大分合同新聞社とNHK大分放送局によるメディアミックスの年間企画。農業、教育、福祉、祭りなど住民の生活を共同取材し、大分県の発展を支えてきた中山間地を中心に地域再生の手がかりを探った。
※大分合同新聞 朝刊1面 2001(平成13)年4月7日~12月17日付掲載
ちょうちんをともし、三代銑二さん(64)と村路教明さん(56)が夜道を歩く。2人は上自在区の神輿(みこし)世話人だ。手に持つ紙袋には、川越し祭りで最も重要な「神輿かき(担ぎ)」に渡すふんどしが収められている。 「今年はどうじゃろか。若...
川越し祭り前日の23日、二宮八幡宮と道路ひとつ隔てた秦正善さん(51)方=緒方町原尻区=で、もちつきが始まった。正善さんがきねでつき、義母の足立チヨさん(75)=同町軸丸=が手でこねる。正善さんの妻、政子さん(51)はもち米を蒸す。庭先に...
直会(なおらい)が始まった。11月25日、二宮八幡宮の境内だ。古びた本殿に神楽舞台。酒、さかな、笑い……。荒神が舞い、緒方神楽が続いた。「おやじが作ったんやけど、余ったけん。みんなで食うちもらおうと思ってな。何かせんといかんちゅうことは、...
「もっと獅子(しし)頭を高く上げて。そう、その調子じゃ。だいぶ上達したのう」 宮井寿正さん(75)が高校1年の嶋津央礼君、衛藤幸人君に声を掛けた。緒方町長谷川地区の集会所に笛、太鼓のはやしが響く。「皆、素直に言うことを聞く。孫のようじ...
「懐かしいのう。うちのみこしもここん方が居心地がいいかもしれん」 一宮文士さん(57)=緒方町栗生区=がつぶやいた。みこしは、町中心部の「俚楽(りがく)の郷」に展示している。栗生区は、そこから約五㌔。神社の傷みが激しくなり、みこしを十...
「ハーイ、ミシェル」。三代英輔さん(68)が声を掛けた。ミシェル・トクリーさん(28)=英国出身=が笑顔を見せた。 三代さんは緒方町上自在の農家。川越し祭りでは、みこしの前で、先触れの太鼓をたたく。若いころは、ふんどし1本に白足袋でみ...
たき火から立ち上る煙に朝日が差し込む。11月24日の「緒方三社川越し祭り」の朝、緒方町原尻区の二宮八幡社では、祭りの準備がはじまっていた。私たちNHK大分放送局のスタッフは、1カ月以上にわたって、祭りにかける人々の姿を撮影していた。いよい...
ふんどし1本に白足袋で、みこしを担いだ。担ぎ棒が肩に食い込んだ。裸の男衆と、冬の緒方川を渡る時、恥ずかしさや緊張を感じる余裕はもうなかった。 11月24日、緒方町の「緒方三社川越し祭り」の夜だった。「担いでもいいぞ」と、三宮八幡社の世...
寒い夜だった。11月下旬、緒方町原尻からの帰り道、タクシーの後輪が井路に落ちた。通りがかった近所の若者が「ビール1本な」と笑って、手伝ってくれた。 何度も、原尻を訪れていたが、そんなふうに、住民と話したことはなかった。「緒方三社川越し...
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