看護師に笑顔を向ける房前璃子ちゃん=別府市の保育所
【別府】人工呼吸器などを日常的に必要とする「医療的ケア児」を支援しようと別府市は本年度から、保育所や学校に看護師を派遣する事業を始めた。子どもたちの教育機会を確保することなどが狙い。保護者は負担軽減が図られ、付き添いをしなくても子どもが学校生活などを送れるようになった。同様の事業は大分市などでも実施している。
対象施設は別府市内の認可保育所、幼稚園、認定こども園、市立の小・中学校。訪問看護事業所の看護師が各所に出向き、たんの吸引や人工呼吸器の管理、経管栄養などのケアを担う。支援時間は保育所などが1日当たり11時間以内、学校は8時間以内。
支援事業に際して市と市教委は本年度、計1312万3千円の予算を確保した。保護者は必要な物品以外の負担はない。
県の昨年6月時点の調査によると、市内の医療的ケア児は58人。今回の支援事業を利用しているのは今月27日時点で数人にとどまる。
市子育て支援課は「通園の選択肢が広がったのではないかと思う。保護者への周知に努めたい」、市教委学校教育課は「市の関係部署と連携し、切れ目のないサポートを提供したい」と話している。
■「子どもや家族にとって励みに」
医療的ケア児は医学の進歩を背景に増加傾向にある。保育所や学校に通うには、多くの地域で保護者の付き添いが欠かせず、過重な負担になっていた。2021年に医療的ケア児支援法が施行され、行政の支援が努力義務から責務となり明文化された。
別府市の保育所に通所する6歳の房前璃子ちゃんは同市が本年度から始めた支援事業を利用する一人。導尿のケアが必要で、看護師が1日1回園に赴く。
これまでは日数に限りのある市のレスパイトケア事業を活用したり、祖母が付き添ったりしていた。
母親の育代さん(44)は公務員としてフルタイムで働いている。「母が大変で申し訳なく思っていた。自費で訪問看護サービスを利用するにしても経済的に限界がある。働くことを諦めている保護者もおり、今回の支援事業は子どもや家族にとって励みになる」と語った。