飲酒運転で死亡事故を起こし、大分刑務所に服役している男性(40代)の一審裁判員裁判は、危険運転致死罪が成立するかどうかが争点になった。 男性側は酒の影響ではなく運転ミスだったとして、法定刑の軽い過失運転致死罪に当たると主張した。しかし、飲酒検知を事故の7時間半後に受けたにもかかわらず結果が酒気帯び運転の基準値を上回ったことや、車に乗る前に駐車場でふらつく姿が確認されたことなどを踏まえ、裁判所は酩酊(めいてい)状態だったと認定。危険運転に当たると判断した。 懲役14年を言い渡された男性は「厳しい判決だ」と思ったという。ただ、これ以上争うのは難しいと考え、控訴はしなかった。 法廷では、男性の飲酒運転が「常習化」していた事実が明らかにされた。 民間企業に勤めていた30代前半の頃、初めて酒気帯び運転で摘発を受けた。酔って真っすぐ車を走らせることができず、異常に気付いたパトカーから停止を求められた。行政処分は運転免許取り消しで、2年間は再取得も許されなかった。 自動車学校に通って免許を取り直したが、飲酒運転はやめられなかった。「この前は警察に見つかってしまったけれど、被害者はいない。別にいいだろう」。繰り返すうちに罪悪感は薄れていった。 40代になって再び酒気帯び運転で摘発された。この時も運転免許が取り消された。しかし、男性は無免許の状態で運転を続け、2021年に飲酒死亡事故を起こすことになる。 当時は1人暮らしで年収は700万円を超えていた。経済的に余裕があり、頻繁に飲み歩いた。自宅でも毎晩500ミリリットル入りの缶ビールを5、6本飲んでいたという。「アルコール依存症だったかもしれない」と振り返る。 繁華街で飲む際は車で出かけていた。「事故さえ起こさなければ、飲酒運転でもばれない」という安易な考えがあった。 「酒気帯び運転で2回も摘発されていながら、学習できなかった」。男性は身勝手な行動を続けたことへの後悔を口にした。 「私と同じように『まさか自分が』と考えている人もいると思う。事故を起こせば、被害者遺族に謝罪しても許されることではない。自身の人生も一変するということを知ってほしい」と話す。
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