閣議決定した危険運転致死傷罪の数値基準導入案を説明する平口洋法相=31日、東京・霞が関
大分市の時速194キロ死亡事故で適用要件の不明確さが浮き彫りになった危険運転致死傷罪について、政府は31日、「数値基準」を導入する自動車運転処罰法改正案を閣議決定した。一般道で最高速度の50キロ以上、呼気1リットル中0・50ミリグラム以上のアルコール濃度などで、一律に適用する内容。改正案が国会で成立すれば、公布から20日後に施行する方針。
改正案では、例えば最高速度40キロの道路を時速90キロ以上で走行した死傷事故などが処罰される。高速道などでは60キロ超過を基準にした。故意にタイヤを横滑りさせる「ドリフト走行」も、新たに危険運転致死傷罪の対象にする。いずれも、今年2月に法相に提出された法制審議会(諮問機関)の答申に基づく。
アルコールの数値については、被害者団体から「加害者に厳しく0・30ミリグラム以上にするべきだ」との要望書が法相に出ていたものの、法務省は答申を重視し、0・50ミリグラムで改正案を作成した。
現行規定の「進行の制御が困難な高速度」「アルコールの影響で正常な運転が困難」は維持し、車の走行や事故の状況によっては、数値にかかわりなく適用できるようにする。
これにより、最長で拘禁刑20年を科す危険運転致死傷罪の処罰対象となる運転パターンは、8から11の類型に広がる。
また、悪質な交通違反の酒酔い運転にも、「呼気0・50ミリグラム以上」の数値基準を加える道交法改正案も閣議決定した。「真っすぐ歩けない」「ろれつが回らない」などで判断している現状をより明確にする。
危険運転致死傷罪の法改正について、平口洋法相は閣議後の会見で「悪質な運転による死傷事犯への対応は喫緊の課題で、法案は大変重要な意義を有する。国会で速やかに成立するように法務省として力を尽くす」と述べた。
大分市の194キロ死亡事故(2021年2月)では、検察が当初、刑の軽い過失運転致死罪で加害者の男(24)を在宅起訴。被害者遺族が「なぜ過失なのか」と声を上げた後、危険運転致死罪に切り替えた。
全国で同じような判断のぶれが多発しており、各地の被害者遺族が法の見直しを求めていた。
<メモ>
時速194キロ死亡事故は2021年2月9日午後11時ごろ、大分市大在の一般道(法定速度60キロ)で発生した。当時19歳だった男は、乗用車を時速194キロで走らせ、交差点を右折してきた乗用車に激突。運転していた同市坂ノ市南、会社員小柳憲さん=当時(50)=を出血性ショックで死亡させた。24年11月の一審大分地裁裁判員裁判は危険運転致死罪で男に懲役8年の判決を下した。二審の福岡高裁は今年1月22日、一審判決を破棄。過失運転致死罪に変更し、懲役4年6月に減刑した。検察側が最高裁に上告している。