“対応していて当たり前”を実現するために ― モビリティ開発で今、求められる視点とは

自動車をはじめとしたモビリティ開発の現場において、「機能安全*¹」への対応は、“当たり前”のものとなりつつあります。多くの企業がISO 26262*²への対応を進め、安全性を前提とした開発体制を整えてきました。さらに近年では、コネクテッド化の進展に伴い、「サイバーセキュリティ」への対応も不可欠となっています。
こうした変化の中で、現場ではどのような課題が生まれているのでしょうか。営業として顧客と向き合う藤森さんと、エンジニアリング事業部で開発を担当する赤崎さんの対話から、その実態に迫ります。
*¹機能安全:システムの故障という危険事象に対して安全機能を付けることで、人体や環境への被害を許容可能なレベルまで低減させる、という安全性向上の考え方。
*² ISO 26262:自動車に搭載される電気・電子システムの機能安全に関する国際標準規格。
[対談メンバー]
・藤森さん:営業統括本部所属、15年間自動車関連の専門営業を担当。

・赤崎さん:エンジニアリング事業部所属、自動車を含む機能安全の開発を担当。

■当たり前になった機能安全とは
―近年の自動車開発において、「機能安全は当たり前」になりつつあると聞きますが、そもそも機能安全は、「安全に車を動かすための仕組み」という理解でよいのでしょうか?
藤森さん:はい、その通りです。機能安全とは安全にクルマを動かすために必要な仕組みや考え方のことで、安全を担保するための機能を設計に盛り込んでいくことになります。
赤崎さん: 機能安全における「安全」の定義は、「危険につながる可能性=リスクが許容可能なレベルまで低減されている状態」を指します。
例えば、クルマに搭載された電子製品が故障し、その結果として事故が発生してしまうケースを想像してみてください。電子製品の品質をどれだけ向上させても、故障率をゼロにすることはできません。そこで機能安全では、故障が発生しても事故につながらないようにするための「安全機能」を製品に組み込み、リスクの発生確率を低減させます。実際の数値とは異なりますが、例えば故障率0.01の部品に対し、安全機能が危険を防げない確率が0.01だった場合、故障が事故につながる確率は0.0001になります。つまり、安全機能を組み込むことで、リスクを100分の1に低減できるわけです。このように、リスクを許容可能なレベルまで下げた状態を「安全」と定義しています。

機能安全の規格では、製品で起こり得る故障や、その故障がどのような危険につながるのかを分析し、それらに対応するための手法・制限などが定められています。機能安全に詳しくない人には意外かもしれませんが、ここでいう故障には、物理的なハードウェアの故障だけでなく、ソフトウェアのバグや設計ミスなども含まれます。そのため規格では、こうした開発段階で発生するリスクを低減するための設計手法やレビュー、テストに対する厳しい基準が設けられています。結果として品質向上にもつながるため、藤森さんがおっしゃったように、自動車開発の現場では当たり前に求められる内容になっていますね。
藤森さん:実際、お客さまとの会話でも、開発要件に機能安全が含まれていることはほぼ前提になっています。
■自動車開発の次の課題~設計の複雑さ~
―自動車開発の現場で機能安全が「当たり前」となっている中で、どのような課題が出てきているのでしょうか?
藤森さん:システム全体の複雑化が挙げられます。例えば、EV、HEV、PHEVといったように車種によってシステム構成に違いがありますし、バッテリーやインバーター、モーターなどといった構成する部品の違いもあります。さらに、ゾーンアーキテクチャーかドメインアーキテクチャーかといった設計方針の違いや、GW*³、ADAS*⁴、ブレーキ、ステアリングなどの制御機能をどのECU*⁵が担うかもさまざまです。これらの違いを踏まえながら、トータルで機能安全を担保する必要があります。

*³GW:車内ネットワーク間を中継・制御する装置。
*⁴ADAS:センサ・カメラを用いて運転支援を行うシステム。
*⁵ECU:車両に搭載される電子制御ユニット。
赤崎さん:昨今の自動車業界では、複数の役割を一つのECUに集約する「統合ECU化」によって部品点数を削減しようという流れがあります。一方で、この流れがシステムの複雑さに拍車をかけている面もあります。通常、二つのECUが同時に故障する可能性は低いのですが、一つのECUに統合すると、そのECUが故障した際の影響範囲が大きくなります。このように安全を検討する上の前提となる車載システムが常に変化していく中で、最新技術を追い続けながら、「当たり前」として求められる機能安全を実現し続けること自体が難しい課題になっています。
藤森さん:自動車のコネクテッド化が進む中で、機能安全に加えてサイバーセキュリティへの対応も求められるケースが増えてきていますよね。
赤崎さん:そうですね。製品開発では、機能安全とサイバーセキュリティの両方への対応が求められることがほとんどです。本来はどちらも開発初期から連携して対応していくことが望ましいのですが、サイバーセキュリティ側の規格は比較的新しいこともあり、別枠で後から対応依頼されるケースが多く、なかなか難しいですね。その結果、サイバーセキュリティの要求事項が機能安全や他の要求事項と相反し、設計変更による大幅な手戻りが発生することもあります。
藤森さん:それぞれを個別に対応するだけでは難しく、全体としてどう成立させるかが重要になってきていますね。

自動車開発の動向と顧客ニーズについて語る藤森さん
―お話を伺い、機能安全が単なる技術課題ではなく、車両アーキテクチャーやECU統合、さらにはサイバーセキュリティまで含めた“全体最適”の課題になっていることを実感しました。今後の自動車開発では、個別技術の高度化だけでなく、分野横断で連携しながら設計全体を成立させる力がますます重要になるということですね。
■課題に対する日立情報通信エンジニアリングの支援サービス
―こうした課題に対して、当社ではどのように解決を支援しているのでしょうか?
赤崎さん:当社では、複雑化・多機能化が進む自動車システムの変化に対応するため、J-Auto-ISAC*⁶をはじめとする自動車分野の社外団体に所属しております。団体でのワーキンググループ活動に参画することで、業界動向に関する最新情報を入手するとともに、分析技術の標準化に向けた議論にも参加し、技術力の向上に努めています。また、規格に関する知識を高めるため、資格取得者の育成に注力しているほか、規格の更新に備えて、International Organization for Standardization(国際標準化機構)の公開情報をもとに研究を進めています。
機能安全とサイバーセキュリティの両立については、全体としての設計の最適化に対応するために、規格準拠の組織作りの支援に加え、製品開発の最上流の計画・コンセプト設計の段階からの支援に対応しています。お客さまと伴走しながら、上流工程から開発を進めることで、後工程でのそごを防げるようにしています。
*⁶ J-Auto-ISAC:一般社団法人Japan Automotive ISAC。略称J-Auto-ISAC。日本自動車工業会のJ-Auto-ISAC WGから2017年に一般社団法人として独立。サイバーセキュリティ施策の企画・立案、支援から、サイバーセキュリティインシデントの発生および被害拡大の防止、人材の育成支援などを目的とする。

当社の強みについて語る赤崎さん
藤森さん:昨今は機能安全に関するコンサルティングを行う会社も増え、競争が激しくなっていますが、当社の差別化ポイントは、「何をどうするべきか」をお客さまと一緒に考え、そのまま設計・開発・ドキュメント作成まで一貫して支援できる点ですよね。当社では、各規格への適合をお客さまの課題や開発フェーズに応じて支援するサービスとして、「機能安全規格認証取得支援・開発サービス」や「サイバーセキュリティ認証取得支援・開発サービス」を提供しています。実際の提案の場面では、規格対応だけでなく、その先の開発や実装まで含めたご相談をいただくことも多いですよね。
赤崎さん:そうですね。実際にお客さまから、「規格対応の実装まで面倒を見てくれるのがありがたい」と評価いただいており、そこは大きな強みだと考えています。他のコンサルティング会社では、「規格準拠のためにこれやれ、あれやれ」と指示はしてくれることは多いのですが、お客さまからすると「要件はわかったが、実際にどう実現すればいいのか」「どのくらい工数がかかるのか」といった実務面で悩まれるケースも多いと聞いています。
当社では、「やらなければいけない要件」の整理や規格が求めるドキュメントの作成支援だけでなく、安全機能やセキュリティ機能を含めたソフトウェア・ハードウェアの開発全体の支援が可能です。規格準拠の対応を担当するチームと、実際の開発を担うチームの双方を支援できるため、それぞれが連携しながら一貫した方針でプロジェクトを進められる点が強みになっています。
―当社の強みは規格対応の助言にとどまらず、設計・開発・実装まで一貫して支援できる点ですね。お客さまと伴走しながら課題解決に取り組む姿勢は非常に大事ですし、こうした課題に直面している企業にとって、当社の支援は有効な選択肢になりますね。
■最後に
開発の複雑化が進む中で、要求整理や設計方針の策定、全体設計などに課題を感じている企業も増えているとのことでした。最後に、こうした課題を抱えているお客さまへメッセージをお願いします。
藤森さん:今回はモビリティ分野を中心にお話ししましたが、機能安全やサイバーセキュリティへの対応は、業界問わずの多くのお客さまに共通する課題だと思います。「自社の製品に機能安全やサイバーセキュリティをスムーズに適用したい」といったお悩みがあるお客さまはぜひお声がけください。
赤崎さん:規格対応の経験が豊富なお客さまに対しては、リソース面での支援をしておりますが、「何をすれば規格に準拠できるのか」、「どのように進めればよいのか」といったことにお困りのお客さまにはぜひ当社にご相談いただきたいです。お力になれると思います。
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以上
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