家電を再生して次の誰かへ届ける~サーキュラーエコノミー型のモノづくりに懸けるパナソニックの思い


まだ使えるのに廃棄される家電を、私たちの手で救い出したい――。1918年の創業以来、100年以上にわたり家電を作り続けてきたパナソニックは、サーキュラーエコノミーの実現に向けた事業創出の一環として、洗濯機や冷蔵庫、テレビなど、13カテゴリー(※1)を対象としたリファービッシュ事業「Panasonic Factory Refresh」を展開している。2024年4月に始めたこの事業では、さまざまな理由でパナソニックに戻ってきた家電(※2)を修理・整備し、もう一度使える状態に再生して「パナソニック検査済み再生品(保証付)」としてお客様にお届けしている。13カテゴリーのうち7カテゴリーの製品を再生し、モノづくりの中核を担うのが、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社の宇都宮工場だ。新たな事業モデルの確立に向け、モノづくりの現場で奮闘する社員たちと、生まれ変わった工場の姿を追った。


※1:宇都宮工場は7カテゴリー(洗濯機、テレビ、ブルーレイディスクレコーダー、ポータブルテレビ、一眼カメラ、食器洗い乾燥機、次亜塩素酸 空間除菌脱臭機)を担当。合計で年間1万台の再生能力を持つ。その他の6カテゴリー(ドライヤー、冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ、LED照明器具、掃除機)はパナソニック株式会社 奈良工場ほかで再生している。

※2:初期不良品や店頭展示品、家電のサブスクリプションサービスで利用された後に戻ってきた製品などが対象。

リファービッシュ工程を一般公開、かつてないショーケースに



栃木県・宇都宮市にある宇都宮工場は、映像・音響・通信関連機器の製造・サービスを中心に、パナソニックの家電の基幹工場として、長年にわたり操業を続けてきた。数々の製品を手掛け、培われた高度なモノづくりの技術。その粋(すい)を集め、新たな事業の柱としてリファービッシュ事業は展開されている。この事業で提供されるのは、各製品の開発・製造部門の監修の下、独自の厳格な品質基準をクリアした再生品のみだ。オンラインでの販売のほか、サブスクリプションサービス(※3)を通じても提供されている。


※3:モノを売るだけでなく、サービスとして提供することで、引っ越しの際に生じる家電廃棄の抑制につなげることを目的としている。


事業開始から1年がたち、品質への高い評価や手頃な価格などを背景に(※4)徐々に需要が拡大する中、2025年5月にリファービッシュ工程(以下、再生工程)の拡張整備を完了。サーキュラーエコノミー型のモノづくりのショーケースとして一般公開した。今回の整備では、これまで工場内に分散していた再生工程を1カ所に集約し、カテゴリー別に最適化したレイアウトに刷新。また、空間デザインを大幅に見直し、従来の工場イメージを覆す新しいモノづくりの空間を創り上げた。


※4:購入者満足度調査で94%が満足と回答。「中古品と感じさせない仕上がり」「価格やSDGsの面から見ても良い買い物ができた」「品ぞろえを増やしてほしい」などの高評価を得て、新たな顧客価値の創造にも貢献している(2025年3月当社調べ)。

宇都宮工場ならではのモノづくりと品質の徹底


宇都宮工場のリファービッシュ事業を立ち上げからリードしたのが、工場長の竹田 恭介(たけだ きょうすけ)だ。


パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社

宇都宮工場 工場長:竹田 恭介(たけだ きょうすけ)


竹田:宇都宮工場は、1967年の操業以来半世紀にわたり、日本国内向けテレビの生産拠点として、パナソニックの家電事業の拡大に貢献してきました。しかし、海外への生産シフトが徐々に進む中、2021年にテレビの生産を終了。この変化を契機に「私たちが提供できる価値とは何か」を問い直し、進むべき道を模索しました。


出口の見えない状況で、パナソニックの家電のリサイクル工場を訪れた際、廃棄工程に山積みされた「まだ使える家電」を目の当たりにしました。もったいない、この現実を変えたい――そう考えた私は、これらの家電を救い出して再生するリファービッシュ事業(以下、再生事業)に踏み出す決意を固めたのです。


宇都宮工場の進むべき道を見つけた竹田。この日を境に全てが大きく動き出す。


竹田:パナソニックグループの長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」の下、私たちが進むべき道を従業員に繰り返し共有したことで、一人ひとりの意識が徐々に変わっていきました。さらにもう一つ、「お客様を笑顔にする」という方針を打ち出したことが、従来にない顧客価値を生み出していきました。


モノづくりの技術にも徹底してこだわった竹田。各カテゴリーの製造を担う工場と連携し、同一の品質基準を再生工程に適用しているという。


竹田:例えば、空間除菌脱臭機「ジアイーノ」には、転倒検知センサーが作動すると電源を自動で遮断する安全回路が組み込まれています。この回路が正常に動作するよう、量産時のテスト手順を忠実に実行しています。


有害物質の混入防止も一例です。樹脂部品・金属部品はサンプリングによって有害物質の含有を確認しています。また、クリーニングに使用する洗浄剤も同様に確認し、部材は新品同等の検査を徹底。テレビの量産で培った品質管理のノウハウを生かし、安全を確保しています。


テレビの再生では、制御基板の集積回路を部品単位で交換しています。基板を丸ごと交換するのが一般的ですが、私たちは約1,000点に及ぶ部品の中から不具合のある部品を特定し、その部品だけを交換する技術を確立しました。こうした高度な技術力こそが、宇都宮工場の強みです。


制御基板の集積回路をはじめ、テレビの部品は約1,000点に及ぶ

グローバル展開を視野に、工場と社会の未来を開く


竹田は宇都宮工場に赴任して12年になる。有機ELテレビの生産で一時的に活気が戻ったものの、長期的には事業規模の縮小が続き、右肩下がりの流れを変えることはできなかった。


竹田:生産量の減少が工場の空気を重くするとともに、規模縮小に伴う投資抑制が新たな挑戦を阻み、従業員はモノづくりへの誇りを失いかけていました。私が工場長に着任した際、最も深刻だったのは「危機感はあるのに具体的な行動に移せない」組織風土でした。そこで就任直後、「変化しなければ、この工場は100%消滅する。変化を恐れてはならない。変化しないことを恐れよう」と強く呼び掛けました。巧拙を問わず、まず行動しよう。たとえ失敗しても再び挑戦すればいい──そんなトライ&エラーの精神を徹底し、風土を変えていったのです。


再生工程の再構築や従業員がくつろげるスペースの設置といったアイデアは、全て現場から生まれたものです。一人ひとりが変わることを恐れず、自発的に動いて変化を起こせるようになった――これこそが、工場が生まれ変わった証しです。


パナソニック初の再生事業は社内外で注目を集め、従業員は再びモノづくりへの誇りを取り戻した。工場全体に明るさと活気が戻り、一人ひとりが自ら現場を改革する好循環が生まれつつある。


竹田:CO₂の排出削減は世界共通の喫緊の課題です。連日の猛暑が地球環境の変化を実感させる今、私たちは、子どもたちが安心して暮らせる未来を築く責任の重さを痛感しています。そのような状況でパナソニックが再生事業を立ち上げた意義は、極めて大きいと言えるでしょう。


再生事業を軌道に乗せた竹田。その目線は、既に世界へ向いている。


竹田:宇都宮工場は、あくまでも日本国内向けの再生拠点です。例えば、アジアで使用された家電を日本に持ち帰って再生・販売するスキームは、物流コストや現地の事情を勘案すると、決して最適とは言えません。従って、世界各国・地域で再生事業を立ち上げ、現地で家電が循環する事業モデルを確立する――これがパナソニックの再生事業の未来ビジョンです。世界中でその土地ならではのスキームを構築し、世界規模で事業を拡大していきます。


現在は事業規模が小さく、競争優位を十分に確立しているとは言えません。しかし、再生事業の認知度を高め、長く安心して使えるパナソニックのブランドイメージを醸成するとともに、新品だけでなく再生品も提供し、お客様の「より良いくらし」を支える選択肢を増やすことで、必ず競争優位は確立できると考えています。そのためには、再生工程を一般公開(※5)し、実際に見学いただくことが何より重要です。「こんなふうに製品がよみがえるのか」「環境に配慮したモノづくりを実践している」といった驚きや共感は、パナソニックのファンを増やし、結果として事業の競争力強化につながる──私はそう確信しています。


※5:2025年6月17日から、一般のお客様を対象に見学コースを設けている(実施は毎週火・水・木曜日。コース案内はこちら/完全予約制)。

「一品一様」に向き合い、環境貢献と経済性を両立


竹田の下で製造の現場を担い、高い生産性と安定した品質を両立する体制づくりに注力しているのが、山崎 勝美(やまざき かつみ)だ。


パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社

宇都宮工場 製造総括:山崎 勝美(やまざき かつみ)


山崎:気候変動や資源枯渇の問題は、日増しに深刻化しています。これらを食い止めるには、「使う→捨てる」を前提としない循環型社会の構築が不可欠です。パナソニックの再生事業はその一手になると確信しています。サーキュラーエコノミーを実現するために、環境貢献と経済性の両立を追求し、1台でも多くの廃棄を抑制するとともに、1人でも多くのお客様に再生品の価値を実感いただけるよう、全力を注いでいます。


事業の立ち上げ当初は小さく始めました。例えば、梱包材にはテレビで実績のあるリユース箱を採用。また、通常は廃棄される部品にも目を向け、再利用の可能性を追究しました。こうした“もったいない”の精神に基づく意識と行動こそが、私たちの強みです。


取り扱う製品は市場で一度使用された中古品のため、製品ごとに異なる管理が必要となる。


山崎:量産品は、同一工程を繰り返すほど製造時間のばらつきを抑えられますが、再生品はそれぞれ劣化度合いが異なるため、時間が安定しにくいという課題があります。そこで私たちは、作業フローの標準化や検査基準の最適化を継続的に推進。工数のばらつきを最小限に抑えるノウハウを蓄積しながら、高位平準化を追求しました。一人ひとりが各製品の状態を的確に見極める「一品一様」の意識と技術を磨き続けた結果、生産性が徐々に向上し、その成果が確実に数値に表れるようになりました。


製品は「外観」「内観」「使用時間・回数」「製造年数」「臭気」の5項目でランク判定を行っている


心を込めて再生した製品を手頃な価格でお届けし、お客様に喜んでいただくことが最大のやりがいだという山崎。


山崎:お客様からいただく高評価や温かい言葉は、何よりの励みです。「この仕事を続けてよかった」と実感しています。もう一つのやりがいは、環境への貢献です。製品の廃棄を抑え、限りある資源を有効活用して地球環境への負荷を軽減する――その役割を日々果たせることに誇りを感じています。


私たちは再生事業を通じ、環境問題をはじめ被災地支援や障がい者雇用など、さまざまな社会課題の解決に向け、多くの方々と対話を重ねてきました。この事業の最大の特徴は、「人とのつながり」を大切にし、その輪を着実に広げながら拡大している点にあります。再生事業は共感の輪が広がるほど発展し、近い将来、より大きな社会的インパクトを生むはずです。今後もサーキュラーエコノミー型のモノづくりに一層磨きを掛け、パナソニックの再生事業を社会にとって「なくてはならない存在」にしていきます。

お客様に笑顔を、従業員に誇りを――新しい工場のカタチ


竹田の「お客様を笑顔にする」という方針を受け、工場全体のデザインを一から練り上げたのが、上村 麻衣子(うえむら まいこ)だ。


パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社

宇都宮工場 価値創造係:上村 麻衣子(うえむら まいこ:右)


上村:空間デザインを大幅に見直した狙いは二つあります。一つは、工場見学に訪れたお客様に「来てよかった」と感じていただける魅力的な空間を創出し、パナソニックのファンを一人でも多く増やすこと。もう一つは、従業員が快適に働き、自らの職場に誇りを持てる環境を整えることです。


払拭したかったのは「中古品=古い、汚い」という固定観念です。そこでエントランスには、地元・鹿沼産の木材で組んだトンネルを設置。木のぬくもりと清潔感が来訪者を迎え入れ、足を踏み入れた瞬間から中古品へのネガティブなイメージを自然と覆す空間としました。一方、再生工程エリアは、来訪者の視線や動線を綿密に計算し、展示パネルを機能的に配置。細部までデザインにこだわり、新たな工場体験を提供しています。来訪者から「工場のイメージが変わった」と声をいただくたびに、頑張ってよかったと胸が熱くなります。


地元・鹿沼産の木材(杉の木)で組んだ、エントランスのトンネル


上村:再生事業を通じて安定した収益を確保しつつ、お客様に高い価値を提供し続けることが、子どもたちの幸せな未来につながると信じています。単なる中古品の再生ではなく、工場自らが社会の声に真摯に耳を傾け、お客様と対話を重ねながら製品やプロセスを進化させる――この柔軟かつ主体的な姿勢こそが、事業を持続可能にする最大の原動力です。


一方、工場自身が情報発信力を高め、積極的に広報活動を行うことも不可欠です。現在は、工場見学を通じ、パナソニックの高度な技術力や品質管理のノウハウを体感いただくとともに、創業者・松下幸之助のモノづくりへの思いを紹介し、ブランドへの理解と信頼を深めています。今後の目標は「再生品を選ぶくらしはかっこいい」という価値観を社会に広めること。やりがいと使命感を胸に、私たちは今、新たな道を切り開いています。立ち止まっている暇はありません。


家電の梱包材や光学シートなどの廃棄物を備品に再利用。細部までこだわった空間デザインが施されている


上村:振り返れば、かつての私は「新しいことは苦手」と思い込み、慎重になり過ぎていました。しかし今回、プロジェクトの一翼を担う中で、社会に貢献している確かな手応えと、事業を持続させる使命感を得ることができました。今、一歩を踏み出すことに迷っている皆さんには、ぜひ「失敗を恐れず、積極的に挑戦してほしい」と伝えたいですね。私自身も変革の担い手として成長を続け、次世代の憧れとなれるよう、一層努力していきます。


パナソニックは独自の再生技術で、まだ使えるのに廃棄される家電に“第二の命”を吹き込む。これは、幸之助が理念の一つに掲げる「道は無限にある」を体現した、新しい工場のカタチだ。家電を長く安心して使い続けていただくことで、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立に貢献し、お客様や社会の「幸せの、チカラに。」なっていく。

Related Videos

×

Panasonic Factory Refresh 13カテゴリ拡充篇【パナソニック公式】


×

PEAC宇都宮工場 KWNキッズレポート


◆パナソニックグループのオウンドコミュニケーションメディア Panasonic Stories

自らの言葉で思いを伝える/『ひと』を通じてパナソニックグループの姿を届ける。

グループの考え方や取り組み、挑戦をタイムリーかつ分かりやすくお伝えします。

※今回の取り組みはこちらでも紹介しています

URL https://news.panasonic.com/jp/stories/17668





行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ

5日付の紙面はこちら

アクセスランキング 2:21集計

サイエンスフェス2025in大分

大分県の天気

今日 9月6日(

晴れ晴れ
気温 34℃ 25℃
時間 0-6 6-12 12-18 18-24
降水 0% 0% 10% 10%
警報
発表なし
注意報
発表なし
気象状況

今日 9月6日(

晴れ晴れ
気温 33℃ 24℃
時間 0-6 6-12 12-18 18-24
降水 0% 0% 10% 10%
警報
発表なし
注意報
発表なし
気象状況

今日 9月6日(

晴れ晴れ
気温 33℃ 24℃
時間 0-6 6-12 12-18 18-24
降水 0% 0% 10% 10%
警報
発表なし
注意報
発表なし
気象状況

今日 9月6日(

晴れ晴れ
気温 37℃ 23℃
時間 0-6 6-12 12-18 18-24
降水 0% 0% 10% 10%
警報
発表なし
注意報
発表なし
気象状況
PM2.5情報
大分県の測定データ大分市の測定データ

PR