立命館アジア太平洋大で講義する大分デバイステクノロジーの安部征吾社長=別府市
【別府】立命館アジア太平洋大(APU)は今夏、半導体産業への就職に向けて学生を後押しする新機軸を展開している。第1弾となるプログラムは、業界関係者による講義と工場視察がメイン。理系学部はないものの、国際展開する関連企業から需要があるとみている。
APUによると、学部、大学院ともに理系分野はなく、半導体関連の教育は初めて。県内中心に約15の関連企業・団体の協力を得て今回の課外プログラム(7~9月)が実現した。
5日に学内であった座学には学生約10人が出席。経営者らが講師を務め、半導体の用途や製造工程、産業構造、国際市場の動向などを動画やイラストを交えて説明した。
産官学でつくる県LSIクラスター形成推進会議の矢野勇事務局長は、海外企業との商談、製品マニュアルの翻訳など文系学生へのニーズがある状況を紹介。「理工系でなくても語学力が重宝される」と話した。半導体設計・製造「大分デバイステクノロジー」(大分市野津原)の安部征吾社長は「皆さんには国際感覚やベンチャー精神もある」と期待感を伝えた。
25日からは県内外でルネサスエレクトロニクス、日出ハイテックといった半導体関連企業を見学する。半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が進出する熊本県菊陽町の役場も訪ねる。
APUは7月に台湾の国立陽明交通大と協定を結んだ。半導体関連の教育に強く、連携してハイテク分野での「多文化マネジメント人材」育成を図る。共同研究などを予定している。
プログラム担当の国際経営学部・藤田正典教授(工学)は「APU生は半導体産業で活躍できる力があるが、なじみがなくて就職先に想定してこなかった」と指摘。「業界とのウィンウィンを念頭に次の一手を進めたい」と話す。
半導体はスマートフォンや自動車など幅広い製品に使われる。関連市場は大きく、九州は国内生産が集積する「シリコンアイランド」と呼ばれている。