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移住者開業で新風  グリーンツーリズム

 国東市のグリーンツーリズム(GT)に新しい風が吹いている。代々の田畑を守るリタイア世帯といった従来のイメージを覆し、移住世帯による開業が相次ぐ。事業を担う市観光協会によると、過去3年間に開設した5軒中、4軒が該当。新たな潮流になるか、関係者は期待を寄せている。 (中谷悠人)
 国東町小原の小玉宏さん(46)、美香さん(52)夫婦は昨春、大分市から移り住んだばかり。明治時代の建築という空き家を改修し、田畑で米や野菜を作り始めた。2人とも農村暮らしの初心者だが、移住1周年の今春、「たまちゃんファーム」を開業した。
 一足先に始めた先輩移住者に話を聞き、興味を持った。宏さんは元中学校教諭で、現在は講演活動などが収入源。美香さんは元塾講師。副収入としての期待もあった。布団や新しい車を用意したが開業手続きは簡単で、「移住に比べれば大したハードルではなかった」と口をそろえる。
 受け入れるのは中学生。アンケートで最も楽しかったことが「用水路の掃除」だったと知り、特別な体験を用意する必要はないと気付いた。美香さんは「いつもと違う環境に置かれた生徒は何でも新鮮に受け止めてくれるみたい」。10月上旬のある日は、小型耕運機で畑をすき返す作業や、育苗トレーに冬野菜の種をまく作業を体験させた。
 宏さんは「生徒たちは未来そのもの。土に触れて成長していく過程に携われ、なおかつお金も頂けるなんて」とGTの魅力を語る。美香さんも「子どもが独立した今、生徒たちが訪れると生活に張りが出る。大切にしている食について話す機会にもなり、生き方の確認ができる」とほほ笑む。
 広島県から移住した広島大名誉教授井関和夫さん(68)、けい子さん(64)夫婦も今春、「木もれび山荘」(同町来浦)を開業し、中学生を受け入れる。和夫さんは「自分たちなりの地域貢献。にぎやかな子どもたちの声が活性化につながればと思う」と話す。
 国東市観光協会の高瀬道信・GT担当部長(52)は「移住者は若かったり、農業経験がなかったりするが故に既存の受け入れ家庭とは違う視点を持っている。インバウンド(訪日外国人観光客)対策など変化を求められる今、新しい発想を出してくれるのではと期待している」と話している。 

高齢化が背景 廃業も増える
 移住者による開業が歓迎される背景には、曲がり角に立つGT事業の現状がある。2005年度の開始から10年余りが経過。これまでの受け入れ家庭が高齢化して引退し始めたためだ。
 国東市観光協会によると、14年度の35軒を境に減少に転じ、翌年から34軒、28軒と推移。17年度は10月末現在で27軒に落ちた。開業もあるが廃業の数が上回る。受け入れ家庭は70代前後の夫婦が多く、どちらかが体調を崩すなどして廃業してしまうという。
 「海の見える家」を長年続けてきた国東町北江の農業吉松章さん(77)、美代子さん(74)夫婦も今秋を最後に引退する。受け入れ前後の「入・退村式」への送迎で、生徒が乗る車のハンドルを握るのが不安になった。大分市内で同じ70代の軽乗用車が病院に突っ込んだ今春の事故を受け、美代子さんは娘に「人さまの子どもを預かって万が一があったらどうするの」と説得されたという。
 GTの普及を先導してきた田中友昭・市観光協会GT事業部会長(72)も「生徒を迎えるのは生きがい。ただ最近は正直、送り出した途端、やれやれと疲れを感じることも」。農業体験を外部委託して取り組む例もあると指摘し、「心の交流に重きを置く国東市は2泊3日付きっきり。負担の大きさも受け入れ家庭減少の一因かもしれない」。
 GTが宇佐市安心院町で誕生したのが1996年。第1世代から次世代への継承は今、全国的な課題になっているという。

東洋大学青木教授 自立した経営が鍵 投資いらぬ環境 活用を
 GTに詳しい青木辰司・東洋大学教授(環境社会学)は世代間継承の鍵に「自立経営」を挙げる。国東市におけるGTの現状を踏まえて話を聞いた。
 教育旅行の落とし穴は、取りあえずカレーライスを出すというようなパターン化された日程消化に陥りがちな点だ。結果として受け入れ家庭は経営センスを磨く機会がなく、旅行会社や学校の意向に合わせて組み立てる「エージェント依存型」「旅行市場対応型」から抜け出せない。自立したビジネスとは言えない。
 農家は人を泊められる家を持ち、野菜が採れる畑がある。GTは本来、投資がいらない魅力的なコミュニティービジネス。一方で若い人は第1世代が築いた“宝”の可能性を評価しておらず、断絶がある。本当にもったいないことだ。
 打開するには教育旅行偏重から脱却し、一般、訪日外国人も受け入れられる態勢を整えるべき。提供するサービスの質を上げ、高級商品化する手もある。現役世代がビジネスとしてやっていけるGTであるかどうか。そこが課題になる。

<メモ>
 国東市のGTは客の大半が北九州市内の公立中学校による2泊3日の体験学習で、春、秋に集中する。一般を合わせた延べ泊数の実績は、熊本・大分地震の影響を受ける前の2015年度で2617泊だった。
※この記事は、11月16日大分合同新聞朝刊11ページに掲載されています。

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