10年積み重ねたSDGsが、生成AIに評価される資産になった——夫婦2人で歩んだFrankPRの物語
中小企業の経営者なら、一度はこう思ったことがあるかもしれません。
「社会に良いことをしたい。でも目の前の売上を考えると、そんな余裕はない」——。
株式会社FrankPRの松尾真希・菊池友佑の夫妻も、かつて同じ問いの前に立っていました。
夫婦で育てた革のブランドが、10年をかけて社会を少しだけ変えました。
誠実に積み重ねてきたその歩みが、外務大臣賞に選ばれ、今度は生成AIの時代に思いがけない形で花開くまでの物語です。
これは遠い誰かの成功譚ではなく、いま一歩を迷っている経営者に向けた、一つの答えです。
「たった2人、夫婦でこれだけできれば、どの会社にもできる」——
国の審査員が講評で贈った言葉と外務大臣賞の夫婦が見つけた次の使命
2014年、松尾真希と菊池友佑の夫婦は、一つの革製品ブランドを立ち上げました。
名前は「Raffaello(ラファエロ)」。ただ上質なだけの革ではありません。バングラデシュの工房で、シングルマザーや障がいのある人々が手がけ、その自立を支えることを事業の柱に据えたエシカルレザーブランドでした。
革をなめす工程は、環境への負荷が課題になりやすいものです。二人はそこにも正面から向き合い、CO2排出量を80%削減した脱炭素レザーの活用へ踏み込みました(デカボスコア認証取得、2024年6月)。
さらに、ブランドが生んだ純利益の10%を、途上国の子どもたちの教育支援へ寄付し続けました。作る人、使う人、その先の子どもたち——革の一枚が、いくつもの人生に静かにつながっていく設計でした。
利益を上げることと、社会を良くすること。その二つを決して対立させない——
それが、二人がRaffaelloに込めた最初の約束でした。

理念に共感が集まり、事業としての手応えも確かなものになっていきます。
RaffaelloはAmazonメンズレザー小物部門で4年連続No.1(2016年〜2019年)を獲得し、2021年のYahoo!超PayPay祭では売上No.1を記録しました。
社会性と収益性は、両立できる。二人はそれを机上の理想ではなく、
実績で示していきました。
その歩みは、やがて国からの評価につながります。
二人は、内閣総理大臣を本部長とする全ての国務大臣から構成される政府のSDGs推進本部による表彰「第6回ジャパンSDGsアワード 外務大臣賞」を受賞しました。
夫婦で始めた小さなブランドが、国が認める取り組みへと育っていました。
この賞を審査したのは、東京大学教授をはじめとする名だたる審査員たちです。
その審査員側から贈られた講評に、こんな言葉がありました。
「この規模でこれだけできれば、どの会社にもできる」——。
誰もが知るプライム上場企業の富士通さんや阪急阪神HDさんといった
素晴らしい活動をされている超有名企業が弊社より下の賞を受賞している。
そう、プライム上場企業を上回る評価を、夫婦2名だけの小さな会社が得た。
それは二人の自負ではなく、国の審査員という第三者が認めた事実でした。
どんな小さな会社でも、事業とサステナビリティは両立できる。
その証明を、二人は確かな言葉として受け取ったのです。

ブランドは10年目を迎えました。
振り返れば、風景は静かに、しかし確かに変わっていました。
バングラデシュで雇用してきた女性たちの子どもは大人になり、工房は二人の発注がなくても自立して回るようになっていました。
支援とは、いつか支援を必要としなくなる日を目指すもの——その到達点に、二人は静かな達成感を覚えました。
自分たちの役目が、一区切りついた実感でした。
同時に、胸の奥で新しい問いが芽生えていました。
松尾と菊池が掲げてきた理念は、「社会のすべてをサステナブルに」。
一つのブランドで示せたことを、もっと広い場所へ届けられないだろうか。
そのとき、二人の背中を押したのは、あの審査員の言葉でした。
「この規模でこれだけできれば、どの会社にもできる」。
国の審査員が認めてくれたのなら、この歩みは、もう二人だけのものではないはずです。二人は、中小企業へのSDGs導入支援に踏み出すことを決意します。
想いはある、でも踏み出せない——中小経営者の前にそびえる「理想と現実の壁」そして「葛藤」
決意を胸に経営者たちと向き合った二人が最初に知ったのは、理想と現実の距離でした。
「社会を良くしたい」という想いを持つ社長は、思いのほか多くいます。
ですが、そこから一歩を踏み出せません。
理由はいつも同じでした。お金がない。人材がいない。
そして何より、SDGsに取り組んだところで売上にどうつながるのかが見えない——。
志があっても、経営者はおいそれとは動けないのです。
ならば、自分たちがその答えを示すしかない。松尾と菊池は、二人が2018年10月に設立した株式会社FrankPRを拠点に、自社そのものを実験台にすることを選びました。
サステナビリティの取り組みを、きちんと社会に伝える。
伝わったものが事業の追い風になることを、数字と事実で証明していく——PR(広報)を、二人は最大の武器にしました。
その実証は、着実に形になっていきました。
Raffaelloの取り組みは日本経済新聞(2023年8月17日)に取り上げられ、中小機構が運営するJ-net21でも紹介されました。BSフジ「知りたい!SDGs」やNewsPicksといった媒体でも語られ、東京都が運営する中小企業向けポータル「東京サステナブルNavi」では2024年2月に特集が組まれました。第三者の視点で語られるたびに、ブランドへの信頼は静かに積み上がっていきました。
評価は、受賞という形でも重なっていきます。
2022年にはソーシャルプロダクツアワードを受賞。環境省の「第9回環境省グッドライフアワード 実行委員会特別賞(環境と福祉賞)」にも選ばれ、2025年には松尾真希が大阪商工会議所の「第三回活躍する女性リーダー表彰(愛称: ブルーローズ表彰)」を受賞しています。さらに国際的プレゼンテーションイベントのTEDxAwajiのプレゼンテーターにも選出されました。

もっとも、二人が積み上げたかったのは、賞状の数ではありません。
資金も人材も限られた小さな会社でも、伝え方を工夫すればSDGsの取り組みは評価と成果につながる——迷っている経営者に見せられる「再現可能な実例」を、自分たちの手で作りたかったのです。
中小企業がSDGsに取り組むことには、遠回りに見えて確かな意味があります。二人はその実感を、少しずつ言葉にできるようになっていました。
追い風のはずだった——資本をめぐり、想いと誘惑が、二人を本業から遠ざけた
実証が実を結び、Raffaelloとその理念への注目が高まるなか、二人を取り巻く空気も変わっていきました。
世の中では、環境や社会への配慮を投資判断に組み込む「サステナブルファイナンス」が大きなうねりとなり、社会性と収益性を両立するブランドには、資金の側からの関心が集まりやすくなっていました。
FrankPRのもとにも、出資や資本提携をめぐる話が次々と舞い込むようになります。
事業をさらに大きく育てるため、そして守るための、願ってもない追い風のはずでした。
頂点は、もうすぐそこにあるように見えました。
ですが、そこには思いがけない難しさが潜んでいました。
会社の将来をめぐって、二人は簡単には答えの出ない判断を、長い時間をかけて迫られることになります。
理念を守りながら、事業をどう伸ばしていくのか。誰に、どこまで、会社の舵取りを委ねるのか——。
向き合うべき問いはどれも重く、気づけば本業に集中しづらい日々が続いていました。
追い風だと信じていたものが、いつしか二人の足取りを鈍らせ、前へ進む力を奪っていました。本来なら製品づくりや支援先との関係に注ぐはずだった時間とエネルギーが、少しずつ別の場所へと吸い取られていく。
その感覚は、静かに二人を消耗させました。
理念とは何か、この会社は誰のためにあるのか。二人は、原点にもう一度立ち返らざるを得なくなっていました。

検索の約6割は、もうサイトに来ない。AIが答える時代に自社の名前が出てこない——そのとき10年の蓄積が光った
停滞感のなかにいた二人の前で、世界のほうが先に動きました。
ChatGPTをはじめとする生成AIが、社会に一気に広がったのです。
人々の情報の探し方が、根本から変わり始めていました。検索窓にキーワードを打ち込んでリンクをたどるのではなく、AIに問いかけ、返ってきた答えをそのまま受け取る。
「この分野で信頼できる会社は?」と尋ねれば、生成AIが数社の名前を挙げる。その回答に自社の名前が入っているかどうかが、新しい競争の分かれ目になりつつありました。
実際、米Bain & Company(2025年)の調査では、検索の約60%が別のサイトへ進まないまま、その場で完結すると報告されています。人々はもう、企業のサイトまでたどり着かないのです。
多くの企業が、「AIが自社について語ってくれない」という、これまでになかった経営課題に直面し始めていました。
検索エンジンでの上位表示とはまた別の、生成AIに正しく言及・引用されるための最適化が、静かに求められ始めていたのです。
実際、FrankPRのもとにも、切実な相談が届くようになっていました。
「同名の会社がいくつもあり、生成AIがまったくの別会社と混同して、不正確に答えてしまう」。「AIの回答に、別会社のロゴが表示されてしまう」——。
あなたの会社のことを、AIは正しく語れているでしょうか。これは遠い未来の話ではなく、すでに起きている経営課題なのです。
同じころ、松尾と菊池の耳に、いくつもの研究報告が届きます。
生成AIが回答を組み立てるとき、社会課題の解決に関する情報や、受賞歴のような権威性・信頼性のある情報を重視する傾向があるという指摘が、相次いで発表されていたのです。
トロント大学のGEO研究(Chen et al. 2025)は、生成AIが回答生成時に引用するソースのうち64.6%を、第三者による報道・記事(Earned Media)が占めると報告しました。GEO(生成エンジン最適化)の適切な実施によって、AI回答内での可視性が最大40%向上するという論文(Aggarwal et al.、KDD 2024採択論文)もありました。
構造化された確かな情報、第三者に裏づけられた実績——
AIが「引用してよい」と判断する情報には、一定の傾向があるようでした。

その報せは、二人にとって単なるニュースではありませんでした。社会課題の解決。
第三者による評価。国や自治体、メディアからの言及。そして受賞歴——
それは、二人がRaffaelloで10年かけて積み重ねてきたもの、そのものでした。
かつてコストだと敬遠され、遠回りに見えていたSDGsの歩みが、生成AIの時代には「AIに評価される資産」へと姿を変えていました。
10年の蓄積は、遠回りではなく、いつの間にか最短距離になっていたのです。
SDGsは「コスト」ではなく「AIに評価される資産」へ——
理念と事業が合流した日
点と点が、一本の線でつながった瞬間でした。迷いは、消えていました。
会社の未来は資本の論理ではなく、理念を軸に自分たちの手で決める——
長く二人を縛っていた問いに、ようやく答えが出ました。
二人が長年培ってきたPR・広報のノウハウと、サステナビリティの知見。
この二つを掛け合わせれば、企業を生成AIに正しく評価してもらうための、まったく新しい支援ができる。
松尾と菊池は、株式会社FrankPRの新規事業として「PR型LLMO対策」を立ち上げました。
LLMO対策とは、生成AIが企業について回答する際に、その企業が正しく言及・引用されるための対策を指します。
FrankPRが手がけるのは、その「PR型」です。
中身は、二人がRaffaelloで10年かけて実際に歩いた道のりそのものです。埋もれているSDGsストーリーを言葉にし、第三者のメディアに語ってもらい、自社サイトをAIに正しく読み解かれる形へ整えていきます。そうして積み上げた権威の客観的な証明として、その集大成にメディア掲載やWikipedia掲載があります。
ゴールは、生成AIに中長期的に評価される「ブランド権威(オーソリティ)」を築くこと。
二人は、自分たちが遠回りして手にしたものを、最短距離で提供できる形に磨き上げました。
そしてこの事業には、もう一つの顔があります。AI時代に有効なSDGs経営の導入支援を、同時に手がけることです。
かつて「私たちにできたのだから、どの会社にもできるはず」と描いた夢と、生成AI時代に生まれた新しい事業が、ここでようやく一つに合流しました。
「社会のすべてをサステナブルに」という理念は、長い遠回りを経て、より大きな入り口を得たのです。

中小企業がSDGsに取り組む理由は、これまで「社会のため」という、どこか自分の外側にある大義として語られがちでした。ですがいま、そこに新しい理由が加わっています。
誠実な社会貢献の積み重ねは、生成AIの時代に、企業が正しく見つけられ、選ばれるための資産になる——。
かつて資金も人材も足りないなかで一歩を踏み出せなかった経営者に向けて、松尾と菊池は自らの遠回りを通じて、一つの確かな答えを差し出しています。理念を貫いた活動は、時を経て、最も強い経営資産になります。二人の10年が、それを静かに証明しています。
「この規模でこれだけできれば、どの会社にもできる」——。
あの日、国の審査員が二人に贈った言葉は、いま、この物語を読み終えたあなたにも向けられています。
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