「聞いて帰るだけ」のセミナーを変えたい。孤立しがちな人事、総務、産業保健担当者を繋ぐコミュニティ『アポカフェ』誕生の裏側



オンライン化が加速し、効率や手軽さが求められる現代。企業の人事や産業保健の現場は、専門的な悩みを社内で共有しづらく、担当者が孤立しがちな環境にあります。だからこそ、「他社のリアルな事例がわからない」「自社の施策について気軽に意見交換できる相手がいない」といった、社外との”繋がり”を求める声が多く聞かれるようになりました。


そのような中で、あえて対面にこだわり、人と人との熱量を大切にする場があります。それが、アポプラスキャリア株式会社が主催する、人事や総務、健康管理推進担当者向けのコミュニティイベント『アポプラスキャリア ラーニングカフェ』、通称『アポカフェ』です。


東京からスタートしたこのイベントは、2025年には名古屋や大阪でも開催され、高い熱量とリピート率を誇る規模へと成長いたしました。単なる知識提供のセミナーではなく、参加者同士が繋がり、共に悩み、解決策を探る対話の場はいかにして生まれたのか。


本記事では、アポカフェ立ち上げの立役者であるヘルスケアソリューション事業部長の高島氏と、ファシリテーターとして共に場を創り上げているエグゼクティブアドバイザーの久保氏に、誕生の裏側とコミュニティに込めた想いについて伺います。



効率化の時代に、あえて「熱量」を求めて


──オンライン開催が主流な現代において、アポカフェは一貫してリアル開催にこだわっていらっしゃいますが、その最大の理由は何でしょうか?


高島:なぜオンラインで開催しないのかというお声は現在もいただきますが、対面とそうでないものでは、得られる情報量、そして何より空間の「熱量」が決定的に異なります。その熱量を参加者の皆様同士で強く感じていただきたい。私自身がその空間を大切にしたいという強いこだわりが根底にあります。


久保:リアルにこだわるのは、一般的なセミナーがただ聞いて帰るだけになりがちだからです。コロナ禍を経てオンラインでの学びが増えましたが、いつ実践するかはその人次第になり、「自社では環境が整っていないから難しい」で終わってしまいやすいと感じていました。


人事もビジネスパーソンも常に悩み続けるものです。だからこそ、その場で人の話を聞き、話し合い、他社と比較することで自社の状況を客観的に捉える。そして会場を出た後も、困った時に気軽に電話できる関係を作るための、解決の引き出しを増やすコミュニティを創りたいと思いました。



──アポカフェは2023年にスタートしたと伺いましたが、現在の「対話を重視するスタイル」へと変化したのには、どのようなきっかけがあったのでしょうか?



久保: 最初は「保健師向けの教育をしてほしい」というご要望からスタートしました。しかし、他社でも単発の勉強会は多く、教育を継続する難しさや、それが本当に現場の求めている事なのか疑問を感じていたんです。本当に支援を必要としているのは人事担当者や産業保健の担当者ではないかと考え、人事担当者同士が学び合えるコミュニティを作りたいという思いを抱いていました。


高島: 私自身も産業保健事業を展開している中で、お客様先へ伺うと「自分たちの施策がそもそも正しいのか」「他社はどのように取り組んでいるのか」といった悩みを、営業現場でよく耳にしていました。これらをリアルに解決できる場がないかと漠然とした思いから構想がスタートしました。


そんな相談をした際に、久保さんから中原先生(立教大学 経営学部教授 中原淳氏)のセミナーに誘っていただき、参加したのですが、それがとても衝撃的だったんです。



──どのような部分に衝撃を受けられたのでしょうか?



高島: そこで見たのは、ウェルカムドリンクから始まり、参加者は私服でリラックスしながら対話をしていました。ただ聞くだけでなく、参加者同士が意見を交わし、自分で考えて自分ごとにしていく。「これは自社にも取り入れたい!」と感じ、現在のアポカフェのスタイルに繋がっています。私自身そこで3人ほど仲間ができ、相談できる相手ができたことで、当社のお客様にも体験してほしいと思ったのが入り口でした。


──当時の人事や産業保健に関わる方を取り巻く環境について、どのような課題感を持たれていたのでしょうか?


高島: 産業保健の取り組みは各社各様です。義務化されていること以外は各企業の独自の施策となるため、急に健康管理を任された担当者の方は「自社の推進内容が正しいのか」「他社はどう実践しているのか」と外部の声を求める傾向がありました。自分たちの取り組みの正しさを誰かに承認してもらいたいという思いを強く抱えていらっしゃると感じていました。


「聞いて終わり」にしない。あえてリアルにこだわるコミュニティの真髄


──アポカフェが繋がりやコミュニティの形成に重きを置いていることがよくわかりました。実際、サービスを立ち上げた当初、社内の反応はいかがでしたか?


高島:最初のうちは、「なぜこの場が必要なのか」という現場への落とし込みが弱かったと感じています。営業担当者もまだ自分ごととして捉えきれておらず、会社側も手探りでのスタートでした。


──アポプラスキャリアがこのアポカフェを主催する一番の強みは、どのような点にあるとお考えですか?


高島: 私たちを通じてお客様同士に繋がっていただきたいという思いです。人事や健康推進担当者の方々は、真面目に取り組んでいて当たり前と評価されがちです。しかしこの場に来ることで自己肯定感が高まったり、他社と繋がることで「自社の施策は間違っていなかった」と自己承認して持ち帰っていただける場になればと考えています。


強みとしては、上場企業様を中心に約700社の取引実績がある中で、お客様同士の架け橋になれることです。交流を通じて新たな解決策を生み出すきっかけをご提供できることが最大の強みだと考えています。


久保: 一般的なセミナー形式ではないため一体感が生まれますし、多様な専門家から現場の生々しい事例を聞くことができます。


そして何より、営業担当者やコーディネーターの皆さんが一生懸命におもてなしをする姿勢が伝わり、アンケートでも名指しで感謝されるほど満足度に直結しています。そのホスピタリティは非常に大きな強みだと思います。



失敗から学んだ、安心安全な空間作りの試行錯誤


──リアルイベントを開催するにあたって、苦労された点や特に意識されたことはありますか。


久保: 一番の失敗談は、平日の早い時間からパーティーのような過度にカジュアルな懇親の場をご用意してしまい、皆様が参加しづらい空気を作ってしまったことですね。最初から懇親を深めていただこうと張り切ってしまったのですが、業務の合間にお越しいただいている皆様にとっては少しハードルが高かったようです。それ以降は、お茶やジュースを片手にリラックスしてお話しいただけるような、適度な距離感の場へと運営を少しずつブラッシュアップしていきました。


特に人事担当者の方は機微な情報を扱うため、「ここだけの話にする」というルールを設け、安心・安全な場を作ることを強く意識しています。だからこそ、メンタルヘルスのことなど、センシティブな本音の悩みを打ち明け合えるのだと思います。



──イベントの空間作りなどで工夫されている点はありますか。




久保: カジュアルな雰囲気作りですね。セミナーでは講師の方に30分だけお話しいただき、その感想や質問を付箋に書いて皆様で共有していただきます。皆様に付箋を書いていただいている間に、私たちが講師と付箋を見ながら回答を練るなど、参加者が過度に緊張しないような工夫を取り入れています。


懇親会への移行も自然な流れで行い、都合に合わせて自由に退出できるフラットな場にしています。お客様同士、講師、そして営業担当者の境界線をできるだけ作らないようにしています。


高島: そうですね。学びの場は決して堅苦しいものである必要はなく、フラットで楽しく情報を得られる環境の方が絶対に良いはずだと考えています。


久保: そう考えると、最近定番となっている「おかわりセッション」もその一環ですね。セミナー終了後、懇親会の終了15分前に行う振り返りの時間です。私と、アポカフェで「オーナー」として場をまとめている高島さん、そして講師の先生の3人で登壇し、「今だからこそ聞きたい本音」を引き出す貴重な時間になっています。


高島:会場のボルテージが最高潮に達したタイミングで行うため、「実のところ、こういうことも伝えたかった」といった、一番リアルな本音が飛び出す場ですね。



──インプットだけでなく、参加者がアウトプットし、皆様で場を作り上げていくイメージですね。リピーターの方も増える中で、関係性に変化はありましたか。


高島:最大の変化は、企業内の健康管理に関するご相談を、一番に当社へお声がけいただけるようになったことです。構想段階の案件でも共有してくださるなど、相談のハードルが格段に下がりました。


久保:その場でのお悩み相談が生まれやすい環境なんですよね。「新たに保健師を2名導入しようと考えているのだけれど」といった具体的なお話が出た際も、すぐその場で相談に乗れる営業担当者が同席していますから。


高島:アポカフェに参加される際に、そもそも「営業担当者にこの件を相談しよう」という目的を持ってきてくださる方も増えました。お客様との距離がぐっと縮まったと言えます。


久保:産業保健は法的な要件も絡む専門性の高い領域であり、インターネットを検索すれば簡単に答えが見つかるものではありません。外部の専門家に相談しても自社の状況に合った具体的な判断が難しい中で、気軽に専門的な知見にアクセスできるリソースとして機能しているのだと思います。


損得を超えた「熱量」。これからの産業保健の新しい未来


──今後の展開について、どのように進化させていきたいかイメージはありますか。


高島: まず「変えないこと」としては、対面での開催にこだわるという点です。お互いにお会いした時に生まれる「熱量」を感じられる場であることは、今後も大切にしていきたいです。


進化させたい点としては、来年度あたりには常に100名規模が集まるような、業界のプラットフォームとして認知されることを目指したいと考えています。コンテンツとしては「聞いて、話して」というフラットなスタイルは維持しつつ、参加者同士の繋がりをより広げていきたいですね。


久保: 大局的な視点で申し上げますと、現在の産業保健業界は専門領域に閉じこもりがちで、対応策のバリエーションが狭まっているのではないかという懸念があります。


そこに戦略人事としての視点を取り入れ、外部から見た産業保健のヒントを得たりすることで、前提を疑えるようになれば、お客様にとってもアポプラスキャリアにとっても新しい未来が見えてくるのではないかと考えています。VUCAと呼ばれる不安な時代ですが、その不安を払拭し、共に未来を見据えていけるような場を描けたらという野望を持っています。



──直近で、業界に対してどのようなインパクトを与えたいとお考えでしょうか。


高島: 今期は、お客様の健康管理業務を受託する領域に注力していきます。お客様が自社で抱え込まなくてもよい業務、私たちが支援できる業務はまだまだ多く存在していると考えています。役割分担を明確にし、新しい産業保健の形を創り上げるインパクトを生み出せればと願っています。単なる人材の提供に留まらない、真の「伴走型」の支援ですね。お客様が本当に求めている「ウォント(Want)」を探求し続けていきたいです。



──お二人で運営を続けられてきて、「やってよかった」と実感されたエピソードはありますか。


高島: お客様同士がリアルに繋がり、「この会社の方とずっとお会いしたかったんです」とわざわざご報告に来てくださった時は、本当に開催してよかったと実感しました。また、自社グループの人事部長などが一人の参加者として足を運んでくださり、「とても有意義だったから、今回は自社の保健師を連れてきたよ」と口コミで広がっていく様子を見るのも大変嬉しいです。何より、参加者の皆様も運営メンバーも、会場全体が満面の笑顔に包まれている光景を見られることが一番の喜びです。



──最後に、この記事を読まれる皆様へメッセージをお願いします。


久保: アポカフェの魅力は、実際に足を運んでみないと伝わりきらないというのが唯一の欠点かもしれません。だからこそ、ぜひ一度ご参加いただきたいです。人事や健康管理担当者の方が安心して学べる場であり、強引な営業を受けるようなこともありません。熟達したベテランの保健師の方々にもお越しいただき、人事担当者とパートナーとして対等に意見を交わせる場になればと願っています。


高島: 私たちは、参加者同士が深く繋がれることに大きな価値があると信じています。このアポカフェを通じた価値ある出会いと繋がりを、これからも変わらず提供し続けていきたいと考えています。皆様のご参加を心よりお待ちしております。





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