太平洋戦争の資料を収集・調査している宇佐市の「豊の国宇佐市塾」は7日、国東市の安岐漁港で米軍機の機銃掃射を受ける小型船舶の映像を新たに公開した=豊の国宇佐市塾提供
宇佐市の地域おこし団体「豊の国宇佐市塾」(平田崇英塾頭)は7日、太平洋戦争中に米軍が撮影した映像18本(計9分6秒)を報道機関に公開した。大分県関係は国東市の安岐漁港に停泊する小型船舶を米軍機が攻撃する映像1本(5秒)があった。
宇佐市塾によると、終戦が迫る1945年7月31日、姫島村上空では米軍のP―51戦闘機8機などが待機していた。山口県側の関門トンネルを空襲する米軍部隊のサポートが目的だった。
8機は任務を終えると、沖縄への帰還途中に国東半島の海岸線沿いを南下しながら、目立つ建物や船などを攻撃した。映像では小型船舶に対して米軍機が機銃掃射し、水柱が上がるのが確認できる。
解析した塾生の織田祐輔さん(39)は「安岐町史などにこの空襲の記録は残っていない。映像が見つかったことで埋もれた歴史を見つけることができた」と説明した。
45年3月29日の映像(82秒)は鹿児島県の種子島沖を航行する米軍の空母「ヨークタウン」から撮影された。日本軍の艦上爆撃機「彗星」がヨークタウンに特攻しようと試みたが、攻撃を受けて海に墜落。その後、搭載していた500キロ爆弾がさく裂する瞬間が映っている。
宇佐市塾の解析で伴隆一等飛行兵曹(愛知県出身)と菊池久中尉(岩手県出身)が搭乗していたことが新たに分かった。また、混乱の中で、空母が米軍機を日本軍機と間違えて撃墜する場面が映っていたことも発見した。
このほか、45年7月15日正午過ぎの映像(4本、計70秒)では、愛知県上空で日本軍の五式戦闘機が米軍機の攻撃で被弾する様子や、陸軍清洲飛行場(愛知県あま市)に設置された模造機が攻撃される様子などが捉えられていた。
宇佐市塾が2012~22年に米国立公文書館から購入した映像のうち、解析を終えた分を公開した。日米両軍の戦闘報告書や地形などを基に、日時や場所を特定した。
織田さんは「戦後80年を迎え、戦争体験者はどんどん減ってきている。映像によって悲惨な戦争があったことを思い起こし、関心を持ち続けてほしい」と話した。