「マジか…」大反対から始まった京都のホテル内スナック。外国人にオアシスを歌わせる"Karaoke Bar"が、フロントの接客まで変えた

株式会社アベストコーポレーション(代表取締役:松山 みさお)が運営する京都・東山に位置するホテルSUI京都清水は、2025年4月12日のリブランディングと同時に、従業員用の倉庫を改装した小さなスナック「YOASOBI」を開業しました。当初は社内に強い反対の声があった一方、約1年が経過した現在、訪日外国人を中心とした宿泊客が夜ごと集まり、カウンターではオアシスやアニメソングの大合唱が起きる場として運営されています。
「外国人にスナックはウケない」とまで言われたホテル内スナックは、なぜ生まれ、なぜ現場スタッフの接客まで変えていくことになったのか。京都エリアを統括する常務取締役本部長の松山 亜聖 (まつやま あせい)と、この春にホテルSUI京都清水の支配人就任が内定している主任の高橋 祐人 (たかはし ゆうと)に話を聞きました。
「マジか…」始まりは、本部長の大反対でした
ホテルのリブランディング計画と同時に会社が決定した取り組みがありました。「京都のホテルにスナックをつくる」というものです。その話を最初に聞いたとき、松山さんの口から出たのは、たった一言でした。
「いやぁ、もう"マジか"です。それも、いい意味じゃなくて、悪いほうの"マジか…"でした 」

写真左:松山さん 写真右:高橋さん
反対の理由は、いくつもありました。スタッフの勤務時間が後ろにずれることによるシフト調整の難しさ。京都はインバウンドのお客様が大半で、そもそも外国人にスナックが受けるのかという根本的な懸念。海外にスナックという文化自体が存在しないため、お客様に説明しても「お菓子のスナック」と勘違いされてしまうのではないか、という翻訳の問題。
「神戸の系列店なら、本社の経理部やIT部のスタッフが応援に立ってくれることもあるんです。でも京都はホテル部しか社員がいない。最初はね、しっかり反対しました」(松山さん)
主任として、ホテルのオープニングから現場を支えてきた高橋さんも、初耳のときは戸惑いました。
「まず、どこでやるんだろう?って思いました。本当にできるのかな、と」
ホテルスタッフがマスターとしてカウンターに立つ──。そのイメージが、高橋さんはどうしても描けませんでした。
「それ、本当に自分の仕事なのかな、と思いましたね。神戸ならビジネス層が多いから多少受けるのもわかるけど、こっちは客層が違うぞ、と」
さらに、本部が打ち出した方針は、状況を混迷させました。「スナックに舞妓さんを入れる」というものです。
「もう大反対中の大反対。喧嘩寸前でした」(松山さん)
この構想は、早々に断念 されました。舞妓さんの派遣は法律と京都花街の慣習で派遣先が定められており、舞妓さん風のスタッフを立てての営業も不適切と判断されたためです。そのため、本丸の「スナックをやる」というミッションだけが残りました。
ヒントは、二人がよく通っていた近所のバーにありました
頭を抱えた二人ですが、同じ頃 、揃って通っていた一軒のお店がありました。ホテル近くにあるカラオケが歌えるバーです。
「もう日本人がいなくて、外国人ばっかりのお店なんです。みんなで飲んで、一緒に歌う。大合唱になる。それが、めちゃくちゃ面白いんですよ」
松山さんが振り返ります。高橋さんもそのお店の常連でした。
「外国人のお客様って、カラオケ好きな人が本当に多いんです。あの一体感は、京都ならではというか」
スナック開業の悩みを抱えながら、二人は仕事終わりにそのバーで顔を合わせるたび、「あの雰囲気を、ホテルに持ってこられたらな」と話し合っていたといいます。「外国人にカラオケはウケる」──この感触だけは、二人の間に確かにありました。
問題は、お客様への伝え方でした。「スナックがあります」と案内したところで、海外のお客様にはまず通じません。そこで採用されたのが、シンプルな言い換えです。
「『カラオケバーがあります』って伝えています。カラオケは世界共通の言葉ですから」(松山さん)
チェックインのときにこの一言を必ず添える──そう決めて徹底したところ、「あ、カラオケがあるんだ」と顔を輝かせるお客様、「行く、行く!」と即答してくださるお客様が、少しずつ増えていきました。
メニューには京都らしさを込めました 。日本酒、地ビール、漬物、和菓子。さらに、メニュー表には載っていない「隠し玉」も用意します。
「ファイヤーボールというショットです。仕事帰りによく行くバーで、これは盛り上がりそうだなってひらめいたんです」(高橋さん)
カウンターの飾り棚にひっそりと並ぶボトルに気づいたお客様にだけ、提供する。そんな小さな仕掛けが用意されました。
初出勤の夜、「Where are you from?」のあとは沈黙でした
こうして2025年4月、スナック 「YOASOBI」はオープンを迎えました。しかし、現場が落ち着くまでには、もうしばらく時間が必要でした。高橋さんの初出勤の夜、海外のお客様に提供した最初の一杯はハイボールでした。

「マニュアルを見ながらですけど、ちゃんと作れたんです。でも、作るのに必死で、あんまり喋れなかったなって、今思います。その日はカラオケもしませんでした。お酒を出すので精一杯で」
シフトに余裕はなく、原則として一人でカウンターに立つスタイル。それまでお酒を作った経験はゼロ。マスターと聞けば、お酒に詳しい"プロっぽい人"を想像するもの──そんなプレッシャーも、当初の高橋さんを縛っていました。
そしてもう一つ、想像以上に重くのしかかったのが、会話でした。
「最初は、何を喋ればいいんだろう?って、結構悩みました。一杯目のドリンクを注文されたあと、チーンって。その時間が苦痛で」
ホテルのフロント業務とスナックの仕事は、決定的に違います。チェックインで交わす言葉は、ある程度パターンが決まっています。けれどスナックは、自分から話題を作らなければなりません。苦肉の策として高橋さんが選んだ第一声は、「Where are you from?」でした。
オアシスのワンダーウォールが、救ってくれた
そんな手探りの営業が続いていた頃、一組のお客様がカウンター席に座りました。アメリカから家族で旅行に来ていた、お父さんとお母さん、そして小学生くらいの男の子です。会話の流れの中で、ご家族は楽しそうに洋楽を歌い始めました。マイクを回しながら、テーブルが盛り上がっていきます。そこで、こう振られたのです。
「カラオケ歌ってよ」
急なリクエストに高橋さんは少し困りましたが、頭の中で思い出した曲がありました。あの近所のカラオケバーで磨いてきた、洋楽のオハコ──オアシスの「ワンダーウォール」です。
「もう王道、みんな知ってる曲ですから。よく行くバーで鍛えてるので、ウケる・ウケないの曲がわかるんです」
サビが始まると、テーブルから歓声が上がりました。お父さんもお母さんも一緒に歌い、男の子は手拍子をします。歌い終わると、店内に大きな拍手が響きました。

「気持ちよかったですね、それは」
それは、高橋さんの中で何かが切り替わった瞬間でした。マスターはお酒に詳しいプロでなければならない──そんなプレッシャーは、お客様の側からは求められていなかったのです。
「お客様が求めていたのは、一緒に楽しめたらいい、それくらいのことだったんですよね」
カラオケで盛り上がると、その後の会話が一気に弾みます。日本人のお客様も同様でした。大阪から観光に訪れたあるご夫婦とは、留学中のお子さんの話題で盛り上がりました。高橋さん自身も学生時代に留学経験があったのです。
「フロントだけだったら気づけなかった発見が、たくさんあるんです。大人しそうに見えたお客様が実はカラオケが大好きとか、こんなにフレンドリーな方なんだ、とか」
カウンターに並ぶ人気曲も、見えてきました。アニソンなら、エヴァンゲリオンの「残酷な天使のテーゼ」、ドラゴンボールの「CHA-LA HEAD-CHA-LA」、ワンピース。デンモクには日本語の歌詞に英語のフリガナを表示する機能があり、それを見ながら堂々と日本語で歌うお客様も少なくありません。イタリアからのマダムがtukiさんの「晩餐歌」やクイーンを歌った夜もあれば、ご家族連れの小さな男の子がアンパンマンを歌った夜もありました。
「カラオケは、世界を救うんですよ。僕がカラオケ好きなだけかもしれませんけど」
高橋さんは、笑いながらそう言います。
フロントの空気が、明るくなりました
変わったのは、スナックでの高橋さんだけではありませんでした。
「もっとフランクに話せるようになりました。チェックインのときも、エレベーターでお部屋へご案内するときも、自然と会話が弾むようになって。引き出しが増えたんです」
スナックで仲良くなったお客様を翌朝のチェックアウトでお見送りするとき。「楽しかったよ」「また来るよ」と声をかけていただく。送り出すこちらの気持ちにも、自然と熱がこもります。その変化を、本部長として現場を見守る松山さんは、しっかりと見ていました。
「高橋君は、本当に成長したと思います。積極的になったというか、顔つきも、お客様への対応も。お見送りも、最初は"やらされてる感"があったけど、最近は自然とできている。そして、変化は高橋君だけにとどまらず、スナックで輝きを見せるスタッフも出てきました。フロントでお客様と話している声を聞いていても、みんな明るくなったなって思います。もう、テンプレだけの接客じゃなくなってきました」
ホテル「SUI」シリーズが掲げるブランドコンセプトは、「粋(いき・すい)」のおもてなしです。江戸時代から続く、洗練されていながら自然体で、人情と温かさのある美意識。それは、決められた台詞を返すだけでは到底表現しきれないものでもあります。スナック「YOASOBI」で一杯のお酒を介して交わされる、お客様一人ひとりとの一期一会の会話。その経験が、スタッフたちにとって、テンプレートを越えた接客の引き出しを増やす場になっていました。
旅のプランに「スナック」を組み込んでもらえる場所へ
オープンから1年が経ち、スナック「YOASOBI」には訪日外国人を中心に、夜ごと多様な国籍のお客様が集まっています。客層は若い世代だけでなく、マダム、子連れのご家族、日本人観光客と、想像以上に幅広いものでした。ただ、松山さんは現状を「まだ半ばです」と語ります。
「目指しているのは、お客様が旅行のプランを立てる段階で、このホテルのカラオケバーが楽しみの一つに組み込まれている状態です。ラグジュアリーホテルのラウンジバーのように、『あそこで一杯飲むのが目的』と言っていただけるようになりたい」
高橋さんの夢は、もう少し直接的です。
「このスナックを、お客様でいっぱいにしたいんです(笑)。一人じゃ回らないくらいに。みんなでカラオケして、お酒を飲んで、楽しんで、ゆっくり休んでもらって、朝は『行ってきます』『ありがとう』って送り出す。そんなスナックにしたいです」
この春、高橋さんはホテルSUI京都清水の支配人に内定しています。倉庫だった空間に灯した小さな灯を、これから引き継ぎ、育てていく役目です。
「SUIシリーズのコンセプトは、フレンドリーな接客なんです。堅苦しくない接客とサービスで、お客様に満足していただきたい。これからもこんな感じで、京都を引っ張っていきたいですね」(松山さん)
開業から1年。倉庫を改装した数席のカウンターは、ホテルSUI京都清水のスタッフにとって、お客様との一期一会の会話を磨く場となり、フロント接客にも変化をもたらしました。「粋なおもてなし」を掲げるホテル「SUI」シリーズが目指す顧客体験のかたちが、ここから少しずつ育ち始めています。
「ホテルSUI京都清水」について
「ホテルSUI京都清水」は「粋(いき・すい)」のおもてなしをコンセプトに、洗練されつつ自然体で、人情と温かみのあるホスピタリティを提供するホテルのうちのひとつです。2021年8月1日「ホテルアベストグランデ京都清水」として開業。2025年4月12日、より京都らしい粋なおもてなしを提供するために、「ホテルSUI京都清水」へリブランディング。同日、館内に新たにスナック「YOASOBI」を開業しています。

「ホテルSUI京都清水」概要
所在地:京都府京都市東山区朱雀町423番
客室数:150室
ご予約・お問い合わせ先:各種予約サイトにて受付中
アクセス:京阪本線「清水五条」駅より徒歩1分
詳しくは公式サイトをご覧ください
公式サイト:https://hotel-sui.com/kyoto/
株式会社アベストコーポレーションについて
株式会社アベストコーポレーションは、兵庫県神戸市に本社を構え、全国で21施設のホテル運営・管理を行う企業です。2003年の設立以来、独自の運営ノウハウと柔軟なサービスで、地域や施設ごとに最適なホテル経営を実現してきました。 当社では、地域の子どもたちや高齢者の方々と「食」を通じて繋がる取り組みとして、各地で「こども食堂」を継続的に実施しています。また、「認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」への寄付により、全国のこども食堂へお米を届けています。地域に根ざした場所をつくること、既につくられた場所を応援することを通じて、誰もが安心して集えるあたたかな場づくりを目指しています。
・こども食堂:https://www.abest.jp/news/2024/news0925.html
・SDGs活動:https://www.abest.jp/sdgs.html
〈会社概要〉
社名:株式会社アベストコーポレーション
代表者:代表取締役 松山みさお
設立:平成15年10月
本社:〒650-0042兵庫県神戸市中央区波止場町6-1
事業内容:ホテル運営事業・シニアビジネス関連事業など
URL:https://www.abest.jp/
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