斉藤友彦著「新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと」
(集英社・990円)
新聞社には締め切り時間がある。読者の皆さんに定時に新聞を届けるためだが、仮にその直前に大きな出来事が起きたとしたら、記事を収容するスペースを空けなければならない。こうした事態に即応することや、より多くの記事を載せるため、新聞記事は独特な書き方をする。「大事な情報を前に書き、途中から文章を切っても意味が通じる構成にする」「例えば大分中央署が複数回出てくるなら2度目以降は同署と省略する」といった技法だ。
ところが、パソコンやスマートフォンに展開するデジタルの世界では、新聞記事形式の長文がさっぱり読まれない。「一体なぜなのか」を研究し、「これがデジタル記事の書き方なのではないか」という答えに迫っているのが本書だ。
著者(50代)は共同通信社のデジタル事業部担当部長。もともと社会部系の事件記者で、30代前半の頃は大分支局に在籍していた。大分合同新聞社の社屋の中に支局があり、私と同じような現場を歩き回っていたため、言ってみれば盟友のようなもの。「静かな闘志を秘めたできるやつ」というタイプの記者だ。
デジタルの部署に異動したのが2021年。独特な書き方が染みついている新聞記者にとって、新聞用の記事をデジタル用に書き換えるのは思い切った頭の切り替えが必要だ。著者の格闘が始まる。
次第にいろいろなことが分かってきた。新聞で使う「同」という省略形や、最初に大事な情報を書くスタイルはデジタル読者のストレスになることをつかんだ。また、主人公を立て、ストーリー性のある記事展開にしたら、共感が得られ、読む人が爆発的に増える現象が起きた。本書には元の記事と書き換えた記事のサンプルが多数あり、比べると面白い。ダイナミックに別物に仕立てることが秘訣(ひけつ)のようだ。
著者は言う。「飾りすぎの文章でちょうどいい」。新聞記者のみならず、比較的長い文章をネットに投稿している人たちにとっても参考になる一冊だ。
(下川宏樹・大分合同新聞社編集局長)
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