「喧嘩したことないんです」木根尚登が語る、TM NETWORK40年の信頼と再起動の舞台裏

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木根尚登が語る、TM NETWORK40年の信頼と再起動の舞台裏

 昨年デビュー40周年を迎え、積極的な活動を展開し続ける3人組音楽ユニット・TM NETWORK。同ユニットの木根尚登が著した“ドキュメンタリー小説”『電気じかけの予言者たち -再起動編-』(リットーミュージック)が12月1日に発売される。

【集合ショット】タマちゃんとTM NETWORK

 本書は、40年以上もメンバーとして、そして“友”として活動してきた3人の絆と、TM NETWORKという巨大なプロジェクトを動かし、いまも多くの人々を惹きつけるその“組織力”の根幹に迫る一冊だ。

 ミュージシャンでありながら、これまでに『電気じかけの予言者たち』シリーズのほか、多くの著書を執筆している木根に、待望の新刊について話をきいた。

■小室哲哉の引退から復帰、そして“再起動”を描いたドキュメンタリー小説

 『電気じかけの予言者たち -再起動編-』は、2018年の小室哲哉による引退発表から、2021年のTM NETWORKの“再起動”、そして40周年ツアーの完結までがつづられた一冊。木根の記憶、そして空白を埋める想像力を交えて構成された作品だ。

 「ノンフィクションって言い切れるほどの取材はしていないし、かといって完全な創作でもない。映画で言うとドキュメンタリー。“本人たちが振り返っているような本”っていう感じかな」と木根は語る。

 印象的なのは、その文体の軽やかさ。3人の何気ない会話や空気感が、落語のようなテンポでつづられていく。TM NETWORKといえばライブでMCはせず、洗練された世界観を誇るユニットだが「こういう本の中でこそ、ふだん表に出ない“素のTM NETWORK”を伝えたい」という木根の願いもある。

■小室哲哉“引退”の衝撃と、それぞれの思い

 物語の幕開けは、世間を騒がせた小室の“引退宣言”。当時の心境について、木根はこう語る。

「驚きと寂しさはもちろんありました。でも、ショックというより“しょうがないよな”っていう気持ちのほうが大きくて。あれだけの膨大な音楽を作ってきた人だから、もう疲れたのかなって」

 冷静にも見えるその受け止め方の裏には、長年の友情がある。木根と宇都宮隆は小学校からの同級生、小室とは高校時代からの仲だ。

「TM NETWORKって仕事ではあるけど、利害でつながってる関係じゃない。“小室が引退して、これから俺たちどうすればいいの…”なんて全然思わなかった」

 とはいえ、小室のことを気にかけ続けていたのもまた、木根と宇都宮だった。宇都宮は引退後の小室をたびたび食事に誘い、木根も小室の部屋を訪れたり、2人が関わるイベントごとがあればたびたび声をかけた。

 そんな思いやりの積み重ねで小室の復帰、そしてTM NETWORKの再始動が実現した。

「小室さんって、みんなが思ってる以上に孤独なんだと思う。だから、自分たちの存在が少しでも支えになればって思ってた。できる限り、そばにいてあげたかったんだよね」

■木根が語る“小室哲哉という人”

 本書には、そんな小室の“素顔”を感じさせるエピソードがふんだんに盛り込まれている。

 小室の家は「海外の匂いがする」というプチ情報だったり、小室とウーバーイーツでオリジン弁当を注文したというエピソード、衣装選びにあたって木根にはZARAなどを薦めながらも小室はグッチを着ていたというエピソードなど、小室とのエピソードからは“カリスマプロデューサー”のイメージとは異なる魅力が立ち上がってくる。

「小室さんのエピソードには必ず最後に“オチ”がつくんです。狙ってるのかはわからないけど…。“木根がいいリアクションしてくれる”ってわかってるから、無茶振りだったり、ちょっとひどいことも言ってくるんだと思うんですけどね。そういう関係が、もう何十年も変わってない」

■木根がついにギターと向き合った!

 そんな小室は、木根にとって“試練をくれる存在”でもある。

「絶妙なんですよ、いつも。ギリギリ“できそうなライン”の課題をふってくる(笑)。やっぱりプロデューサーなんだなって思います」

 本人みずから“ギタリストではない”と言い続けてきた木根だが、再起動後、かつてないほどギター練習に臨む様子が本書には収められている。

「Get Wildのギターのイントロ、一度も弾いたことなかったんですよ(笑)。ほかのギタリストにお願いしてたから。でも、小室さんが再起動後のツアーでは“ちゃんと弾いて”って言うから、ひたすら練習して。今が人生で一番楽器を練習してます。この年でまだのびしろを感じられてうれしいです」

■ポジティブなリアクションをするということ

 再起動を果たし、40本にもわたるツアーをやり遂げたところで終わる本書だが、本編にはメンバーやスタッフが“揉める”ようなシーンは登場しない。TM NETWORKの3人はこのかた「一度も喧嘩したことがない」という。

「たぶん僕ら、肉食系じゃないから(笑)。誰かがムッとしたとしても、ちょっと言って終わりなんですよ。怒鳴ったり、険悪になったりは絶対にないんです」

 そんなグループ内での“空気の緩衝材”のような役割を果たしているのは紛れもなく木根だ。

「“木根さんはほっとくとなんもしない”とか、“木根さんひまでしょ?”とかよくいじられますけど、当たってるところもありますし(笑)、そういうことを言われても全然気にならないんです。信頼関係があるからこその会話…だと思ってます」

 そんな木根が大切にしているのが「ポジティブなリアクション」だ。木根と小室、宇都宮の実際のLINEのやり取りも本書には多数掲載されている。

「小室さんが新曲を作ったときだったり、ライブの演出の新案を出してきたとき、ウツ(宇都宮)が何かアイデアを出してくれたとき、僕は必ず“いいね”って最初に言うようにしてる。だって、多少の迷いはあるだろうし、その迷いの部分を埋めるのがまわりのポジティブなリアクションだと思ってるから」

■チームビルディングの真髄がここにある

 こういった木根の心配りと同様に、本書にはTM NETWORKという“プロジェクト”に凝縮された、チームビルディングの真髄が詰まっている。

 言葉のキャッチボールのテンポは心地よく、会話はつねにポジティブ。誰かを笑顔にすることを当たり前のように実践する。そして、いざパフォーマンスや制作に入れば、全員が驚くほどプロフェッショナルに取り組み、“楽しむこと”も決して忘れない。

 メンバーだけでなく、長年の信頼で結ばれたスタッフたちもまた、そうした空気を自然に共有している。それがTM NETWORKという“プロジェクト”を40年以上にわたって支え続けてきた確かな理由のひとつなのだと、本書を通してあらためて実感させられる。

 『電気じかけの予言者たち -再起動編-』は、音楽ファンにとってはTM NETWORKの“素顔”に触れる一冊であり、組織やプロジェクトに関わるすべての人にとっては、信頼と尊重が生むチームのあり方を学べる“教科書”のような一冊でもある。チームの在り方に悩んでいるとき、誰かとの関係に立ち止まったとき――ふと思い出して開きたくなる、そんな本かもしれない。

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