2025101日()

(2)郷土の誇り、住民と伝承

> 流れ着いたごみを手作業で集める中村大悟さん(左端)と学生ら=7月、中津市の耶馬渓アクアパーク
「継続は力なり」。玖珠町出身の口演童話家・児童文学者、久留島武彦(1874~1960年)の座右の銘を実践する人がいる。

 8月9日夜、同町の久留島武彦記念館で「久留島学公開講座~入門編~」が開かれた。同館館長の金成妍(キムソンヨン)さん(39)が「より多くの人に関心を持ってほしい」と、館のボランティアガイド対象の講座を一新し、広く町民に参加を呼び掛け。すると約20人が集まった。

 テーマは「久留島武彦の幼年期」。久留島が自身の少年時代について書いた文章を全員で朗読した。金さんは「皆さんの解釈で久留島を学んでください。そして自信を持ってアピールしましょう」と語り掛けた。

 阿部黎子さん(71)は、ボランティアとして館の掃除や催し物の準備を手伝っている。自称「金さんの大ファン」だ。「よそから来たのに、町のことをどんどん発信してくれる。少しでも応援したい」。日頃から館のパンフレットを持ち歩き、人が集まりそうな場所に置いてもらえないかと頼んで回る。

 語り部や童謡コーラスなど町内16団体でつくる「わらべサークル協議会」。各サークルが学校で公演するほか、新春子ども祭りを開催するなどして、子どもたちと関わってきた。会長の山本紀子さん(78)は「信じ合い、助け合い、違いを認め合う久留島精神に基づいた活動を続けている」と話す。自身は、腹話術で子どもたちに久留島の魅力を伝えてきた。「町内でも久留島を知らない人がいる。大層なことはできないが、できる限り続けたい」

 後継者育成も課題だ。秋好民子さん(74)は、口演童話を披露する「語り部ひこわの会」の副会長を務める。会員10人は「60代でも若手」と言う。金さんは「知ることが第一歩。その上で知っていることを生かすことが大切」と説く。「きちんと伝える人を1人でも増やしたい。1人増えると2人、2人増えると4人になる」

 子どもたちの郷土愛を育みたいと願って久留島の顕彰を続ける町民と、住民が学ぶ場をつくる金さん。互いに共鳴し、信じ合い、助け合う関係だ。継続は力なり―。人と人がつながりながら、次世代にふるさとの誇りを伝えていく。

<メモ>
 久留島武彦記念館は久留島の功績や精神を紹介する施設として、2017年4月、町内初の博物館として開館した。同じ三島公園内にある童話碑は1950年、久留島の童話活動50周年を記念して建立された。除幕式に続いて開かれた日本童話祭は来年70回を迎える。