2025101日()

(3)実習で商店街を活性化

> 夜市で射的のブースを担当する成重さりなさん(右から2人目)ら中津東高校マーケティング部の3年生=中津市の日ノ出町商店街
 「少しずつですけど変化があります。何か協力できることはないか、と話し掛けてくる店主も増えました」。中津市のJR中津駅すぐそばにある日ノ出町商店街。協同組合副理事長の加来賢一さん(32)は実感を込めて、最近の街の様子を話した。

 中津東高校マーケティング部は同商店街が年6回開く「あきんど市場」で、商品販売の実習をしている。2014年の創部時から続け、5年目を迎えた。

 商店街とは関係のない高校生が汗を流している。昨年5月、同部が企画したイベントに多くの若者が街を訪れた―。高校生部員の姿を目の当たりにした店主らが、商店街活動に参加するようになった。

 同組合理事長の仲哲雄さん(70)は「若い子が商店のじいさん、ばあさんの意見に沿えるのか」と初めは抵抗があったと言う。これまで大きなトラブルはない。「年配のお客さんばかりだったが、高校生の力で若いお客さんが増えた」と集客面での効果も感じており、「本当に助かっています」と目を細めた。

 8月9日、部員は商店街で夜市の運営を手伝った。学びの場を提供してくれる街の人たちへの恩返しだ。ヨーヨー釣り、輪投げなどのブースを部員だけで運営した。

 射的のブースは3年生4人が担当した。部長の成重さりなさん(18)は「お客さんに楽しんでもらうには、私たちが楽しまないと」と笑顔を忘れない。「ごめんね。はい、参加賞」「バイバイ、また来てね」。的に当てられず、残念がる子どもに、部員が優しく話し掛けると笑顔も戻った。

 効率も考えた。客を誘導する、賞品を渡すなど、動線に沿って担当を決めた。客の待ち時間を減らし、スムーズに人が流れた。街で学んだ成果だ。

 成重さんらは日頃から「地域の人を笑顔にしたい」との思いで活動していると言う。2年の小田しおりさん(17)は「もっと部の知名度を上げて、地域活性化の力になりたい」と先輩の志を引き継いだ。

 若者の汗と笑顔でにぎわいを取り戻し始めた商店街。若者たちは街での活動で志を高める。共に一歩ずつ歩を進めている。

 <メモ> 中津東高校マーケティング部は、商店街での販売実習の他、南部まちなみ交流館(諸町)での古民家女子マルシェの運営などにも取り組む。現在の部員は17人。本年度の県高校生徒商業研究発表大会で、最優秀賞を獲得した。