第2部トークセッション。ものの作り手としての信念を書いた=2日午後、大分市金池南のコレジオ大分
ものづくりに取り組む5人らによるトークセッションでは、作り手の姿勢や職人の横のつながりを話した。最初に「作り手として、これだけは誰にも負けないものは何か」と問い掛けがあった。「らしさ」と答えた日田杉グッズなどの商品開発をする仙崎雅彦さんは「売れ筋を追うのでなく、地域性や自分らしさを出す。価格競争に陥らずに済む」と付加価値や物語性を見いだしている。
「2000年ごろにプロダクトブームはあったが、消えていった人も多い。持続させ、販売のノウハウが必要だ。作り手も製品を作って終わりではない」とアドバイザーの金谷勉さん。テントの縫製技術を生かしてバッグ製作をする佐藤晃央さんは、流行の生まれる東京から出発する戦略を展開した。大阪、東北、イタリア、香港を経て最後に大分で販売した。PR策では「職人がいなくなる中、職業を格好良く見せるようにしている。職人を表に」と、自社のフェイスブックなどを活用しているという。
パッケージ製造会社副社長の小野尚子さんは、社員の意識改革を大事にした。「パッケージは脇役なので、選ばれるものを作るという共通認識を持つ必要がある。安い物を大量に作る時代にのみ込まれたくない。職人のプライドを損なわないよう、社内で目指すところの意識を共有している」
竹のしなやかさを生かしたアクセサリーを作る竹細工職人の佐藤美樹子さんは「基本的な技術は昔から変わらない」と話す。ざるや籠のイメージが強いが、近年はアクセサリーやグッズも人気がある。「現代に合ったデザインを示すことで、受け手の見る目が変わった」と語る。
異なるものづくりをしている職人同士で連携の動きも出てきた。竹細工と木工のコラボなど、試行錯誤を繰り返している。仙崎さんは「人間関係はいろいろあるが、切磋琢磨(せっさたくま)する職人と組んだときに最も良いものができる」。3Dプリンターなどを使い市民が自由にものづくりをできる工房を開く豊住大輔さんは「伝統の技を守ることと同時に、新しいものを受け入れることも大切」とこれからのものづくりの道筋を示した。
最後にコーディネーター佐々木稔編集局次長が「皆さんの仕事には、すごい作り手がいるとか、あのかばんはすてきだとかという物語がある。若い人たちに大分のものづくりのすごさを示していきましょう」と締めた。