誰もが活躍できる職場へ。聴覚障がいのある従業員との対話で進めるDE&I
2024年から始まる情報交換会やサポートブックで職場改善を加速
竹中工務店(社長:丁野成人)は、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)推進活動の一環として、聴覚に障がいのある従業員との継続的な対話に取り組んでいます。
2024年から開催している「聴覚障がい者情報交換会」を通じて、職場環境の改善を進めてきました。
当社では現在、全国の事業所に聴覚に障がいのある従業員22名が勤務しており、それぞれが安心して活躍できる環境づくりを目指しています。
聴覚障がい者情報交換会(2026年、東京本店)
■背景~対話の始まり
竹中工務店では、「誰もが活躍できる組織でなければ、企業の持続的な成長と革新的な価値創造はできない」という認識のもと、多様性を受け入れられる職場環境づくりに取り組んでいます。
2022年、社内のQCサークル活動(=Quality Control、小集団改善活動)において、ろう者を含むQCサークルから、手話及び代読による「社内コミュニケーション」に関する発表がありました。これを受け、佐々木正人社長(当時)は、「皆さんがより働きやすく、活躍できるよう、できることがあったら、何でもよいので教えて下さい」と呼びかけました。
■当事者からの提案
当社では、1987年にろう者による社内有志の会が設立されました。この会の中心を担ったのは、ろう者として当社初の一級建築士の資格を取得した従業員でした。以来、全国の事業所で働く聴覚に障がいのある従業員は、自発的に社内ネットワークを構築し、業務上の課題や困りごとについて情報交換を行っていました。また、有志による「全店ろう者親睦会」を2017年より実施していました。しかし、こうした活動は、有志によるもので、そこで出ていた意見や要望を、組織全体として受け止める仕組みが十分ではありませんでした。
2024年名古屋でのろう者親睦会の企画の際、「全国で働くろう者・難聴者の声を組織に届けたい」という当事者の想いを受けて、有志による会合から会社主催による「聴覚障がい者情報交換会」へと発展し、名古屋支店で開催されることになりました。
■第1回・第2回情報交換会:当事者の声から改善へ
2024年5月、初めての「聴覚障がい者情報交換会」が名古屋支店で開催されました。ろう者・難聴者の従業員16名が参加し、音声認識と自動翻訳機能を備えたアプリの活用や手話通訳者の協力などによりスムーズな意見交換が行われました。2024年7月に設立された経営企画室DE&I推進部が主体となり、2025年には、広島支店で第2回の情報交換会を開催しました。この2回の情報交換会を通じて、障がい者従業員が、職場での課題や工夫を直接伝える場が実現し、得られた課題は、実際の職場改善につながりました。
「聴覚障がい者情報交換会」(2024年、名古屋支店)
例えば、災害時の館内放送については、従来の音声放送に加えて、teamsチャットやスマートフォンのバイブレーション機能などで通知するようにしました。社員食堂では、口頭による注文から、全員がサイン(指文字)による注文に変更しました。こうした改善は、当事者の声を起点として、当事者・職場・DE&I推進部が一緒に検討を重ねた結果実現したものであり、相互理解のきっかけにもつながりました。
■意見交換会を通じた相互理解への深化
第1回・第2回の成果を踏まえ、2025年10月に新たな試みを実施しました。
聴覚障がい者従業員の声を上司・同僚と共有し、共に働く立場からの意見や工夫を聞く「聴覚障がい者と働く上司・同僚向け意見交換会」の開催です。
筑波技術大学 産業技術学部/共生社会創成学部 教授の河野純大先生をファシリテーターとして迎え、聴覚障がい者と働く上司・同僚20名が参加し、ろう者・難聴者と働く上でのコミュニケーション上の課題などについて共有していきました。
■対話から生まれた「サポートブック」
これらの対話を通じて得られた双方の声をもとに、「聴覚に障がいのある方と一緒に働く人へのサポートブック」(A5判、全30ページ)を2026年4月に発行し、聴覚障がい者と一緒に働く従業員に配布しました。
このサポートブックは、障がいの有無にかかわらず、職場全体が同じゴールに向かうために、必要な知識とコミュニケーション方法を理解し、関わり方を一緒に話し合いながら工夫していくことを目的としています。当事者編と上長・同僚篇で構成され、双方が同じ目線で関わり方を工夫していくための手引きとなります。
従業員からは「サポートブックのおかげで手話を少しずつ覚えている。」「新しいメンバーが来た時には内容を共有できるので便利」という声が寄せられ、職場での活用も見受けられました。

■第3回情報交換会:成果の検証と改善へ
2026年9月4日、第3回「聴覚障がい者情報交換会」を開催しました。
第1、2回は、半日の開催でしたが1日開催へと拡大し、初めて東京本店での開催となりました。この開催形式の拡大は、過去2回の参加者からの「より充実した意見交換をしたい」という提案に基づくものです。参加者は、全国で働くろう者・難聴者20名、DE&I推進部、人事室、各本支店の人事・管理部門のメンバー11名のほか、社外からは、コミュニケーションツールを開発した企業、筑波技術大学の河野先生、手話通訳者が参加しました。
情報交換会では、最先端のコミュニケーションツールの紹介と聴覚障がいを持つ従業員が開発に関わった、スマートグラスを用いたスライド資料を手話と音声で同時に伝えるツールの紹介、河野先生による「協働のためのヒント」に関する講義が行われました。
河野先生による講義
交換会の最後には、「聴覚に障がいのある方と一緒に働く人へのサポートブック」の活用状況が共有されました。ろう者と難聴者の双方の視点から、手話表現の実現性や追加すべき表現、手話以外のコミュニケーションについて、またサポートブックの内容充実度や不足している部分についてグループディスカッションを行いました。
参加者からは、
「事務局だけではなく当事者も中心となって動いている様子がうかがえ、誰でも主役になれると少しずつ勇気をいただけるようなプログラムが多く、モチベーションが上がったと感じる」(ろう者・難聴者従業員)
「河野先生の講義から、自分にとって当たり前の感覚や経験ほど言語化することは難しく、それぞれの立場や特性を理解するためには、まずその前提に気付くことが重要だと改めて感じました」(ろう者・難聴者従業員)
といった声が寄せられ、概ね好評でした。
「若手の出番や発言機会をもう少し増やして、発信する経験を積むことで自信につながり、人材育成の観点からも有意義な機会としたい」
といった課題も明らかになり、今後の改善へ向けた検討が進められています。
グループディスカッションの様子
ここでの討議内容は、今後のサポートブック改版や職場環境のさらなる改善に向けて、活用されていく予定です。
当社は、共に働く仲間同士が相互に理解し、支えあうことを大切にしています。一人ひとりの働きやすさと働きがいを高め、組織としての成果を向上させられるよう今後も継続した取り組みを推進していきます。
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