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「食育宣言」から20年。キッコーマンが紡ぎ続ける「おいしい記憶」

2005年、キッコーマングループが食に携わる企業の責任として全社をあげて食育に取り組むことを宣言してから20年。コーポレートスローガン「おいしい記憶をつくりたい。」に込めた想い、社員の手でつくり上げた出前授業「キッコーマンしょうゆ塾」のエピソードをそれぞれ当時のリーダーに聞きました。

情報・知識だけでなく体験も提供したい キッコーマンが食育に取り組む理由

今から20年前の2005年6月に「食育基本法」が成立しました。その背景にあったのは、栄養の偏りや生活習慣病の増加、子どもの朝食欠食や孤食など「食」に関する問題点が顕在化したこと。学校法人服部学園 服部栄養専門学校校長(当時)の故・服部幸應先生が中心となって政府に働きかけ、2004年3月に国会に法案が提出され審議されていました。


キッコーマンもそうした現状に課題を感じ、2004年に全社横断の「食育プロジェクト」を発足。食に携わる企業の責任として自分たちに何ができるかを真剣に議論していました。そして、2005年5月に「食育宣言」を公表しました。

2005年の「食育宣言」(新聞広告)


食育プロジェクトのリーダーの大津山厚(現・キッコーマン株式会社 執行役員 経営企画室 コーポレート政策推進担当部長)は、当時をこう振り返ります。


「プロジェクトメンバーが隔週で集まって、朝食の重要性、孤食・個食の問題、食とコミュニケーションの関係、食文化の継承、生活習慣病予防と日本型食生活……さまざまなテーマを深掘りし、熱く議論していました。その中で、外部の意見を参考にするため、プロジェクト初期に講師に招いた内閣府食育推進室の方から“企業に求めるものは体験です”という発言がありました。そこで『私たちは昔から工場見学を受けいれています』と答えると、『見学はガラス越しですよね。それは記憶に残りますか?』と言われました。それが体験型工場見学プログラムの立案・実施に繋がりました」

当時、食育プロジェクトリーダーを務めていた大津山厚

(現・キッコーマン株式会社 執行役員 経営企画室 コーポレート政策推進担当部長)


その後もプロジェクトでは食育の方向性、具体的実践について議論を重ね、キッコーマンの食育を「健やかで楽しい食生活をおくるために役立つ『食』に関わる情報・知識・体験を提供すること」と定義しました。そして、食育理念・3つの願い(食・食育へのキッコーマンの想い)、具体的な食育活動からなる食育体系を構築し、食育に取り組む企業姿勢を「食育宣言」として社内外に表明しました。

キッコーマンの食育体系


「食育理念・3つの願い」には、プロジェクトメンバーの想いが込められています。一つ目『食でこころをいっぱいに』については、当時はまだ“こころ”に言及する企業は少なかったと思いますが、食とコミュニケーションの関係を議論する中で大切な要素だと考えました。二つ目の『食でからだを大切に』は、栄養バランスにすぐれた食生活を提案することを念頭においた食育の重要な目的であり、三つ目の『食で地球のみんなをしあわせに』は、世界100以上の国と地域でビジネスを展開し、食文化の国際交流を実践している当社グループならではの願いです。


食育宣言には具体的に実践するプログラムの内容も盛り込んでおります。プログラムの代表的なものに体験型工場見学と出前授業があります。小学校向けのしょうゆづくり体験コースでは、原料に触れ、しょうゆづくりの「こうじ」を盛り込む作業や圧搾などを体験し、最後は素焼きのおせんべいにしょうゆを塗って食べる内容に。試験的に実施したところ大好評で、定番コースになりました。


一般の方向けの工場見学ではカップルが来て、併設のカフェで、おいしそうにしょうゆソフトクリームを味わっている様子を見てびっくりしましたね。従来の工場見学にはなかった風景ですから。子どもだけでなく大人にも、記憶に残る体験を提供できているのではと思います」

しょうゆソフトクリームは子どもにも大人にも大人気

コーポレースローガン「おいしい記憶をつくりたい。」に込めた想い

さらに、この食育宣言に伴い、食育スローガン「おいしい記憶をつくりたい。」を策定しました。キッコーマンが提供する「食」に関わる情報・知識・体験を通じて、世界中の人びと、一人ひとりにとって多くの「おいしい記憶」を積み重ねていただきたいという願いと、それをお手伝いしていきたいという想いが込められています。

食育スローガン「おいしい記憶をつくりたい。」は、2008年にコーポレートスローガンに昇格しています。


社員が誰でもしょうゆ博士に 出前授業「キッコーマンしょうゆ塾」

2005年以降、食育活動として出前授業「キッコーマンしょうゆ塾」をスタート。その後、「デルモンテトマト塾」、「マンジョウみりん塾」「キッコーマン豆乳講座」も展開しました。「キッコーマンしょうゆ塾」は、コロナ禍で対面授業が叶わなかった時期もオンラインで継続し、現在もニーズに合わせて対面、オンラインで実施しています。また工場見学も、野田、高砂、北海道のしょうゆ工場に加え、マンズワインのワイナリーでも受け入れています。


さまざまな活動の中でも、キッコーマンならではの活動が、出前授業「キッコーマンしょうゆ塾」です。20年前に「キッコーマンしょうゆ塾」の立ち上げを担当した深澤晴彦(現・キッコーマン株式会社 常勤監査役)は、当時のワクワクした気持ちを思い出しながら、経緯を語ります。


「出前授業を始めるにあたって、まずは社内各部署の専門家たちが当時社内外で講義を行っていたコンテンツを『KIKKOMAN ACADEMY』というプログラムに再構築しました。しかし問題は、小学生を対象とした講義をできる人が誰もいなかったこと。最も食について興味を持ってほしい小学生に情報発信ができないという壁に当たりました。小学生に「しょうゆ」のことを知ってもらう授業をするためには別のアプローチが必要だと考える一方で、ある役員が『キッコーマンの社員だったら、しょうゆの話を1時間くらいできるようにならないと』と言っていたことを思い出し、社員が誰でも会社やしょうゆに誇りを感じながら、気軽に参加できるプログラムをつくろうと考えました。それが『キッコーマンしょうゆ塾』です」

「キッコーマンしょうゆ塾」の立ち上げを担当した深澤晴彦

(現・キッコーマン株式会社 常勤監査役)


誰も経験したことがない挑戦だったため、最初は外部の研修会社に相談。しかし、できあがってきた台本が、子どもの興味をひく派手な衣装を身につけるなど、社員に同意を得ることが現実的でなく、それ以前にしょうゆについて伝えたいことが全く足りていなかったため、改めて自分たちでシナリオをつくることに。


「製造担当、マーケティング担当などと相談しながら、子どもたちに伝えたいことを盛り込み、しょうゆについて学びながら、同時に、“みんなで楽しく食べること”、その大切さを考えてもらえる内容にしました。言い回しは、当時小学4年生だった娘に聞かせて、分からない言葉を教えてもらってブラッシュアップしました」


シナリオが完成し、社員から講師を公募したところ、想定を超える約100人の社員が応募。話し方の専門家による講師養成講座を実施し、大勢のしょうゆ博士が誕生しました。


「食育の理念には共感するものの、実際どうやって自分がこの食育活動を具現化できるかわからなかった社員にとって、直接子どもたちに語りかける機会が得られることは、正に渡りに船だったのではないでしょうか。会社を通じて社会に貢献したいと思っている社員がたくさんいたことが本当にうれしく、心強く思いました」


当初、出前授業先は、プロジェクトメンバーとつながりのある学校に声を掛けたり、教育委員会に働きかけたりするなど、草の根で開拓しました。協力者が増え、評判が評判を呼び、20年間で延べ10万人以上の子どもたちに授業を行いました

2005年に行った初めての出前授業(岐阜県羽島市立小熊小学校)


多くの小学校では、「キッコーマンしょうゆ塾」の受講後に、さらに大豆について調べたり、大豆を育てたりと活動を広げています。文化祭で「しょうゆ工場に行く」という創作劇の上演やオリジナルのしょうゆレシピを展示する学校もありました。


「しょうゆ博士になれたことは、仕事を超えた幸せであり、生き甲斐になりました。『キッコーマンしょうゆ塾』を通して子どもたちから温かい気持ちをいただき、“なぜこの会社に入ってきたのか”という入社時の気持ちを思い出し、キッコーマンの社員であることを誇りに思うことができました。」これは参加した社員共通の想いです。

社会課題の解決につながる「食育」健やかで楽しい食生活の一助に

大津山は、食を通じたコミュニケーションの輪が広がることは、こころとからだの健康に繋がり、社会課題解決の一助になると言います。「これからも世界中の人びとの『おいしい記憶』が積み重ねられるよう、さまざまな活動、コミュニケーションに注力していきたいと考えています。」


キッコーマンの食育活動

現在も継続中の食育活動の一例を紹介します。


出前授業「キッコーマンしょうゆ塾」(学校訪問)

20年間、時代の変化に合わせて内容を変えながら実施。社内公募で手を挙げた社員が「しょうゆ博士」になり、しょうゆのつくり方とそのパワー、食事をおいしくすることについて、クイズや体験を交えた学習を進行します。小学校3〜4年生が主な対象です。


出前授業「キッコーマンしょうゆ塾」(オンライン)

コロナ禍で始めたオンライン授業も継続。出前授業(学校訪問)と同じ内容をお届けします。インターネットが接続できる環境であれば、小学校3〜4年生を対象に、全国どこでも実施できます。


プロ学「しょうゆ塾」(オンライン)

静岡大学教育学部発のベンチャー企業である、一般社団法人「プロフェッショナルをすべての学校に」と協働し、子どもの「キャリア教育格差」の縮小に向けた取り組みとして、地方の中山間地域や離島の小学校での遠隔授業を実施しています。


●出前授業「みりん塾」

千葉県流山市の小学生を対象に、流山キッコーマンの社員による「みりん塾」を実施しています。マンジョウみりんの歴史やみりんのつくり方を、クイズやしぼり粕の香りを嗅いだりする体験を通じて学びます。


工場見学・しょうゆづくり体験コース(小学校対象、野田・高砂工場のみ)

小学校を対象に、実際にしょうゆづくりを体験できる見学コースを用意しています。しょうゆづくり体験の後、おせんべいにしょうゆを塗って味を確かめることができます。


工場見学・まめカフェ

野田工場のもの知りしょうゆ館の見学コースに、おいしい記憶を体験できる「まめカフェ」を併設。しょうゆソフトクリームなどを提供しています。

キッコーマン コーポレートブランドサイト「おいしい記憶」をリニューアル

食育活動20年の集大成として、さまざまな「おいしい記憶」を共有し、コミュニケーションの輪を広げていくことをめざし、コーポレートブランドサイト「おいしい記憶」をリニューアルしました。

藤井隆さんがMC、吉竹史さんが進行役を務めるドキュメンタリーエンターテインメント番組「おいしい記憶きかせてください」、ショートドラマ「もしも、この国にしょうゆがなかったら」などの動画や、「おいしい記憶」をテーマにしたフォトコンテストやエッセー・作文コンテスト入賞作品など、「おいしい記憶」を、観たり、読んだり、聴いたり、さまざまなかたちでお届けしています。


キッコーマン コーポレートブランドサイト「おいしい記憶」




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