3Dプリンターで自助具を作る作業療法士の平岡淳也さん=別府市照波園町の黒木記念病院
【別府】別府市照波園町の黒木記念病院は3Dプリンターを活用し、身体機能の低下した患者用の自助具作りを始めた。作業療法士がそれぞれの状態を考慮しながらペットボトルのふたを開けるオープナーや筆記用のペンホルダーなど樹脂製の道具を使いやすいように設計し、仕上げている。医療・リハビリ現場で同様の取り組みは全国的に少ないという。
自助具は日常生活での困難な動作を補助するツール。同病院は従来、ホームセンターで購入した道具を改良するなどして用立てていた。個々の細かなニーズに対応しようと今年4月に3Dプリンターを導入した。
データを基にデジタル技術で造形物を実体化する加工法。患者の手の大きさや関節の可動域、生活環境などに応じ、微調整を加えながら最適な道具を作れるようになったという。
同病院の患者やリハビリ利用者を対象に、作業療法士5人が製作に当たる。関節リウマチや脳卒中の後遺症によって手が不自由な患者のため、オープナーをはじめトイレのレバーに取り付けるフックなどを作った。患者からは「使いやすいように要望を聞いてもらえてよかった」や「手放せない」などと好評だ。
3Dプリンターの自助具への利用は進んでいない。杏林大(東京都)保健学部の原田祐輔講師が2023年に作業療法士を対象にした全国調査で、活用経験があると答えたのは4・4%にとどまった。環境を整備する一方、研修機会を設ける必要性があるのではないかと指摘する。
同病院リハビリテーション部教育課の平岡淳也主任(47)=作業療法士=は「患者の自立支援だけでなく機能回復にも役立てられる。回復が難しい場合でも、より使いやすい自助具を通じて、意欲の向上につながっていくのではないか。多くの作業療法士に使ってもらいたい」と話している。