2025101日()

(4)無人島で「絆」芽生える

> 「無人島合宿」の参加者と一緒に島でのリスクを考える森遼太さん(右端)=臼杵市
 「ひとねるアカデミー」は臼杵市を拠点に、自然体験プログラムの提供やリーダー育成などに取り組んでいる。代表の佐藤陽平さん(41)にこの春、パートナーが誕生した。

 森遼太さん(29)=東京都出身=は青森県や埼玉県で小中学校の教員をしていた。「火を見たことがない」「勉強しかしていないから遊び方が分からない」と話す子どもたち。「子どもと会話できない」と悩む保護者らを見てきた。将来地域を支え、親になる子どもや若者にできることは何か、と自問自答してきた。

 覚悟を決めた。同市に移住し、アカデミーの一員となった。臼杵の自然や文化を生かし、地域の人たちと協働して体験教育を広げたいと考えている。

 8月12日、同市中心部の食堂に10~20代の若者17人が集まった。ほとんどは県外から。臼杵湾に浮かぶ津久見島での「無人島合宿」の参加者たちだ。佐藤さんらが企画し、昨年に続き2回目。今回は森さんが運営のかじ取りを任された。

 合宿は、島にテントや調理道具などを持ち込み、2泊3日を過ごす。食料は決められた予算の中で参加者が買い出し、残りは魚を取ってさばく。不便さの中で共同生活を送り、自分を見つめ直す。佐藤さんは参加者に「経験を積むと、本当にやりたいことが見えてくる。島でそのヒントを見つけてほしい」と伝えた。

 大学4年生の山浦安里彩さん(21)=埼玉県=は昨年も参加し、人と話し合う大切さを実感した。「人の意見を聞けるようになったし、周りに反対されても自分の意見に自信を持てるようになりました」

 愛媛県で高校の教員をしている長瀬智寛さん(25)は、自身の体験から得られるものを生徒に還元したいと参加した。「教育は他者との連携を通して深めることもできる。愛媛と大分はお隣。一緒にできることはないかを探す旅でもあります」と話した。

 県内から見学者も訪れた。「体験を重視する活動に共鳴しました」という50代男性。子どもたちが農村体験をする教育の場づくりを計画している。「自然遊びを教える人材も必要です。佐藤さんらと連携できないか」と熱心に耳を傾けた。

 ハピカムでは、出演者らが一様に「つながりづくり」を課題に挙げた。今以上に地域での学びを広め、深めたいと考えているからだ。志を同じくする者のつながりが芽生えている。