東日本大震災の発生から間もなく1年。震災を教訓として、年間企画で大分県内の防災の在り方を検証する。
※大分合同新聞 朝刊社会面 2012(平成24)年3月1日~2013(平成25)年2月19日掲載
10月4日午後2時ごろ、紀伊半島沖を震源とする巨大地震が発生。マグニチュード(M)は推定8・6。西日本の太平洋側は猛烈な揺れと津波に襲われた。 大分県内では杵築市山香が震度6弱、大分、臼杵、竹田が震度5強。津波の高さは佐伯市米水津で8...
「万里の長城」と呼ばれた巨大な防潮堤は崩れ、一部は完全に姿を消した。大津波は住宅をのみ込み、最大で37・9mの高さまで遡上そじょう。住民の4%に当たる184人が死亡・行方不明となった。 岩手...
カーナビのテレビが伝える大津波警報に耳を疑った。「10m? 間違いじゃないの」。避難するなら位牌いはいだけでもと、いったん高台に止めた車に妻と2人の子どもを残して海岸近くの自宅に戻った。数分後、...
「3月11日金曜日」。黒板に記された日付は“あの日”で止まっていた。泥の跡が校舎1階の天井に残る。体育館の床板は水圧で突き破られていた。 宮城県東松島市の浜市小学校。防災マップでは想定浸水域の外にあり、地域の避難所でもあった。「まさか...
まるで野戦病院だった。ロビーは簡易ベッドで埋め尽くされ、薬を求める被災者が特設ブースに列をなした。ヘリポートには次々に患者が運ばれ、着陸を待つヘリコプターが上空を舞い続ける。手の施しようがない数々の遺体は、静かに地下へと安置された。 ...
足元の水は、あっという間に胸まで達し、ついには体が浮き始めた。施設に入所しているお年寄りはほとんどが寝たきりか車椅子の生活。自力では避難できない。「助けなければ」。しかし、津波は容赦なく押し寄せてきた。 東日本大震災で壊滅的な被害を受...
「サイト(発電所)内はがれきが片付き整然となってきた。でも放射線量はほとんど下がっていない」 史上最悪レベルの原子力災害を起こした東京電力福島第1原発。収束作業に従事する大分市出身の40代男性は「現場が危険な状況であることに変わりない...
津波は港湾施設やコンベヤーを破壊し、海岸から約1km先の工場に迫った。自動車が国道を流されてくる。だが、構内は周囲より2~3mほど高く、一部が50cmほど冠水したものの、“心臓部”の主要設備は損壊を免れた。 岩手県釜石市の新日鉄釜石製...
すさまじい威力だった。岩手県陸前高田市の市街地に大津波が襲い掛かった。市庁舎は3階まで水没。JR駅舎は一瞬ではじけた。 地域防災の最前線に立つ消防団員たちは、声の限りに最後まで住民の避難誘導を続けた。犠牲者51人。あまりに大きな代償だ...
大分県内の最大津波高、14・4m――。考えたこともない数字だった。 東海~九州沖の「南海トラフ」で起きる巨大地震。内閣府の有識者検討会は3月末、「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震」の想定を公表した。東日本大震災と同じマグニチュ...
「3・11」は地震学の “ 敗北 ” だった。国内観測史上最大のマグニチュード(M)9・0と10m超の大津波は「全くの想定外」。日本地震学会長を務め、県地域防災計画再検討委員会の有識者会議にも名を連ねる京都大学大学院の平原和朗教授(59)...
「寝ていたら突然、体が浮き上がってね。すぐ家を飛び出した。家は土台の石から外れて1尺(約30cm)ぐらいずれて……」。1975年4月21日未明に起きた県中部地震。九重町寺床の満安ミエ子さん(78)はあの時の恐怖を忘れられない。 震源は...
「海は山の向こう側にあってここからは見えない。津波が来るとは想像していなかっただろう」 田園風景が広がる臼杵市南津留地区。市文化財専門員の菊田徹さん(63)は辺りを見渡し、「被害はそうなかったかもしれないが、1707年の宝永地震では、...
津波の甚大な被害がクローズアップされた東日本大震災。警察庁のまとめでは、死者の9割に当たる1万4,308人が水死とされる(3月6日現在)。一方、圧死などの損傷死は667人、火災による死者は145人。福島県須賀川市ではダムが決壊し、8人が死...
「自分が住む場所の海抜は何メートルか」「津波の避難場所はどこなのか」。東日本大震災をきっかけに、そんな問い合わせが数多く寄せられたという。 国東市で防災業務を担当する総務課総務班。4月から、最新版の「災害ハザードマップ」を市のホームペ...
大津波が東日本を襲った2011年3月11日。県内の沿岸全域にも津波警報が発表され、大分や佐伯など4市で避難勧告が出た。しかし、海に近い大分市三佐の主婦分藤三枝子さん(70)は「ずっと家にいた」という。 警報や勧告はテレビで知ったが「本...
◆ 元大分地方気象台長 花宮広務さん 「誰でも、どこで地震や津波に襲われるか分からない。防災について正しく学び、身を守る知識を身に付けておくことが必要だ」。元大分地方気象台長で県防災アドバイザーの花宮広務さん(64)=由布市挾間...
亀裂が走る道路、砕け散るガラス、家をのみ込む津波。大地震の恐怖をまざまざと見せつけた東日本大震災を受け、大分県内でも防災訓練や講演会が盛んに開かれている。県民の防災意識は高まったのか―。 大分合同新聞は4月、県民100人を対象に「家庭...
体が不規則に揺さぶられた。ユサユサと前後左右に、ドンッと上下に。揺れをこらえようと、固定されたテーブルにしがみついた。 大分市内のイベント会場で1日にあった震動体験。阪神大震災の揺れも再現できる体験車に乗った来場者は「こんなのが本当に...
手をつないだ親子連れ、手押し車のお年寄り、非常用袋を背負い、ヘルメットをかぶった男性。東日本大震災から1年となる3月11日。大分市のこうざき小学校のグラウンドに地域住民が続々と“避難”した。 大津波を想定し、校区内9地区でつくる「こう...
連絡が取れない、無事なのか――。2011年3月11日、日田市日高の冷川豊さん(71)は東京で暮らす公務員の長男(45)の身を案じていた。テレビは大地震の被害を伝えている。通信網はまひし、「携帯電話に何度かけても通じなかった」。 後で知...
「もし地震があったら……と心配だった」。筋交いを入れるなどして耐震化を済ませた客間の壁を見詰め、冨永雅代さん(71)=大分市ふじが丘=は「これで孫が遊びに来ても安心です」と話した。 冨永さん方は建築基準法の耐震基準が大幅に見直された1...
震度6クラス――。家中がガタガタと鳴り響いた。東日本大震災の発生時、宮城県名取市のNPOスタッフ板橋和子さん(45)=大分市出身=は2人の子どもと自宅にいた。「すごく揺れて、電気も消えた。でもお皿一つ割れなかった」 地震対策として「食...
「防災講話で呼び掛けても備蓄をする人はなかなか増えない」。県婦人防火クラブ連合会長で防災士の滝川智代美さん(59)は歯がゆさを感じている。「地震なんて来ない、もし来ても誰かが助けてくれると思っているのでしょうか」 今後予想される南海ト...
「今日はね、この言葉の意味を考えてほしいんだ」 四浦半島の先端にある津久見市越智小学校(2人)、四浦東中学校(4人)。今月5日、避難訓練を前にした小中合同の授業で、社会科の教諭高木修さん(59)が「津波てんでんこ」と書いた紙を広げて見...
大地震が発生。直前に、体育倉庫に入る友達の姿を見た。地震の後は津波に備え避難するよう普段から教えられているが、友達は倉庫で跳び箱などの下敷きになっているかもしれない。「あなたは友達の様子を確認しに行きますか? それとも逃げますか?」 ...
体育館の床に落ちた天井や照明器具、校舎内に散乱したガラス片、倒れた本棚……。東日本大震災では、耐震化された学校の建物内でこうした「非構造部材」が “ 凶器 ” と化した。文部科学省によると、天井材の被害は1,636校、外壁などは968校、...
「震度5強。10、9、8……」。あと何秒で揺れが来るかを知らせる音声、アラームが校内に響き渡る。児童は一斉に机の下に隠れた――。別府市の別府中央小学校(298人)で5月にあった避難訓練のひとこまだ。 県内の学校で初めて導入した緊急地震...
「1人じゃ何にもできない子もいる。私たちがしっかり守らないと」。ゼロ歳児から預かる大分市のキッズアカデミー保育園。園長の山崎法子さん(59)は4月、独自の防災マニュアルをまとめた。 職員の意識を高める研修会の実施や、保護者への対応、園...
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