トークバトルに出演した左から霜村さん、大仁田さん、エイジさん＝２５日、豊後高田市・ＦＴＯ提供
昭和１００年と合併後の豊後高田市誕生２０周年を記念する「豊後高田・昭和の町ヒーロー祭り」が１０月２５日、豊後高田市であった。高田体育センターでは、大分県内を拠点とする「プロレスリングＦＴＯ」が無料の大会を開催。試合はさることながら、満員の観客を引きつけたのは、プロレスラーの大仁田厚さんとＦＴＯ代表のスカルリーパー・エイジさんの「トークバトル３０分１本勝負」。なんとも面白かったので、これはぜひとも皆さんに読んでもらいたく、人工知能（ＡＩ）で書き起こし、一部修正を加えた。以下はほぼ全文。ファイヤー！
※【大仁田】＝大仁田厚さん 【エイジ】＝スカルリーパー・エイジさん 【霜村】＝司会の霜村香帆さん
■世界を回りたくてプロレスラーに
【大仁田】皆さんこんにちはーっ。ジャケット着てリングに上がることってないもんですから、きょうはなんだか変な感じです。いやぁエイジ、びっくりしたよ。大分空港からここ（豊後高田市）まで時間がかかるんですね。トイレに行きたくなって、そしたらずっと山道なんです。そこでねぇ、立ちションするわけにはいかないし。そうしたら、なんか役場のところに「どうぞトイレをお使いください」っていう看板があって助かりました。まあ、どうでもいい話なんですが。
【エイジ】いきなりトイレの話からスタートするとは。
【霜村】大分の思い出ができましたね。
【大仁田】リングでトークをするっていうのは、ほとんどないですね。いつも人を殴ったりして、闘いはやっているけど。
【霜村】会場の皆さんはすごく楽しみにきょうを迎えています。まず２人に質問ですが、プロレスに出合ったきっかけ、またプロレスラーを目指したきっかけを教えてください。
【エイジ】僕の場合は、子どもの頃から、父と弟と一緒に、プロレスが来ると必ず（大分市にあった）荷揚町体育館に行ってたんですね。そこでプロレスに出合ったと言っても過言ではないです。
大仁田さんがチャボ・ゲレロ選手（１９７０年代から１９８０年代に活躍したレスラー）と闘っていた時代です。当時は、大仁田さんの体が小さく見えていましたが、実際に会うとでかいんです。（大仁田さんが所属していた）全日本プロレスには大きな選手が多かったから、そう見えたんだなと思います。
プロレスラーになることが夢で、かなえられました。あと、こうやって一緒にいることが、非常に感慨深いです。
【霜村】大仁田さんはどうですか。
【大仁田】僕はですね、長崎の生まれなんですけど、中学を出て「なんかやろうかな」って思って、リュックサックを背負って長崎県庁前から歩き出したんですよ。日本全国を歩こうと思って。そこが始まりでしたね。それで、何でプロレスラーになりたかったのかと言うと、世界中を回れるんですよ。試合とかで。２５カ国ぐらい回りましたよ。いまだにアメリカから呼ばれたりしています。一応レジェンドですから。
【霜村】プロレスラーに憧れて、ということではないんですね。
【大仁田】人に憧れるとか、そういうのがないんですよ。ただ、ジャイアント馬場さんは違った。馬場さんのすごさは、人間味なんですね。そこにひかれました。僕は付き人をやっていたんですけど、たまに馬場さんはパンツにウンコが付いているんですよ。大きいから後ろに手が回らないことがあってね。そんなときは一生懸命、洗っていたんです。不思議なことに、その人を好きになると、そんなことが嫌だとは思わなくなるんです。
■情熱やエネルギーを好きなことに当てろ
【霜村】馬場さんのすべてを受け入れているという印象があります。エイジさんとの出会いはどんな感じだったのですか。
【大仁田】大分の街を歩いていたら、マスクかぶったやつが歩いてくるんですよ。それで「おい、そのマスク、お前プロレスラーか」って言ったんです。そしたら「はーい、そうです」ってね。そんなもんです。
【エイジ】僕の印象はだいぶ違うんですけど、大仁田さんからすると、そんな感じだったんでしょうね。
僕は東京に１７年ぐらい住んでいたんですけど、大仁田さんの団体「ＦＭＷ」が川崎球場（神奈川県川崎市）ですごい大会をしていたんですよ。そこにいつも見に行っていました。ＦＭＷはおもちゃ箱をひっくり返したような団体で、デスマッチ、女子、異種格闘技と、いろんな形式の試合をやってました。あのときの思い出がすごく強いんですよね。そして去年、大仁田さんがデビュー５０周年を迎えて、川崎球場での記念大会に呼んでいただきました。
【大仁田】やっぱり好きなんでしょうね。人間は、好きじゃないと続かないですよ。５０年もやるなんてまったく思わなかったですけど、やってんだなぁって。
【霜村】まだまだ記録を更新されていくわけですね。大仁田さんがここまで頑張れる原動力は何ですか。
【大仁田】やっぱり好きであることじゃないですか。情熱やエネルギーを好きなことに当てないとね。金もうけに走る人はいるけれども、お金を追いかけてばかりだと、つまらない人生になっちゃうから。夢を追いかけるのって、すごく楽しいじゃないですか。
■体内にチタン、縫った傷は１６００針
【霜村】なんか深くてグッとくるものがあります。
【大仁田】僕は血だらけで闘っているイメージがあると思うんですけれど、その中には、ものすごく繊細なヒューマニズムが存在しないとだめなんですよ。どんなにやられても立ち上がってくる。そういったエネルギーを見ている人に感じてもらうというね。
【エイジ】まさにプロレスってそうなんです。非現実的なことを、覆面かぶったオジさんとかがやっているわけですよ。それを見て、明日への糧とかパワーに変えてもらうということが、われわれの最大の仕事だと思います。こんなに痛いことをやっているわけですよ。普通じゃ考えられないですもんね。
【大仁田】だってね、僕はね人工関節ですよ。二つ。ここ（膝）にチタンが入ってるでしょう。あばらにもチタンが入ってるんですよ。火葬されたときにどれだけ金属が出てくるかというね（笑）。
【エイジ】改造人間ですね。
【大仁田】なに言ってんだよ（笑）。
【エイジ】それから（有刺鉄線などの傷で）何千針って縫ってますよね。
【大仁田】１６００針くらいじゃないかな。
【エイジ】想像がつかないですね。
【大仁田】僕は気管切開もしてますからね。７０％死にますよって言われたんですよ。あるとき鹿児島で倒れたんです。そこに抗生剤の効くやつがあって「これが効かなかったら死にますよ」って言われました。その抗生剤が効いたんです。それで生きられている。
野球にかけている人、サッカーにかけている人、柔道にかけてる人。いろんな人がいます。はた目で見ると、「あの人、ばかみたいに一生懸命やってんな」って思えるんだけど、やっぱり自分が好きなことなら、一生懸命やれるもんです。
エイジも好きなんでしょう。いまだに覆面をかぶってやっているんですよ。エイジが何歳か聞いたことないんですけどね。
【エイジ】あのぅ、１万５６歳です。
【大仁田】なに言ってんだよ（笑）。確かに僕もマスクマン（覆面レスラー）に憧れましたけどね。エイジは、ずーっとかぶってんでしょ。お風呂に入るときも、トイレに行くときも。
【エイジ】はい。皮膚ですから（笑）。
【大仁田】僕はエイジの顔を知らないんですよ。だって控室でも、絶対にマスクを脱がないんです。マスクマンって変ですよ。ミルマスカラスっていうレスラーがいますが、かぶっているマスクを脱いで、次のマスクをね、うまくかぶり直すんですよ。絶対に素顔を見せない。
【エイジ】そうです。謎ですから。謎は謎のままで。
【大仁田】うーん。俺は嫌ですね（笑）。だって顔を知らないんだよ。知らないから、エイジが素顔で歩いていても、俺は素通りだよ（笑）。
■「この野郎」とカチンときて４０歳で高校進学
【霜村】先ほど馬場さんの名前が出てきましたが、強く印象に残っている出来事ってありますか。
【大仁田】俺、付き人だったじゃん。馬場さんがトイレに入ると、俺はタオルとか持って待ってるわけ。そして馬場さんが出てくるときに俺に「流しとけ」って言うんだよ（笑）。しょうがないから、便器の中を見たら、そこに“馬場”がいるんだよ（笑）。すごいんだよ。身長が２メートル９センチあって、体重は１４５キロだよ。でかいんだよ（笑）。
流しとけって言われても“馬場”は動かない。しょうがないから、割りばしで“馬場”をつついて“小馬場”にしてね（笑）
（馬場さんの話ではないけれど）印象深いことがある。人生って一回限りだから、そのときにやりたいことをやってるんです。俺、高校に講演会に行ったんですよ。そしたら生徒から「大仁田さん、高校は行ってないんですよね」って言われたんだよ。それがカチンときましてね。この野郎と思いまして、高校に行っちゃったんですよね。４０歳で。
僕の弟は大学の教授なんです（場内驚きの声）。僕にはその血が流れていないと言えるんですけれども。それで、高校に行ったら、大学に行かなきゃいけない気がするじゃないですか。それで大学にも行ったんです。流れで行っちゃったんです。
【霜村】きょうは子どもたちもプロレスを楽しみにしていて、先ほどプロレス教室でスクワットとかやってましたね。
【大仁田】今回は試合で呼ばれていると思ったんですよ。そしたら「いやいやトークショーです」て言うんだよ。こんな大仁田のトークショーなんか聞きたくないよねぇ。
【エイジ】そんなことないですよ。聞きたいですよねぇ、皆さん（会場拍手）。
【少しうれしそうな大仁田】僕はよく乱暴者だと言われて「大仁田さんて怖いんでしょう」って言われますけど、私生活で怖いわけないじゃないですか。
プロレスは全体的にいい時代ではないと思う。だけど、エイジのように地方で一生懸命に選手を育て、県内を回って試合をしているというのは、僕は素晴らしいと思う。さっきのキッズプロレス教室ですけど、ああいうのは、大人になっても記憶に残るんですよ。またリング（の感触）を体験したい、プロレスラーになりたいって思えるね、地道な活動をエイジはしているわけですよ。
■古希を迎えたらやってやる「電流爆破デスマッチ」
【霜村】エイジさん、地元大分への思いを聞かせてください。
【エイジ】プロレスを通じて地域貢献をしたいというのが、もともとあったんです。ＦＴＯは旗揚げ２０年以上になりますけれども、災害が起きたら復興支援をしたり、子どもたちとのふれあいとか、高齢者施設を訪問したりとか、いろんなことを変わらずやっています。ローカル団体ができることを一生懸命やっていく。ただプロレスをやっているだけではなくて、みんなに親しまれて、そして共感を得られるよう、そういった団体をまだまだ目指してこうと思います。
【霜村】大仁田さん。今後の目標と、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
【大仁田】この間、大動脈瘤（りゅう）になったんです。これは、ほとんど分からない病気なんです。健康診断でエコー検査したんですけれども、そのときに発見したんですよ。「これ、破裂したら死にますよ」って言われたんですけど、４試合残ってたんです。これはしょうがない。馬場さんに教えられたんですけど、試合が組まれた以上は、リングに上がるべきだと。それで、４試合はちゃんとやって、手術したんです。本当に簡単な検査ですから。同年代の方、そしてエイジもしておいた方がいい。
【エイジ】そういう状態でいろんなことをクリアしながら、今後はどこまで行かれますか。
【大仁田】７０歳までやろうかと思って。「古希電流爆破デスマッチ」やるよ（場内に歓声）。
【霜村】楽しみですね。
【大仁田】いやいや、楽しくはないよ。
【エイジ】いやいやいや、楽しいでしょ。
【大仁田】やっぱり目標意識を持ちたいですね。まだ何でもやりたいって思ってます。これまで大河ドラマもやったしね。一応、国会議員もやってね。高市さんが首相になって良かったなって思ってますよ。まぁ、地味にやっていきます。
【エイジ・霜村】そろそろ時間ということで、ありがとうございました。ところがですよ、今日はなんと、大仁田厚さん、（６８歳の）ハッピーバースデーです。（会場にバースデーソングが流れ、大仁田がケーキのろうそくを吹き消す。場内拍手）。
【大仁田】うれしいねえ。豊後高田で誕生日を迎えられて。皆さん、どうもありがとうございました。
