【開発秘話】バッファローが挑んだ「半固体モバイルバッテリー」。燃えにくい、の先へ。

スマートフォンとともに、毎日のように持ち歩かれるモバイルバッテリー。便利さが当たり前になる一方、発煙や発火のニュースをきっかけに、その安全性を気にする人も増えています。バッファローが発売した「半固体モバイルバッテリー」は、そうした不安に技術と検証の両面から向き合い、「大切な家族や子どもにも安心して持たせられるものをつくりたい」という思いから生まれました。
開発チームが追求したのは、単に「燃えにくい電池」を採用することではありません。燃えにくいからこそ見過ごされるリスクはないか。新しい技術を、お客様にどのような根拠を持って届けるべきか。一つひとつの疑問に向き合い、第三者機関とともに独自の検証を重ねました。企画から販売後までの歩みを振り返りながら、半固体モバイルバッテリーの開発の舞台裏をご紹介します。
モバイルバッテリーを「便利さ」だけで選べない時代に
スマートフォンが生活のインフラとなった現在、モバイルバッテリーもまた、外出時に欠かせない存在になりました。通勤や通学、出張、旅行、災害への備え。年齢や職業を問わず、多くの方が日常的に持ち歩いています。その一方で、発煙や発火に関するニュースを目にする機会も増え、「毎日使うものだからこそ、安全性が気になる」という声が聞かれるようになりました。
バッファローの独自調査(全国の15歳以上69歳以下の男女360名が回答・2025年10月実施)によると、モバイルバッテリーの所持率は52%と半数を超過。約9割がバッテリーによる発火・爆発事故のニュースを見聞きしており、全体の約8割が”モバイルバッテリーの安全性に不安を感じる”と回答しました。
「便利だけれど、少し不安」という声に、メーカーとしてどう向き合うか。その問いから生まれたのが、一般的な液系リチウムイオン電池と比較して発火リスク低減が期待される次世代技術「半固体電解質」を採用した「半固体モバイルバッテリー」です。

「半固体だから安全」と、すぐには判断しない。カタログスペックを疑う技術者の視点
半固体電池は、電解質を液体ではなくゲル状に保持することで、万一の過度な衝撃や破損時における発火、発煙などのリスクを構造的に抑えることが期待される新技術です。採用検討の初期段階では、電池メーカーから従来型のリチウムイオン電池と半固体電池を比較した「釘刺し試験」の映像も提示されました。本試験条件下において、従来型の電池は釘が刺さった直後に激しく燃え上がる。一方の半固体電池は、釘が深く刺さっても発火しない。その差は明らかでした。

※本商品に故意に熱や衝撃を加えることは絶対におやめください。
しかし、開発チームの中に浮かんだのは、安心感だけではありませんでした。
「燃えないからこそ、利用者が異常に気づかない可能性はないだろうか」
一般的な電池であれば、発煙や発火は極めて分かりやすい異常です。しかし、半固体電池は釘が刺さって中身が完全に露出している異常な状態なのに静かな状態を保つとしたら、利用者は異常を認識せず、そのまま手元や生活空間に置いてしまうかもしれません。内部の材料が空気中の水分と反応し、目には見えないガスを発生させる可能性はないのか。燃えにくいという長所が、新たな見落としを生むことはないのか。カタログやデモンストレーションだけを見れば、「安全性が高い」と判断することはできたかもしれません。それでも、バッファローが商品として世に出すには、まだ確認すべきことが残っていました。
未知のリスクだからこそ、第三者機関と徹底検証する
新しい技術には、既存の安全規格だけでは十分に評価しきれない要素があります。そこで開発チームは、高度な分析能力を持つ国内の第三者機関に協力を依頼しました。設定したのは、実際の生活環境では通常起こり得ないほど過酷な条件です。電池のセルを意図的に破壊して内部を露出させ、湿度ほぼ100%の飽和水蒸気を72時間にわたって送り込み続けました。水分との化学反応によって懸念されるガスが発生するのであれば、それを検出しやすい環境を意図的につくったのです。
そして、精密分析機器のイオンクロマトグラフを用いて測定した結果、本検証条件下では、懸念していた有害なガス成分は検出限界値未満でした。この第三者機関による客観的な実測データを得て初めて、この部材について一定の安全性確認ができたと判断し、開発を進めました。

※本商品の分解、改造などは絶対に行わないでください。
発売時期だけを見れば、私たちは市場の先頭ではなかったかもしれません。しかし、後発であった時間は、迷っていた時間ではありません。お客様に提供できる根拠を、一つずつ積み上げていた時間でした。私たちが伝えたいのは、技術の新しさだけではありません。どのような疑問を持ち、どのように確かめ、何を根拠として商品化を判断したのか。その過程まで含めてお伝えすることが、メーカーとしての責任だと考えています。
反響を受け、EC限定から全国の家電量販店へ
2026年3月12日に開始した先行予約では、数量限定の「先行予約特別枠」を用意しました。当初は25日間程度での完売を想定していましたが、実際には想定の5倍の速さとなる、わずか5日間で完売しました。この結果は、半固体電池という新しい技術への関心だけでなく、モバイルバッテリーの安全性を重視し、「より安心して持ち歩けるものを選びたい」というニーズの高まりを示すものだと、私たちは受け止めています。
発売当初、EC限定で販売していましたが、その後の反響を受け、2026年9月上旬からは全国の家電量販店などでも順次展開することになりました。モバイルバッテリーの安全性が社会的な関心事となる中で、より多くの方に、「なんとなく」ではなく「これなら大丈夫」と安心して選んでいただけるモバイルバッテリーをお届けしたい。販売チャネルの拡大には、そうした思いも込めています。
航空機への持ち込みルール変更で、さらに高まる安全性への関心
本商品を発売した2026年4月、モバイルバッテリーを取り巻く環境にも大きな変化がありました。航空機内でのリチウム電池に関連する火災リスクに対応するため、日本では2026年4月24日から、航空機へのモバイルバッテリー持ち込みに新たなルールが適用されました。これは、モバイルバッテリーの安全性が製品単体だけではなく、社会全体で向き合うテーマになったことの表れです。モバイルバッテリーの取り扱い方だけでなく、「普段持ち歩くものを、どのような基準で選ぶべきか」という安全性への関心も、これまで以上に高まっています。
製品側でリスクを低減することと、利用者が正しいルールに沿って扱うこと。その両方がそろって、初めて安心につながると私たちは考えています。バッファローは、環境省が推進する、リチウムイオン電池等に起因する火災事故等の防止に向けた周知・啓発に取り組む「LiBパートナー」に認定されており、モバイルバッテリーの安全な使用方法や廃棄方法について、Webサイトなどを通じた普及・啓発に取り組んでいます。今後もバッファローは、商品と情報発信の両面から、モバイルバッテリーを安心・安全に利用できる環境づくりに取り組んでいきます。
新しい技術ほど、疑うことから始める
「半固体電池を採用しているから安全」その一言で商品を説明することは簡単です。しかし、新しい技術であるほど、まだ顕在化していない課題が隠れているかもしれません。だからこそ私たちは、新技術の長所をそのまま受け入れるのではなく、まず疑うことから始めました。疑い、検証し、確認できたことを丁寧に伝える。それは華やかな技術革新とは少し違う、地道な仕事かもしれません。しかし、日常のあらゆる場所で使われる商品をつくるメーカーには、その地道さが必要だと考えています。
「燃えにくい、の先へ。」
バッファローはこれからも、目に見える性能だけでなく、その商品を毎日使う人の安心まで設計していきます。
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