2025101日()

第2部 トーク セッション(3)

愛すチームと 豊かな生活を

アメリカでの体験

 首藤 皆さんのミライ宣言を私たちもサポートしていきたいですし、お互いサポートし合って新しい仲間をつくりながらやっていければいいと思います。会場の方から質問はありませんか。

 会場 キーノートセッションで天野さんが熱量についてお話しされた、「(スポーツが人の生活を豊かにする様子を)生きているうちに見たい」という言葉が心に残っています。実現するために心掛けていることはありますか。

 天野 大学時代のアメリカで、すごく印象的なことがありました。グランドキャニオンの谷間に独立リーグの野球チームがあります。ラスベガスから車で行って、グランドキャニオンに迷い込んで、「こんなところにスタジアムがあるのか」と思っていたら、ぱっと開けて、そこはお客さんでいっぱいでした。チケットが取れないぐらいの人気で、この人たちどこから来たの、という感じでした。競技力に左右されず、スポーツが人の生活を幸せにする姿がそこにあったのです。僕はその時のことを今でもよく思い浮かべます。アメリカでできるのだから、日本でも絶対できるはず。生きている間に実現したいと思っています。そのイメージを体感したことが大きいです。

元気なチーム大分

 首藤 天野さん、まとめをお願いします。

 天野 大分はプロスポーツがあり、このように活動している人がいます。人がものを動かしているので、大事なのは人材ですが、大分にはそろっていると感じています。「一生に一度」のワールドカップもあります。スポーツが身近なところにあるので、大分は恵まれています。生かすのはここにいる人次第です。ぜひ頑張って、スポーツ先進県になってほしいと思います。

 首藤 障害者スポーツ先進県から、さらにスポーツで地域を元気にする先進県・大分を目指して、同じチームとして皆さんのお力添えをいただけたらと思います。ありがとうございました。

編集後記

 ハピカムが終わり、数日をおいてから出演者に感想を尋ねた。小笠原順子さんは他の出演者の話を聞き「全員ステージが違うし、達成したいことも違うと感じた」と言う。牛尾洋人さんは認知度の低い競技の普及を進め、共生社会の実現を目指している。宮崎啓子さんは総合型地域スポーツクラブの運営を通して地域住民の幸福度を高めようとしている。中山正剛さんは子どもや若者たちに社会を生き抜く力を身に付けてもらおうと研究を重ねている。吉門恵美さんとアドバイザーの天野春果さんは市民に共通の話題を提供し、コミュニティーを広げている。
 小笠原さんはこう続けた。「抱えている課題も違う。何もかも別々。だけど、みんなつながっている」
 スポーツの力は多様だ。「する、みる、ささえる」と言われるように、誰もがそれぞれの形で携わることができる。レクリエーションとして、競技者として、観戦者として、ボランティアや指導者として。スポーツは健康維持・増進に役立ち、コミュニティーを広げ、絆を育む。経済効果や雇用を生み出すこともある。人材育成の観点からも本来は有効だ。達成感を得ることで自己肯定感を高めることもできる。それ故に地域活性化のツールとしてのスポーツは多様な形が取られており、課題もそれぞれだ。
 だが、本質はもっと単純なのかもしれない。ハピカム当日、アドバイザーや出演者が繰り広げたトークセッションは、聴講者を引きつけ、笑顔にした。プログラム終了後も多くの人が出演者を囲み、目を輝かせて話し込んでいた。「する、みる」どころか、それに関わる話をするだけでスポーツは人を魅了する。
 スポーツは人を、地域をわくわくドキドキさせる力がある―。出演者はそれぞれ苦労を抱えながらも、スポーツを通じた活動を自ら楽しみ、地域の人たちを笑顔にしている。小笠原さんが感じた「つながり」はそういったことではないか。
 SPORTの語源はラテン語動詞のDEPORTAREとされる。DEは英語でAWAY、PORTAREはCARRYとされ、ある場所から他の場所へ物を移す、人が移動するという意味だった。次第に、心を嫌な状態からそうでない状態に移す、つまり「気晴らしする」「楽しむ」「遊ぶ」の意味が含まれていったという。
 スポーツを楽しむことはもちろん、スポーツを通じた地域活動も楽しもう。出演者は一様に「また一緒に何かやりたい」と話してくれた。どうせなら多くの人と行動を共にし、感情を共有する方が楽しい。
 天野さんは「クラブづくりは農業のイメージで」と話した。まず土地を知り、育つ種を植え、おいしい実は時間がかかる。それはそのまま、まちづくりにも人づくりにも当てはまる。時間はかかるかもしれないが、できることから始め、少しずつでも前に進もう。もちろん「熱量」と「ユーモア」を忘れないようにして。

ミライデザイン宣言ハピカムコーディネーター
大分合同新聞社報道部編集委員
首藤 誠一