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「原判決を破棄する。被告人を懲役4年6月に処する」。平塚浩司裁判長が主文を読み上げると、福岡高裁の傍聴席からは「えっ」と驚きの声が漏れた。22日に言い渡された、時速194キロ死亡事故の控訴審判決。危険運転致死罪の成立を否定する判断が示され、事故で亡くなった小柳憲さん=当時(50)=の姉、長(おさ)文恵さん(60)=大分市=は「私の想像の中で、一番最悪な判決だった」と肩を落とした。
判決は福岡高裁で最も大きな101号法廷で言い渡された。傍聴席には全国の交通事故遺族やその支援者、捜査に関わった大分県警の警察官らが並んだ。
被告の男(24)はこの日も出廷せず、被告席は空いたままだった。
平塚裁判長は抑制の利いた口調で判決文を読み進めた。弁護人と検察官は終始、資料に目を落としてペンを走らせていた。
長さんは被害者参加制度を利用して検察官側の席に座った。裁判長が亡くなった小柳さんの無念さに言及した場面では、ハンカチを取り出し、涙を拭った。
公判終了後、長さんは福岡市内で、交通事故遺族らでつくる「高速暴走・危険運転被害者の会」のメンバーと共に会見に臨んだ。
長さんは「加害者を守るための司法なのかと、大きな壁にぶつかった気がした。市民感覚とかけ離れている。憤りというより悲しみを感じる」と胸の内を明かした。
量刑が引き下げられたことについては「事故後の約5年間、弟の無念を晴らすために生きてきた。4年半という刑期は、私たち家族が苦しんできた期間より短い」と悔しさをにじませた。「この判決を先例にしてはいけない。このまま納得して終わるという選択肢は、私の中にはない」と声を強めた。福岡高検には上告を求める考えを伝えたという。
■「悪質だと正面から問うために法改正必要」
194キロ事故は危険運転致死傷罪が適用されにくい問題を浮き彫りにした。
事故から2カ月半後の2021年4月、県警は加害ドライバーの男を危険運転致死の疑いで書類送検した。だが、大分地検は22年7月、法定刑の軽い過失運転致死罪で在宅起訴した。
なぜ危険運転罪じゃないのか―。被害者遺族が抗議すると、当時の担当検事は「直進道路を進路に沿って進んでいたら適用できない」と説明したという。
遺族は危険運転罪の適用を求める2万8千筆以上の署名を集めると、地検は判断を覆した。訴因を変更し、危険運転罪を立証するため、現場道路やサーキット場で走行実験を重ねた。
大分地裁は24年11月に判決を言い渡し、検察側と弁護側の双方が一審判決を不服として控訴していた。
事故は法の在り方を問題提起するきっかけとなり、法務省は適用要件の見直しに着手した。法制審議会(法相の諮問機関)の刑事法部会は昨年12月、法定速度60キロの一般道を110キロ以上で走行したケースなどに一律に危険運転罪を適用する数値基準案を決定。国は年内の自動車運転処罰法改正を目指している。
事故遺族の長文恵さんは「悪質な運転を悪質だと正面から問えるようにするため法改正が必要だ」と訴えている。
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