2025816日()

第1部 キーノート セッション

即座に目標設定を

 キーノートセッションでは、アドバイザーを務める小野裕史さん(インフィニティ・ベンチャーズ共同代表、17MediaJapan代表取締役)が、マラソンで世界を巡った経験を交え、情報がカジュアルに発信できる中で、スタートラインに立つ重要性を講演。コーディネーターの直野誠 大分合同新聞社 報道部編集委員といかに発信するか話した。

情報を一瞬でシェア

アドバイザー 小野 裕史氏
 直野 別府ヒットパレードクラブは2017年に火災に遭いましたが、3日後には仮店舗で営業を再開、見事に復活しました。まさに「挑戦」のテーマにふさわしい場所です。
経営者でありながら「マラソン中毒者(ジャンキー)」として挑戦を続ける小野さんに、早速お話ししていただきましょう。

 小野 きょう一番に伝えたいのは、僕たちが皆さんと変わりなく、何者でもない人間だということです。まずは「挑戦と発信」というキーワードから、1910年代にロンドンの新聞に掲載された南極探検隊の広告をご紹介したいと思います。
「南極探検隊員募集求む隊員。至難の旅。わずかな報酬。極寒。暗黒の日々。絶えざる危険。生還の保証はない。成功の暁には名誉と賞賛を得る」−過酷だし報酬はないけど、成功したら有名になれるよ、というブラックな募集ですが、多くの人が応募したそうです。当時、南極に行くのはとんでもないチャレンジでした。今やカジュアルにチャレンジができる時代です。僕は2012年に南極を100キロ走るアイスマラソンに出場し、ペンギンの格好をして完走しました。南極、北極など極寒の地から、灼熱の砂漠でも走ったことがあります。
 以前は、インドアのパソコンおたくだったんです。それが自分を発信するうちにエスカレートしてマラソン中毒になり、今に至ります。これもICT(情報通信技術)革命の1つの象徴だと思います。
 ICT革命、IT革命といわれていますが、何かというと、コンピューターの性能が上がり、常にあらゆる情報がつながっているのが当たり前の時代になったということ。150年前の情報伝達の手法は馬に乗るか走るかでした。今や情報が一瞬でシェアできます。情報革命の面白い部分だと思います。
 ライブ配信アプリ「17Live(イチナナライブ))」の運営会社17MediaJapanの代表も務めていますが、これはスマホ1つで自分のチャンネルを持ち発信できるサービス。ストリートだと目の前にいる人にしか見せられないものが、多くの人へ発信できます。カジュアルにつながっていることが最大の価値です。発信と価値。人はちょっとした情報や変化を共有したいと思っています。

5年で世界選手権に

 僕は今、人間のマラソンに飽きて、エンデュランス馬術という”馬のマラソン”をしています。始めて5年くらいで、2度世界選手権に出させてもらいました。1つの国から5人参加できますが、日本からは僕1人(笑)。これも、最初のきっかけはツイッターでした。北海道には広大な土地もおいしいものもたくさんあるのに、なぜ経済が冷え込んでいるんだろう、となって。友達と牧場でもやってみようと投稿したのが「牧場主の人 紹介して」という1文でした。そこでつながった牧場主から競技を勧められて。初めてトレーニングした時、Facebookの投稿に、絵馬に書いた目標を公開しました。「最短で2年後の世界選手権を目指す」と。結果として出ることができました。
 次のレースはモンゴルダービーです。世界で最も過酷といわれる馬のレースで、1000キロを7~10日以内に走ります。40人が参加できるのですが、来年2020年の大会にエントリーしました。僕が出たら、日本人で初めての参加になるみたいです。
 これ、ほぼ野生の馬に乗るんです。もちろん、馬が乗せてくれなかったり、ひきずられたりすることも日常的にあるみたいです。ちょうど今年の大会が夏にあったのですが、優勝した選手は70歳のアメリカ人男性でした。70歳にして10日間毎日馬に乗るんですよ。勇気づけられます。年齢に関係なくチャレンジできるってことだなと思いました。

「ノータイムポチリ」

 皆さんに覚えていてほしい言葉は「ノータイムポチリ」。僕はいつも言っています。どんなことかというと、興味があることが見つかったら、即座に、カジュアルにぽちっと目標設定する。やってみたいなと思いついた瞬間、「無理じゃない?」「できないんじゃない?」という自分が生まれるわけです。そこで根拠ゼロでもいいので明示化してしまう。マインドセット(考え方)の変化が生まれます。スタートラインとゴールが生まれます。おもしろいなと思った瞬間に具体化して決めてしまう。これだけで自分が変わります。
 人間はいつか死ぬわけですが、経験は重ねていく。子どもの時は恐れがないけれど、年齢を重ねると、今までの経験がじゃまをするわけです。生き物の特性です。これを壊すには、頭で考える前に設定することが大事だと考えています。
 以前、九州縦断マラソンをしたことがあります。当時、「ビール1本もらえれば、どこでも講演しにいきます」ということをやっていて、佐賀の人から呼ばれて行ったんです。
講演した後、酔っぱらったついでに「九州縦断したらおもしろそうだな」と。投稿を見た広島県の2人が絡んできて、一緒に走ろうと。そんなノリで500キロの旅が始まりました。1人は僕と出会うまで30キロも走ったことがなかった。でも、発信しながら走っているうちに必ずサポーターが現れるんです。
 誰にでも、どこにでも、小さなきっかけはたくさんある。日々、いろんなチャンスがありながら、言い訳する自分もいる。スタートラインに立つと決めた瞬間が一番大事で、立ってしまえば、勝ちなんですね。ほとんどの人がスタートに立っていないので、まず、スタート地点を自分でつくることが大切なのではないでしょうか。
 先ほど紹介した17Liveで人生が変わった人もたくさん出てきています。例えば70歳のおばあちゃん。孫から勧められたそうなんですね。彼女はメディアに引っ張りだこです。大変な生活をされてきて、おじいさんと2人暮らしだそうで、生き方が変わってきたんですね。中学生くらいの子が「お母さんに怒られた」とか相談してくるんです。

チャンスはごろごろ

コーディネーター 直野 誠
 きっかけによって人生が変わる。ごろごろチャンスがころがつていることが、IT革命の最大の価値なんじゃないかなと思っています。大事なのはやりたいか否か。有限の時間なので「やりたいことをやらないと」と伝えたいです。
 スティーブ・ジョブズの名言に「未来に向かって点と点を結ぶことはできない。過去を振り返った時にのみ、点と点を結ぶことができる。だからあなたは、点と点が未来において結び付くことを信じる必要がある」という言葉があります。すべての人において真実だと思います。せっかく興味が生まれたならやってみてほしい。点を打つ行為が「ノータイムポチリ」です。点が未来でハッピーにつながればと思います。

 直野 「ノータイムポチリ」という言葉を聞いて、早速、僕もマラソンに登録しました。ちなみに、投資先を決めるときはそうではないですよね?

 小野 よく聞かれます。最初は直感、ロジック(論理)は後からつくります。

 直野 ありがとうございました。