびWiZ)、Silicon Labs、Somfy、STMicroelectronics、Tuya、Verizon、Wulian


そのほかアライアンスの詳細については、以下のWEBサイトをご確認ください。

https://csa-iot.org/


2.Connectivity Standards Alliance日本支部

日本支部は、国内のIoT市場に関心を持つ有志企業によって構成され、グローバルな協力関係を深めながら、日本特有のニーズに対応した技術や解決策を提供しています。アライアンスのマーケティングチームとの連携により、日本国内での展示会出展や講演を積極的に開催し、MatterやAliroに関する認知度向上を目指しています。

また、Connectivity Standards Allianceが開発するオープンなIoT標準規格を支援し、適切なアライアンスワーキンググループに対して、日本市場向けの技術要件を提案しています。これにより、より多くの日本企業がConnectivity Standards Allianceの活動に参加し、IoT標準の普及を加速させています。

CSA日本支部は、メンバー間での知識や情報の共有を促進し、協力し合いながら、IoT市場の発展に貢献しています。私たちは、IoTを支える標準規格が日本市場にもたらす価値を最大化し、より豊かなデジタル社会の実現に向けて邁進しています。


リーダーシップ

代表:新貝 文将( X-HEMISTRY株式会社 代表取締役CEO )

副代表:中村 成貴(パナソニック株式会社 事業開発総括)

事務局長:三島 デンバー(アリオン株式会社 品質ソリューション事業部 規格認証部 部長)


【活動内容】

  • MatterとAliroを中心に日本におけるアライアンス活動を推進、認知度を向上
  • アライアンスのマーケティングチームと連携して、日本での各種イベントや講演を積極的に推進
  • グローバルでオープンなIoT標準の開発を支援するため、適切なアライアンスワーキンググループに日本市場に適した技術要件を提案
  • アライアンスへの日本企業の参加を誘致
  • アライアンスの日本メンバー企業間での知識や情報の共有


今後もLIVING TECH協会とConnectivity Standards Alliance日本支部は連携して、日本市場におけるアライアンス各規格の認知向上ならびにアライアンスにおける日本のプレゼンス向上に努めてまいります。


横浜メディアデー スポンサー企業

  • Amazon.com
  • NECプラットフォームズ株式会社
  • Nordic Semiconductor ASA


参考リンク(メディアデーご参加のメディア様記事)








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