酒と健康④ 飲酒による健康被害は?

リスクを知って適切な付き合いを

 皆さんはお酒が健康に及ぼす怖い影響を知っていますか?―

 厳しい暑さが続く中、涼しい部屋でグイッと楽しむ一杯はおいしいですよね。
 しかし、そのお酒が私たちの体の中でどのように作用しているか、考えたことはありますか?

 適量なら気分をリフレッシュさせてくれるお酒ですが、飲み過ぎが続くと「脂肪肝」や「脳卒中」、さらには「がん」や「依存症」といった深刻な病気のリスクを高めてしまいます。

 「知らなかった」では済まされない、お酒と健康の切っても切れない関係。今回は、アルコールが体に与える影響とリスクについて探っていきます。

 大分大学医学部の松浦恵子教授にアルコールが及ぼす健康被害について解説してもらいます。

 ▼記者…男性(37)。お酒が好き。最近あった健康診断で肝臓の数値があまり良くなく…。アルコールが原因の病気について気になっている。

 ▼話を聞いた人…松浦恵子・大分大学医学部教授。医師。科学的なアプローチでお酒の適正な飲み方を研究する「飲酒科学振興協会」代表理事を兼任。

2026年8月21日

医学的には「飲まない」が正解

健康被害を改めて知る


 記者 6月に会社で受けた健康診断で肝臓の数値があまり良くなくて…。お酒が好きで飲む機会も多いので今後の健康が心配になりました。改めて、アルコールが原因で起きる健康被害について教えてください。

  
松浦恵子教授
松浦恵子教授
松浦教授 健康診断の結果は心配になりますよね。でも、意識するのは大切なことですよ。
 さて、飲酒についてですが、医療者の立場から率直に言わせてもらうと「健康のためには飲むな」と言った方が正しいのかもしれません。
 そうはいっても、お酒は文化の一つでもあり、社会に浸透しています。完全にダメと言うのではなく、適度に楽しむことの必要性を伝えていきたいです。

 それを踏まえた上で、飲酒が及ぼす健康被害について説明します。

中性脂肪の増えすぎにご注意!

放っておくとがんの恐れも…


 松浦教授 まずは記者さんが気にしている「肝臓」が受けるアルコール被害について簡単に解説していきましょう。

 記者 ぜひ、お願いします!

 松浦教授 お酒を飲むと、アルコールは肝臓で(1)アセトアルデヒド(2)酢酸―という順番に分解されます。
 酢酸まで分解されるとアルコールそのものは無害になるのですが、その分解される過程で中性脂肪の合成が促され、肝臓に蓄積されていきます。
 増えすぎた中性脂肪は肝臓の細胞を圧迫します。この状態が「アルコール性脂肪肝」です。

 そうなると、肝臓の働きはどんどん阻害されていき、いずれ細胞は破裂して炎症が起きます。炎症を繰り返すことで肝臓は繊維化し、固くなります。それを「肝硬変」と言います。
 体は消えた細胞を再生しようとしますが、そういった状態が続くとエラーが発生して「肝臓がん」になる恐れがあります。

 記者 なるほど。アルコールが直接悪さをすると言うよりも、分解の過程でできる中性脂肪が増えすぎることが病気の原因になるのですね。

 松浦教授 また「膵臓すいぞう」もアルコールの影響を受けやすい臓器です。

 記者 恥ずかしながら、膵臓すいぞうってどんな働きをしている臓器かあまり詳しくありません…。それも含めて教えてください。

 松浦教授 膵臓すいぞうではすい液という消化酵素が作られています。すい液は十二指腸に分泌され、他の酵素と一緒になって、食べ物を消化します。糖質、タンパク質、脂質を分解する強力な消化酵素を出す臓器なので、それが出過ぎると自分の細胞を攻撃してしまいます。自傷行為のようなものです。
 アルコールは膵臓すいぞうを刺激して、すい液を過剰に出させます。
 その過剰分泌により炎症が起きるのが「すい炎」。それがずっと続くと、細胞の再生の際にがん細胞に変異する可能性が上がります。

 記者 肝臓や膵臓すいぞうといった生きていく上では欠かせない臓器をお酒の飲み過ぎで痛めつけてしまうことになるのですね。炎症が、がんにまで発展すると思うととても怖いです。

 松浦教授 そうなんです。何事も「適度」が肝心。お酒は健康に直結しますので特にそれを意識してほしいです。

脳卒中に依存症、お酒が強くても油断は禁物

 記者 飲酒することで、肝臓や膵臓すいぞう以外にも影響はありますか?

 松浦教授 肝臓は健康診断などで数値として現れやすいので、意識している人は多いかもしれませんね。
 次は「脳」への影響を見ていきましょう。

 記者 確かにお酒を飲むとふらふらしたり、頭が痛くなったりしますよね。どんな病気があるのですか。

 松浦教授 「脳卒中」ってどういう病気か知っていますか?

 記者 よく聞く病気ですが具体的には分かりません。飲酒と関係があるのですか?

 松浦教授 「脳卒中」は「脳出血」「脳梗塞」「くも膜下出血」の総称です。
 なぜアルコールが影響するのかというと、飲酒すると分解に伴う交感神経の刺激や血管の収縮などによって血圧が上がります。
 また、飲酒は脱水も起こすことがあるので血液が滞りやすく、脳に影響が出やすくなる訳です。
 同じような理由で心臓にも良くありません。

 記者 脳といえば「依存症」も脳が関係してますよね。

 松浦教授 そうですね。「アルコール依存症」の闇は深いです。特にお酒に強い人がなりやすい病気です。
 アルコールを飲むと脳がドーパミン(快楽物質)を出します。すると気分が高揚したり、嫌なことが忘れられたりと気持ちが良くなります。多量のお酒を飲み続けると、お酒の量が自分でコントロールできなくなり、脳がさらなる刺激を求めてお酒を欲し続けてしまいます。
 これがアルコール依存症です。

 依存症の人がお酒を断つと手が震える、体調が悪くなる、頭が痛くなるなどの「離脱症状(禁断症状)」が現れます。
 それを止めるためにまたお酒を飲むということを繰り返し、悪循環になる。そして、先に話したような病気も併発することがあります。常にアルコールを欲してしまうので、社会生活上の問題も出てきます。

 記者 脳への影響、特に怖いです。私もお酒が好きなのでほどほどにしなければ…。

肝機能の異常はアルコールが原因?

数値で見る、健康状態

 松浦教授 ところで健康診断の結果が悪かったと言っていましたが。

 記者 そうなんです。6月に受診したのですが、中でも【肝機能判定】で「要医療」という結果が…。肝炎、肝硬変などで高値となる「AST(GOT)」と、肝炎、脂肪肝などで影響する「ALT(GPT)」がいずれも基準値を上回っていました。

 (健康診断の結果を松浦教授に見てもらいました)

 松浦教授 なるほど。確かに高いですね。ただ、アルコールが影響して数値が上がるはずの「γガンマ―GT」は上がっていません。これだけではアルコールが原因とは言えないので、近いうちにもう一度検査をしてみた方がいいですよ。食べ過ぎで脂肪肝になっている可能性もありますし。

 記者 そういえばここ一年で体重も増えています…。食べ過ぎの線もあるかもしれないですね。

 松浦教授 でも、自己判断は禁物です。ちゃんと病院を受診して普段の生活を顧みる機会にしてくださいね。

 記者 近いうちに病院に行きます…。
 改めて、適度で楽しい飲酒を心がけようと思います。ありがとうございました!

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