直野 今回は「挑む心、発信のススメ」がテーマです。新しいことに挑んできた人たちを集めて話したら、皆さんに元気になってもらえると思い設定しました。まずはそれぞれの「挑戦の定義」についてお聞かせください。
岡野 やりたいと思ったことをやる。心の中から自然に湧いてきたやりたいという気持ちに従っています。
南 事業開発の仕事をしていて、まずはこの事業が誰のためになるのか、どれ<らいのお金になるのか、経済と道徳がちゃんと成り立っているかというところからスタートします。金もうけしか考えていない事業はしない。それ自体、私にとっての挑戦ですね。
河野 挑戦は筋肉みたいなものだと思っています。ちょっとハードルが高そうでも、これをしたい、あれをしたいと心の赴くままにしていたら、いつのまにか会社ができていました。できない理由を考える時間とどうしたらできるか考える時間、同じだけかかるなら、できる方法を考えた方が損をしないと思います。
丸田 思ったことをすぐ口に出すのが大切だと考えています。やりたいことをいろんなところで言っていると、協力してくれる人を引き寄せる。挑戦しようと思ったら、いろいろ考えて段階を踏み、無理だと思うことを排除するより、まず人に話してみることです。
岩尾 美しいものを見たい人がオーロラを見に北欧に行くとします。では路傍の花の名前を知っているかというと、意外に見過ごしてしまう。チャレンジは自分を完成させていくことで、起業などの節目があるとは限らない。下手だったあいさつがうまくできるようになったとか、ささやかなことを評価する方が大事だと僕は思います。南極や砂漠に行くのもいいけれど、もう少し内的なものでも、チャレンジの価値は変わらないのでは。
小野 全くその通りですね。僕は小学3、4年のころに登校拒否になり、思ったことを表現できず悩んでいました。それを変えたくて、ちゃんとあいさつするといった小さなチャレンジを積み重ねました。キーノートセッションでお話しした、17Liveで配信しているおばあちゃんの事例も、ああいうことは誰にでもいつでも起こり得ると伝えたい。実は興味の対象ってすごくたくさんあって、小さなことに価値があると改めて感じます。
直野 挑戦する上で失敗やリスクヘの向き合い方を教えてください。
岡野 簡単にうまくいくことは世の中に一つもありません。何かをやろうとするときには失敗しかないという前提で、じゃあどうやるのかというマインドになっていますね。
南 失敗が自分にとっての糧になっている経験が多いです。ならば失敗は失敗ではない。経験で得た知識が別の事業に生かされることもある。そう考えると失敗は存在しないと思います。
丸田 ダンサーを目指していて、それを諦めて酒屋の業界に入ったのですが、この業界で頑張ってお金を稼げばダンススタジオを持つことも、若手のダンサーを活躍させることもできる。夢って次々変わっていくもので、ダンスのプロは諦めたけど夢は続いていく。だから失敗だと思っていません。ワインを造るとき、雨が多いと水っぽくなるんですが、海外の人はみずみずしくて飲みやすいと評価する。良いところを見つけるんですね。失敗かもしれなくても、見方によっては次の成功のためのステップだし、こうしたらうまくいくという発見にもつながります。
直野 小野さんは本に「アタマで考えれば考えるほどに、やれ仕事の予定が、やれ練習量的になど、『できない理由』が生まれがち。『ココロの羅針盤』の針がピンッと方向を示した以上、まずは『ポチッ』とエントリーしてしまえばいい。考えるのはそれからだ」と書いています。全く失敗を想定していませんが、向き合い方は。
小野 会社の代表をしていて日常的に判断を求められます。そんなときよく「誰も死なないから大丈夫」と言うんです。最大のリスクは死しかありませんから。死ぬまで経験は絶対に積み重なっていきます。
直野 ポジティブな挑戦は人に伝染し、影響を与えます。皆さんも誰かの影響を受けているのでは。
河野 影響を受けまくって今ここにいます。名前を挙げると、起業家の家入一真さんと孫泰蔵さん。それとカズワタベさん。カズさんが会社を興すとき私はまだ会社員で、「俺、会社興すんだよね」と聞いて「なら私にもできる」と思ったんです。近くにいる人がチャレンジする姿を見て私も、と思えました。孫さんは「大丈夫、失敗できないから。日本においてあなたはまだ何者でもない」と言ってくださいました。家入さんは「できない理由がお金なら出してあげる」と言ってくださった。私も今、後輩にそう言うようにしています。
直野 岡野さんはまちづくりに関して由布院の方々に影響を受けているとか。
岡野 (昔からあるものを生かしたまちづくりで由布院温泉を全国ブランドにした)中谷健太郎さんや溝口薫平さん。地域を元気にする活動を仲間と一緒に少しずつやっていく、そういう部分で中谷さんや溝口さんの本を読むと勇気が出てきます。成功かどうかなんてその時には分からない、社会が進む方向と真逆のことに取り組んできたのに、長期的に見たら今の由布院をつくり上げている。すごいことです。
丸田 酒屋は一生懸命やるともうからないのですが、お客さまが損をしないように、蔵から提示されたちゃんとした金額で売ることを徹底しています。これは社長である父が一切崩さなかったことです。しっかりと管理して最高の品質で届ける。一番おいしいときでないと売らない。大事にするのはお客さまが飲んで幸せになるかどうか。そこは父の影響を受けています。
南 会社には営業や売り上げを考える外向きの部門と、従業員の育成や経理などを考える内向きの部門があります。外向きには、道徳と経済が融合して共に成り立つという二宮尊徳の思想を経営理念に掲げています。内側の育成などには韓非子の思想を取り入れています。