2025101日()

第2部 トーク セッション(2)

大分だからこそ、できること

「本物」を体験する

 首藤 本物を体験したり、見ることは非常に大切です。今年はラグビーワールドカップの大分開催です。大分合同新聞社でも専属の取材チームをつくりました。

 中谷 大分にとって2002年のサッカーワールドカップに続く2度目のワールドカップを面白がりながら、この大会がこれから大分が変わっていく一つの契機になると思い、どんなレガシー(遺産)を残せるかを考える企画に取り組んでいます。例えば前回のサッカーワールドカップでは「フーリガン」という言葉が出ました。今回は海外のお客さんを呼び込む「インバウンド」へと変化しています。社会環境が変わっているので、今の大分にとって今度のワールドカップがどういう意味をもたらすかが私たちのテーマです。ラグビーは国籍に関係なく各国の代表としてプレーしています。これから日本においても多様化が進む中で、社会のあるべき姿や縮図をチームの中で体現しているのではないかと考えることができます。この会場にもオリンピアンがいれば、スポーツ体験がない人もいます。スポーツをする、見る、支えることは誰にでも関わるチャンスがあります。スポーツには度量の深さがあると認識しました。

 天野 ラグビーワールドカップは今年開催なのに、大分の街にあまり色が出ていません。もっと面白く盛り上げていかなければならないと思います。ラグビーが他の球技と違うのはボールの形です。例えば、街にある「Oita」の「O」の字を全てラグビーボールの形にしてみては。機運醸成が必要なのではないでしょうか。看板は初めて見た時は気付きますが、2度目からは風景になってしまいます。

愛すチームと 豊かな生活を

人間関係が希薄に

 首藤 天野さんのキーワードは。

 天野 「温」です。今はスマホだとか、SNSだとかで利便性は高くなっていますが、人間関係はすごく希薄になっています。ただ、人間は人とのつながりを求めています。温もりが伝わる、距離が近く感じる仕掛けを意識しています。他人事ではなく、自分事と感じてもらうためにはどうしたらいいかを一番に考えています。

 首藤 運動部からデスクが来ています。取材を通してスポーツの力をどう考えますか。

 吉田 大分にはトリニータがあり、バサジィ大分、大分三好ヴァイセアドラーがあり、スポーツを見る環境に恵まれています。障害者スポーツも発祥の地であり、車いすマラソンに代表されるように活動が盛んな土地だとつくづく思います。子どもにスポーツの輪を広げる動きも大きくなるなど、スポーツをする環境も良くなっています。それを地域にどう落とし込んでいくのか。トリニータを例に挙げると、トリニータとして地域の人に還元したいという思いと、トリニータを支えている人たちの地域に対する熱い思いが伝わり合うことが地域の活力になるのではないのでしょうか。トリニータと支える人たちの間に境界があれば熱は伝わりにくくなります。その境界を取り除く作業が大事になってきます。コアなサポーターだけでなく、「試合に行ってみようか、どうしようかな」と考えている人がいっぱいいます。スタジアムまで足を運べていない人をどう取り込んでいくのか。ウィン・ウィンの関係になるにはどうすべきかをみんなで考えていきたいです。

弱くても強くても

 首藤 壁を取り払うのが新聞社の役目かもしれません。それでは皆さん、「私のミライ宣言」を発表してください。

 天野 「話だけでは終わらせない!」。形にしなければ何も始まらない。オリンピックとパラリンピックは今仕込んでいます。オリンピックでは今までやったことのない、すごいことをします。近く発表します。

 吉門 「愛されて強いチームに」。トリニータがJ1に定着して強ければ、もちろん愛されて人気も出てくると思いますが、J1では何が起きるか分かりません。「弱くても強くてもトリニータは大分にいなければならない」と応援してくれる人が増えるように、スタジアムでの試合観戦はもちろん、地域のイベントや地域の皆さんとの交流でより身近に感じてもらって、生活の一部になれればいいと。J1にいるからこそ、より身近にいなければならないと思っています。

楽しく手話学ぶ

 牛尾 「手話であふれる街 大分」。デフビーチバレーといってもオリンピックのビーチバレーとルールは全く同じです。われわれの特徴である手話でのコミュニケーションをもっと広げたいです。手話で大事なのは目と目を見てコミュニケーションをすることです。障害のあるなしに関わらず人にとって大事なことです。私もデフビーチバレーの監督になって初めて手話を覚えたのですが、手話を学ぶことは純粋に楽しいです。皆さんに知ってもらいたいし、健常者同士でのコミュニケーションにも使えるのではないでしょうか。

 宮崎 「サポート」。5年間やってこられたのは、周りの人に支えられたから。感謝の気持ちを忘れず、私がサポートできる人がいれば、一緒に上を目指したい。ベクトルが上を向いている人や何かやりたいと思っている人のキラキラ感はすごく素敵なので、一緒に引っ張ってもらって私もまだまだ上に行きたいです。

 首藤 仲間づくりは本当に大切ですね。中山さんお願いします。

自分の考え持って

 中山 「AIに負けない人材育成」。最後の教育機関である大学に勤める者として、これまでの詰め込み教育ではなく、問題を発見する、創造できる力を持った学生を増やしていきたい。それが将来の日本を背負って立つ若者を教育することだと切に思っています。言われたことを「はい、はい」とやるだけでなく、自分の考えを持っていろんな意見が言える学生を育てていきたい。そのツールとして体育授業だったり部活だったり、スポーツを活用していきたい。可能性は十分あると信じています。

 小笠原 「ライフワーク」。アスリートの経験があるからではなく、いつも街角にいて、「ちょっと泳ぎを教えてよ」と言われたら、「じゃあ、川でも行こうか」というような人になりたいです。映画を作るために8㍉フィルムを集めていますが、お金になるからとか仕事になるからではなく、暮らしの中で必要だと思うことを自分の人生を通してやっていける人間になりたいと考えています。