「なにそれ?要る?」と言われたジェル状ハンドクリーム「セラミュ」がデビュー2年目に前年比4倍以上売れた意外な理由
ハンドケアアイテムとしては、かなりニッチなジェリー状のハンドクリーム「セラミュ ハンドジェリー」は、発売2年目の秋冬のシーズンに前年比422%※1と伸長し、累計販売個数も12万個※2を突破しました。2年目に大きく伸長した特別な理由を企画を担当したマーケティング部 リテールグループの羽柴愛子とリテール事業部 営業部の添田龍司に聞いてみます。
※1 2023年10月~2024年4月と2024年10月~2025年3月の比較 ※2 2025年8月末現在 122,820個

―羽柴さん、「セラミュ ハンドジェリー」を作ることになったきっかけは?
羽柴―やっぱり、コロナ禍ですね。季節を問わず手洗いや手指消毒の回数が圧倒的に増えたことで、手肌の乾燥や手荒れが気になり、これまでよりもハンドクリームを使用する人や使用回数が増えたことがきっかけです。ただ、それまで乾燥する秋冬にしか使っていなかった人が夏場にハンドクリームを使う、またこれまでよりもハンドクリームの使用回数が増えるといった使用シーンやシチュエーションが変わると、今までにはなかった不満が見えてきました。私もそうなんですが、ハンドクリームのべたつきは夏場には特に不快なものですし、加えて手指のべたつきだけでなく、その後に触れたものを汚してしまうことも不快なことだと思っていました。実際に私の周囲の人からも、「スマホが汚れるから、ハンドクリームを使いたくない」という声や、「本当は昼間に手洗いをする度に使いたいんだけど、PCのキーボードが汚れるので、寝る前にしか使えない」という声が上がっていました。社内には、手のひらや指先にはつかないように手の甲の部分だけにハンドクリームをつけるという、少し変わった使い方をする人まで見かけるほどで、本当にハンドケアをしたいと思っているのに使うことができない状況は、とても残念なことだと思いました。

―ハンドケアと言うと「クリーム」が一般的ですが、ジェル状にしようとしたのはなぜですか?
羽柴―当社のこれまでの研究でもわかっていますが、水分と油分を乳化させた乳液やクリームなどの乳化物は、肌にのせると先に油分の方が角層に浸透することがわかっています。人の身体は親水性よりも親油性の方が高いからなんですね。油分が先に浸透すると水分が角層に浸透することをブロックしてしまうのです。なので、お顔のスキンケアは化粧水、美容液、乳液、クリームといった油分の比率が少ない順にステップを踏んでケアすることが一般的です。手元の肌も本質的にケアしようとするとお顔と同じようにステップを踏んだ方がいいのですが、なかなかそういったケアは面倒で敬遠されがちです。そこで、イメージしたのは、韓国コスメにあるようなジェル状の美容液でした。油分はほとんど含んでおらず、潤いのみを補充するような透明感のあるジェルタイプの美容液をハンドケアに使用したらいいのではないか?と思いつきました。

―ジェル状のハンドケアアイテムはこれまでに当社では開発したことがないものですが、スムーズに開発することはできましたか?
羽柴―化粧品業界にあって、ハンドクリームってあまりにもずっと使われてきたものなので、「油分は要らない、潤いだけを補給する」という概念を共有することが難しかったですね。研究開発の社員にも「油分のないハンドクリームって何のために使うの?」「それ、必要?」と聞かれることもありました。個人の思い付きでなく世の中にもニーズがあるということを調査でしっかり把握し、そのニーズの共有などをして社内の理解を得られるように説得することに時間をかけました。

―大変でしたね。開発部門だけでなく、営業現場の理解も得る必要があると思いますが、添田さんは最初に企画を聞いた時に売れると思いましたか?
添田―私は、ドラッグストア本部に対しての営業をしていますが、今、ドラッグストアに商品を置いてもらうことは本当に難しいです。特にハンドクリームのような老若男女が日々普通に使うものであるほど、何十年も続くメジャーなブランドがひしめき合っています。そういった中で、実績もなくかなりニッチな商品を店頭に並べてもらうのはハードルが高いということが容易に想像できて少し心配でした。ただ、企画内容を聞いただけの時よりも製品のデザインの実物を見たときに、これは面白いのではないかと直感しました。

―その直感とは?
添田―ぱっと見るとまさかハンドケアアイテムには見えなかったことです。一般的なハンドケアアイテムはほとんどが不透明なチューブに入っていたり、ジャータイプの丸い容器に入っていることが多いですが、こんな透明なチューブに入っている鮮やかな黄色のジェルタイプのハンドケアって見たことないですよね?それにアテンションシールに書かれているコピーは「すぐにスマホ触れる」って。普通は「手肌しっとり」とか「サラサラでべたつかない」といった肌への効果効能をアピールすることが一般的なので、このデザインとコピーなら、「触ってみたい」とか、「本当にスマホが汚れないのか試してみたい」と思う人が多いのではないか?と思いました。また、実際触ってみると、手がべたつかないことは当然のこととして、それ以上に今までにない、手肌の角層に潤いがすーっと浸透していくことがわかりました。それに、ハンドクリームの多くが、女性らしい香りがついているものが多いなか、私自身この香りは「男性にはちょっと…」と躊躇する経験がありましたが、「セラミュ」はこれまでのハンドクリームにはなかった珍しいレモンの香りです。男性や若年層でも好まれるのではないかと思えました。ドラッグストア流通では人気かつ認知度も高い成分の「ビタミンC 」※2と「CICA」※3が配合されているのも分かりやすくていいなと思いました。それで、この製品が持つ今までになかった新しさを表現するべく、透明感を活かせる店頭什器を作ろうということになりました。
※2 ビタミンC誘導体(アスコルビルリン酸Na/保湿剤) ※3 CICA(ツボクサエキス/保湿剤)

羽柴―実はそこは、本当にねらっていたところなんです。チューブの透明感にはかなりこだわりました。材質的にはチューブの柔軟性や耐久性などからPE(ポリエチレン)を使用しているのですが、当社がこれまでに採用していたグレードのものだと完全には透明でなく少し曇っているのです。「要らないものは入れない、必要なものだけ入れる」という考えをベースに開発しているものなので、そのコンセプトを姿で伝えるためにもチューブは可能な限り透明なものにしたいと考えていました。工場での生産適性などをクリアして、やっと納得できる透明感の高いチューブを採用することができました。余談ですが、この中身の黄色も着色しているものではなく、「オウレン」という植物成分の色なんです。それほどに要らないものは入れないという考えでした。
―2023年の9月デビューですが、発売後、お客様の反応はどうでしたか?
添田―ハンドクリームのカテゴリー自体が激戦なので、悪くはないという滑り出しでした。ただ、とても売れているという手応えまでは感じられなかったのが1年目ですね。ドラッグストアの流通は、新しいものが望まれる一方で、そのカテゴリーらしくない見た目のものは敬遠されるという傾向も併せ持つので、ジェル状のアイテムは「冬の製品らしく見えない」とか「ハンドクリームらしくない」という声もあり、ドラッグストアにならべていただくにも苦戦しました。ただ、リピーターが多く、製品の良さを実感してくれているお客様がいらっしゃることは把握できていました。また、ハンドケアカテゴリーは、冬場から春を迎えるとドラッグストアの売り場が縮小されるのですが、「セラミュ」は発売直後の秋冬(2023年10月~2024年3月)よりも、その後の春夏(2024年4月~9月)の方が売り上げを伸ばしていたことも、この製品は今までと何か違うという気配を感じていました。

―1年目の秋冬(2023年10月~2024年3月)に比べて、翌年の秋冬(2024年10月~2025年3月)に、驚くほど売り上げを伸ばしていますが、理由は何ですか?
添田―あるドラッグストアのチェーンからお話をいただいたのですが、ドラッグストアの店頭は季節に応じて少し季節を先取りするくらいのタイミングで店頭の商品を変えていくのですが、近年は夏の長さが大きく影響するようになってきたそうです。これまでは、9月~10月くらいには、これまで店頭にたくさん並べていた日焼止めなどのアイテムに替えて、秋冬の乾燥に備えたハンドクリームなどのアイテムを並べることが多かったのですが、近年はその頃にハンドクリームを並べても、30度を超える日も多く、テスターを触ってももらえないとのこと。汗をかいた手に重めのテクスチャーのハンドクリームを塗ることには、多くの人が敬遠したのだと思います。「セラミュ」の清涼感のあるデザインであれば、興味を持ってもらえるのではないかとお話をいただいたのです。そこで店頭にたくさん並べてお客様に届けることができました。その結果、これまでの私自身が担当した他の製品と比べても、本当に什器から売れているという実感があります。

―透明感の高い容器と什器が役に立ったのですね。
添田―そうですね。これまでの什器の作り方だと、どんなにチューブを透明にしても棚の中に入ると暗く見えてしまいます。もちろん什器のデザインの工夫もしましたが、店頭で明るい場所においていただくことができたので、より注目されたと思います。また、夏が長引く気候変動に対して、それを逆手にとることでこんなお客様の行動の変化があり、それが製品を育てていくといった経験は初めてで、正直ワクワクしました。これまでの常識にとらわれずに、変わっていく環境に対して提案をしていくことを大事にしていきたいと考えています。ドラッグストアさんと連携させていただくことの重要性も再認識しました。加えて、実はこの黄色いセラミュの状況を受けて、ドラッグストアさんからうれしいことに追加の要望をいただきました。

羽柴―9月10日から「セラミュ ハンドジェリー」の第2弾として、ブルーのハンドジェリーを発売することになりました。新製品は、3種のヒアルロン酸※4とグルタチオン(保湿剤)を配合した無香料タイプです。ドラッグストアさんから新製品の開発のご要望をいただけるなんて、企画者としては本当にうれしいことです。香り付きの商品がほとんどであるなか、無香料のハンドケアアイテムとして振り切ったものを開発できたのも、ドラッグストアさんと目標を共有できたからだなと思っています。香りの苦手な人や仕事がら香りがあるものを使えない人など、ニッチでありながらもニーズを捉えられた商品です。ヒアルロン酸は以前から根強い人気の成分ですが、それだけではなく、保湿剤のグルタチオンも配合していますので、季節を問わず快適にハンドケアできます。冬場の製品としては似つかわしくない、さわやかな透明ブルーですが、視覚的にも潤いを与えてみずみずしい手肌にしてくれそうだなとイメージしてもらえるといいなと思っています。いい意味で店頭で浮いている商品になってほしいですね。

※4 ヒアルロン酸Na、ヒアルロン酸クロスポリマーNa、加水分解ヒアルロン酸(保湿剤)

―ありがとうございました。今後もニッチでニーズのある製品の企画をお願いします。
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